『メギド72』(メギドナナジュウニ)は、メディア・ビジョンが開発しDeNAにより運営されていたスマートフォン用ゲームアプリ。2017年12月7日サービス開始[1]。基本プレイ無料(アイテム課金制)。
DeNAの新規オリジナルIPによるスマートデバイス向けRPGである本作は、ハルマ(天使)が住まう「輝界:ハルマニア」と、ヴィータ(人間)が住まう「臨界:ヴァイガルド」、そしてメギド(悪魔)が住まう「宵界:メギドラル」を舞台に、世界の終末「ハルマゲドン」を食い止めるために少年たちが奔走するという内容である。
本作品は一般的な基本無料型アプリゲームにおいて常態化している、プレイアブルキャラクターのレアリティの撤廃[2]と「フォトン」と呼ばれるリソースの管理を主軸とした戦略性の高いバトルシステムをアピールポイントとしている[3]。
2019年には日本ゲーム大賞にて優秀賞を受賞[4]。
2025年1月をもってメインストーリーを完結、その後エピローグの公開を経て同年3月9日をもってオンラインサービスを終了しオフライン版へ移行した[5]。
プレイヤーはメギドを編成し、バトルに臨む。
独自のシステムである「ドラフトフォトンシステム」は、バトル開始前に、フィールド内にあるフォトンを敵味方互いに1つずつ取得し、フィールド内のフォトンが分配しきるとバトルスタートとなる。
フォトンは、通常攻撃を行って覚醒ゲージを1つ分増やす「アタック」と、メギドの習得しているスキルを使う「スキル」、覚醒ゲージを2つ分増やす「チャージ」の3種類存在する。覚醒ゲージが最大の時にアタックフォトンを使用すると覚醒ゲージをすべて消費する「奥義」が、スキルフォトンを使用すると覚醒ゲージを1つ消費する「覚醒スキル」を使うことが出来る。
メギドたちはオーブと呼ばれるアイテムを装備する[6]。メギドのバトルスタイルによって装備可能なオーブは異なるうえ、特定のメギドのみ装備可能なオーブもある[6]。オーブにはレアリティが割り振られている一方、低レアリティのオーブが役に立つ場面もある[6]。
本作に登場するメギドたちには、レアリティによる能力差がなく、初期キャラクターを含め、すべてのメギドが最高のレアリティまで進化することができる。
メギドの強化には贈り物が使われる。
本作はDeNAとメディア・ビジョンの完全オリジナルRPGとして企画され、ソロモンの指輪とゴエティアをモチーフとするアイデアはDeNA側の提案である[2]。
本作のプロデューサーであるDeNAの宮前公彦は、「世の中のトレンドよりは、自分たちが楽しいと感じて作っているものを、皆さんにおもしろいと思ってもらえるように出す、ということを最優先に考えています」と『ファミ通』とのインタビューの中で述べており、同席したメディア・ビジョンのディレクター宍倉紀春も、ゲームの中でトレンドをいかにして構築するかを重要視していると話している。また、ディレクターになる前はシステム設計を担当していた宍倉は、「システム設計は固定概念との戦いだと、僕は強く感じています」とも話している[3]。
2016年の8月にオープンβテストが行われた時点の本作は、キャラクターが球のように描かれ、それが飛んでいく形で戦闘が表現されていた[3]。テストに参加したプレイヤーからは「3Dだったらよかったのに」「面白いが既視感がある」といった指摘が寄せられたことから、3Dのゲームとして、一度作り直すことが決まった[3]。
宍倉は物語に出てくるフォトンを生かしたいと考え、「ドラフトフォトンシステム」の導入を提案した[3]。
本作の開発は、月々の運営で家庭用ゲームの品質を提供するという目標のもとで行われたが、2017年12月の正式リリース直後に不具合が発生し、翌月の2018年1月から2月にかけても不具合が多発し、開発スタッフは悪戦苦闘するはめになった[2]。宍倉は『ファミ通』とのインタビューの中で、「最近、ようやく慣れてきましたが、それまでは「仕事がたいへん」と、スタッフ全員が一度は泣いたくらい(笑)」と振り返っている[2]。
当初、ゲーム内のチュートリアルは最低限の内容だったが、システムの楽しさを理解する前にプレイを辞めてしまうユーザーが出てきたため、プレイヤーの誘導する仕組みの重要性に気づいた宮前は、スタッフと話し合い、情報をゲームの外へ積極的に発信するという方針へと切り替え、チュートリアルも本作の面白さを伝える内容に改良した[2]。その結果、本作は難易度を変えることなく、継続率の回復に成功した[2]。
本作は、「72体の悪魔」という限られた手札で戦略を練ることを楽しむというコンセプトで設計されており、宮前と宍倉はAppBankとのインタビューの中でキャラクターを無制限に増やす事に対して否定的な見解を示している[7]。 宍倉は、以下の理由から季節イベント等で別バージョンのメギドを登場させられないと述べている[7]。
なお、2018年7月19日にはメギドの外見を変える「衣装機能」が、2018年8月31日には登場済みのメギドの別バージョンである「リジェネレイト」が実装された[1]。 後者は「好きなメギドの性能が自分のバトルスタイルと合わないためパーティーに組み込めない」というユーザーからの要望をもとに追加された[1]。 ゲーム内において、リジェネレイトで召喚されたメギドは、通常のメギドとは別ユニットという扱いだが、「同一個体が存在しない」という設定を反映して、パーティー内にはどちらか一方しか編成できないようにしてある[1]。
