ラブ、デス&ロボット(原題: Love, Death & Robots)は、動画配信サービスNetflixが配信しているアメリカ合衆国の成人向けテレビアニメシリーズ作品。映画監督のティム・ミラーとデヴィッド・フィンチャーが製作総指揮として携わっており[1][2]、ミラーの設立したアニメ制作会社であるブラー・スタジオがプロデュースしている。また、ミラーは本作においてシリーズの企画および一部エピソードの監督も務めている。
主にSF・ファンタジー・ホラー・コメディといった複数のジャンルの短編で構成されたアンソロジー形式の作品であり、2019年3月15日に全18話のシーズン1が公開[3]。2019年6月にはシリーズの更新が決定し[4]、2021年5月14日に全8話のシーズン2が公開[5]。2022年5月20日より、全9話のシーズン3が公開されており[注釈 1]、本シリーズでは初となる、前シーズンの短編作品の続編が収録されている[7]。
2022年8月13日にシーズン4の製作が発表された[8]。
概要
本シリーズに収録されている短編作品のほとんどはジョン・スコルジーやジョー・R・ランズデールなどの作家による短編小説を基にしている[2][9]。短編は世界各国の制作会社やアニメーション作家が手掛けており、大半は2Dアニメや3DCGアニメの技法が用いられているが[10]、いくつかの作品では実写が用いられている[注釈 2]。また、視聴者に合わせて各短編の再生順が入れ替わるというアプローチが取り入れられている。これについてはTwitter上で再生順が視聴者の性的志向を反映したものになっているという指摘があったものの、Netflixは単に「4種類の再生パターンを提示している」だけであり、視聴者の「性別、民族性、性的志向とは関係ない」ものであると答えている[13]。
製作陣については、映画監督のジェニファー・ユー・ネルソン(英語版)がシーズン2より総監督として携わっている[5]。
製作の経緯
元々は1981年に公開されたカナダのアニメ映画『ヘビーメタル(英語版)』のリブート作品として2008年に企画が立ち上がり[9][14]、当初はパラマウント映画が長編作品として公開する予定だった。しかし当時のパラマウントの幹部が作品の過激な内容に対し難色を示したことから、あえなく製作は中止となった[15]。その後ザック・スナイダー、ギレルモ・デル・トロ、ゴア・ヴァービンスキー、ジェームズ・キャメロンを監督に迎え再開されることが報じられたものの、実現には至らなかった[16][17]。
2011年、ロバート・ロドリゲスが『ヘビーメタル』の映像化の権利を獲得[18]。ロドリゲスは映画ではなくテレビシリーズとして製作する意向を発表していたが[19]、最終的に企画はNetflixへと渡ることになった。本作の正式なタイトルは Love, Death & Robots となり、2019年2月に最初の予告編動画が公開された[3]。ミラーは本シリーズの企画段階で、6時間半の作品を計3編収録するというアイデアをNetflix側から止められたことを明かしている[14]。
なお、ミラーはシーズン2の公開が決定した2021年4月、IGNの取材に対し、すでにシーズン4を製作するだけのストーリーとアイデアがあると述べ、Netflixが本シリーズを更新する限り製作を続ける方針であることを明かしている[20]。
収録短編
シーズン
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話数
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配信開始日
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1
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18
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2019年3月15日
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2
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8
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2021年5月14日
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3
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9
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2022年5月20日
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シーズン1
シーズン2
シーズン3
キャスト
※原語版キャストおよび配役はインターネット・ムービー・データベースの情報より参照[33]。()内は日本語吹替キャスト。
シーズン1
- ソニーの切り札
- ロボット・トリオ
- 目撃者
- 女 - Emily O'Brien (牛田裕子)[34]
- 男 - Ben Sullivan (西健亮)[34]
- ウラジミール - Nolan North (下川涼)
- スーツ
- 魂をむさぼる魔物
- ヨーグルトの世界征服
- わし座領域のかなた
- グッド・ハンティング
- ゴミ捨て場
- シェイプ・シフター
- 救いの手
- フィッシュ・ナイト
- ラッキー・サーティーン
- ジーマ・ブルー
- ブラインド・スポット
- 氷河時代
[注釈 7]
- 歴史改変
- 秘密戦争
- ニコライ・ザハロフ - Stefan Kapičić (木村雅史)[34]
- クラフチェンコ - Bruce Thomas(中村章吾)[34]
- オクチェン - Antonio Alvarez (宮本淳)[34]
- マレンチェンコ - Jeff Berg (下川涼)[34]
- カミンスキー - Bruce Thomas(橘潤二)[34]
- ポゴージン - Victor Brandt(田所陽向)[34]
- マキシム - 不明 (中西正樹)[34]
- その他日本語吹替キャスト
- 森夏姫、井上美咲、高宮彩織、三重野帆貴、櫻庭有紗、高橋大輔、樋山雄作、田島章寛、辻井健吾、石黒史剛、井川秀栄[34]
シーズン2
- 自動カスタマーサービス
- ジャネット - Nancy Linari(一城みゆ希)
- カスタマーサービス - Ben Giroux(太田真一郎)
- ビル - Brian Keane(世古陽丸)
- 氷
- ポップ隊
- 荒野のスノー
- スノー - Peter Franzén(置鮎龍太郎)
- ヒラルド - Zita Hanrot(白石涼子)
- 草むらに潜むもの
- レアード - Joe Dempsie(福田賢二)
- 鉄道員 - Steven Pacey(楠見尚己)
- 聖夜の来客
- 避難シェルター
- おぼれた巨人
- スティーブン - Steven Pacey(水内清光)
シーズン3
- ロボット・トリオ: 出口戦略
- 最悪な航海
- 死者の声
- 小さな黙示録
- 絶体絶命部隊
- 巣
- メイソンとネズミ
- 地下に眠りしもの
- 彼女の声 (セリフなし[36])
- 騎士 - Girvan 'Swirv' Bramble
- 女 - Sara Silkin / Megan Goldstein / Alina Smolyar
批評
映画批評集積サイトRotten Tomatoesは全36件のレビューに基づき、満足度78%、加重平均値6.72/10という評価を下した。サイトでは批評家の総意として、「このアニメアンソロジーは、ロボット好きなサイバーパンク愛好家が『ヘビーメタル』の影響を受けるのに十分な、クリエイティブな死をもたらしてくれる。だがこのシリーズが掲げる高尚な野望は、流血や性的興奮に夢中になっているあまり、大抵価値の低いものとなっている」としている[37]。Metacriticは、主要な評論家による4件のレビューを抽出し、加重平均値65/100という評価を下しており、レビューは概ね好意的なものであった[38]。
受賞
年 |
賞 |
部門 |
候補 |
結果 |
出典
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2019年 |
プライムタイム・クリエイティブアート・エミー賞 |
アニメーション賞短編アニメーション部門 |
『目撃者』 |
受賞 |
[39]
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音響編集賞コメディ/ドラマシリーズ(30分)およびアニメーション部門 |
『秘密戦争』 |
ノミネート |
[40]
|
アニメーション特別貢献賞 |
Alberto Miergo (プロダクションデザイン) (『目撃者』) Jun-ho Kim (背景デザイン) (『グッド・ハンティング』) David Pate (キャラクターアニメーター) (『目撃者』) Owen Sullivan (ストーリーボード) (『魂をむさぼる魔物』) |
受賞 |
[41]
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British Academy Scotland Awards (英語版)
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アニメーション賞
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Jon Yeo、Caleb Bouchard (『救いの手』)
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受賞
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[42]
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2020年
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第47回アニー賞 (英語版)
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アニメーションエフェクト貢献賞テレビアニメおよびメディア制作部門
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Viktor Németh、Szabolcs Illés、Ádám Sipos、Vladimir Zhovna(『秘密戦争』)
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受賞
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[43]
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音楽貢献賞テレビアニメおよびメディア制作部門
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Rob Cairns (『ソニーの切り札』)
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受賞
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美術貢献賞テレビアニメおよび放送制作部門
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Alberto Mielgo (『目撃者』)
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受賞
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編集貢献賞テレビアニメおよび放送制作部門
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Bo Juhl、Stacy Auckland、Valerian Zamel (『歴史改変』)
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受賞
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脚注
注釈
- ^ シーズン3公開の発表当初は、シーズン2同様全8話になるだろうと報じられていた[6]
- ^ 一例として、シーズン1に収録の『氷河時代』は実写パートがメインとなっており[11]、シーズン2に収録の『避難シェルター』では3DCGと実写の両方が用いられている[12]。
- ^ 原作の短編小説は、日本では「良い狩りを」の邦題で『紙の動物園』『もののあはれ』(いずれも早川書房刊)に収録されている[23]。
- ^ 原作の短編小説は、『2000年代海外SF傑作選』(早川書房刊)に邦訳が収録されている[24]。
- ^ 原作の短編小説は、日本ではオリジナル短編集『蝉の女王』(1989年、早川書房刊、小川隆訳) に収録されている[31]。
- ^ 原語版では、コンピューターが生成した音声によって演じられている。
- ^ グレイスとウィンステッドは、本作では実写パートに出演している。
出典
- ^ Radulovic, Petrana (2019年2月14日). “First trailer for Netflix's animated anthology Love, Death, & Robots makes it clear this is for adults”. Polygon. 2019年2月14日閲覧。
- ^ a b ““危険”な映像が詰まった短編アニメ集「ラブ、デス&ロボット」は、Netflixの実験的精神に溢れている”. WIRED日本語版 (2019年4月14日). 2019年9月28日閲覧。
- ^ a b Robinson, Tasha (2019年2月14日). “The trailer for David Fincher's Love, Death & Robots is a manic headache”. The Verge. 2019年2月14日閲覧。
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- ^ a b “‘Love, Death & Robots’ Trailer: Season 2 to Premiere on Netflix in May”. IndieWire (2021年4月19日). 2021年4月24日閲覧。
- ^ “Netflix’s Love, Death, and Robots season three is coming May 20th”. The Verge (2022年4月18日). 2022年5月1日閲覧。
- ^ “Love, Death + Robots Volume 3 Will Feature a Sequel to 'Three Robots'”. CBR (2021年5月17日). 2022年5月1日閲覧。
- ^ https://x.com/lovedeathrobots/status/1558106419970318337
- ^ a b “How David Fincher and Tim Miller's Heavy Metal Reboot Became Netflix's Love, Death & Robots”. IGN (2019年3月16日). 2019年9月28日閲覧。
- ^ “Netflix's Love, Death & Robots Trailer: First Look at Tim Miller and David Fincher's Surreal Animated Anthology”. IGN (2019年2月15日). 2019年9月28日閲覧。
- ^ “Which Love, Death & Robots Episodes Are Worth Your Time?”. Vulture (2019年3月26日). 2019年9月28日閲覧。
- ^ “Love, Death and Robots Explains How to Make the Perfect Digital Michael B. Jordan”. Gizmodo Australia (2021年6月3日). 2022年5月29日閲覧。
- ^ “Netflix is experimenting with different episode orders for ‘Love, Death & Robots’”. TechCrunch (2019年3月20日). 2019年9月28日閲覧。
- ^ a b “Netflixアニメ『ラブ、デス&ロボット』のティム・ミラー監督にインタビュー:「Netflixは最高のパートナー」”. Gizmodo日本語版 (2019年5月15日). 2019年9月28日閲覧。
- ^ “David Fincher's 'Heavy Metal' remake a no-go at Paramount”. Entertainment Weekly (2008年7月9日). 2019年9月28日閲覧。
- ^ “Zack Snyder, Guillermo del Toro and Gore Verbinski to Direct Heavy Metal!?”. /Film (2008年9月4日). 2019年9月28日閲覧。
- ^ “Fincher Brings Mettle To Passion Project”. Deadline.com (2010年3月12日). 2019年9月28日閲覧。
- ^ “David Fincher’s ‘Heavy Metal’ is Dead, Now Robert Rodriguez Has the Rights”. /Film (2011年7月21日). 2019年9月28日閲覧。
- ^ “Robert Rodriguez May Bring ‘Heavy Metal’ to TV; Prepared to Make ‘Sin City 3’”. Screen Rant (2014年3月11日). 2019年9月28日閲覧。
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- ^ “Jerome Denjean — Love, Death & Robots, Blur Studio”. Chaos Group (2019年3月18日). 2019年9月29日閲覧。
- ^ “'People want the rough stuff': Russian animator on Netflix's hottest cartoon”. Russia Beyond (2019年3月21日). 2019年9月29日閲覧。
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- ^ 『ラブ、デス&ロボット』シーズン3は2022年配信開始 「シーズン4のストーリーとアイデアある」 VirtualGorilla+(2021年4月20日)、2021年4月23日閲覧。
- ^ “デヴィッド・フィンチャー製作総指揮「ラブ、デス&ロボット」シーズン2、配信日決定&予告編公開 ─ 1話平均約10分、SF・ホラー・ファンタジー・アクション”. THE RIVER (2021年4月20日). 2021年4月23日閲覧。
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外部リンク