また、宮前は2019年のファミ通Appとのインタビューの中で、ストーリーや世界観の構築が途上であることや、追加のセッティングや既存のストーリーとの齟齬の観点から、他作品とのコラボレーションは行わないと話している[8]。
本作に登場するメギドたちは、メギドから人間へ転生した存在という設定があり、存在感を出すためにメギド体の姿はあえて人間体からかけ離れたデザインにされた[2]。 たとえばマルバスは、自らがハルマではないかと主張したが故に追放されたという過去を持ち、かわいい美少女であることを自慢する一方、自らのメギド体の醜さを自覚しているという設定である[9]。
また、ディレクターの宍倉紀春は、メギドとハルマは人間と同様に各人の考えがあるため、善悪二元論で捉えようとすると違和感があるかもしれないとAppBankとのインタビューの中で話しており、その例として、魔物ハンターとしてヴィータ(人間)を守るマルコシアスを挙げている[7]。
メギドたちのセッティングやデザインの経緯は様々であり、デザインが先にできたケース[注釈 1]もあれば、シナリオにおけるキャラクター性がデザインに反映されたケース、さらにはモデルとなった悪魔からデザインが起こされたケースなどがある[8]。 宮前は2019年のファミ通Appとのインタビューの中で、ある程度はデザイナーの自由にしていると述べており、そこから想定外のデザインができたとしても、他セクションからそれに合わせた提案があり、双方にとって良い刺激になっていると話している[8]。メギドたちの使用武器はゲーム内の性能を基準に選定されており、例えばトルーパーのクラスのメギドの場合は槍を持たせている[8]。 本作の世界観が中世モチーフであるため、キャラクターのデザインには曲線を多用している一方、独自の文化を築いているという側面もあるため、中世に拘泥しすぎないという方針がとられている[10]。たとえば、ネルガルというメギドは発明家という設定を反映し、あえてSF要素がデザインに組み込まれている。カスピエルをはじめとする一部のメギドは現代寄りの服装をしているものの、基本デザインは現代的になりすぎないように調整が入っている[10]。ただし、水着など季節イベントの衣装は番外編ということで現代的な要素が強くなると、デザインチームの米倉実穂は2019年のファミ通Appとのインタビューの中で話している[10]。
当初は3か月に1回のペースで12話分を実装し、その3か月後に次の章に進める予定だった[7]。ところが、プレイヤーの進行速度が開発側の予想よりも早かったため、ひと月おきに4話分を章単位で追加する方針に変更した[7]。
プロデューサーの宮前公彦は2018年のAppBankとのインタビューの中で、物語全体の流れはすでにできており、実装期間が短くなったからと言って物語を端折ることはしないと話している[7]。
イベントシナリオでは様々な内容の物語が描かれている。
たとえば、2019年10月1日から実装された期間限定イベント「さらば哀しき獣たち」では、メギドたちの装備品である「オーブ」を主題としており、同シナリオに登場したエンキドゥはオーブとしては初めて声が当てられたキャラクターである[6]。 一方、2021年1月に実装された期間限定イベント「メギドラルの悲劇の騎士」は、公式ウェブサイトの物語紹介ページにて「残忍な表現やセンシティブな内容が含まれます」という注意書きがなされるほど、過激な内容となっている[11]。
本作は、ファンから「トンチキ」と呼ばれるほど変わった施策をとることが多い[12]。 宮前は2020年のニコニコニュースとのインタビューの中で、狙ってやっているのではなく、会議や雑談の中で出てきたおもしろそうなものを実装しているだけだと話している[12]。 たとえば、ピックアップガチャの場合、リリース当初は性能別で出されていたが、ありきたりな売り文句が続き、面白さやバリエーションを出すため、これとは別にキャラクター性を重視したピックアップガチャが誕生した[12]。
メインクエストで仲間になるメギドたち。
異世界メギドラルから追放されたメギドたちで、追放理由はメギドごとによって様々である[14]。
追放メギドたちの中でも、強力な力を持つメギドたち。若い姿のまま年をとらず、人間を超えるはるかに長い時間を生きることができる。
ガチャやイベントなどで仲間になるメギドたち。メインストーリーにも登場する。
ゴエティアにて記述されている悪魔を出典としている。劇中設定では、バラムが把握していた追放メギドの数が72であったことから、ソロモンの戦う理由としての「祖」であるメギドたちと定義されている。
ゴエティア以外に記述されている悪魔を出典としている。祖メギド以外の追放メギド、あるいはメギドラルから離反したものなどが含まれている。
イベント「ソロモン王東征録」シリーズに登場するメギド。
六甲島カモメによるコミカライズが、マンガボックスにて無料公開されている。全5話。
2019年6月2日にリアルイベント「メギド72 garden 〜ソロモン王たちの休日〜」で制作が発表され、『メギド72 The short animation 長き戦旅の傍らで』のタイトルで7月27日よりYouTubeで配信中[23]。
第6話以降は諸般の事情により公開が無期限延期となっている[24]。
本作の音楽は寄崎諒が手掛けた[2]。 当初はファンタジーRPGらしい楽曲が多かったため、宮前は作曲を担当した寄崎に対し、少しジャズ調の曲を入れてほしいと頼んだ[2]。寄崎はそれを受け、アジトのBGMにコーラスを入れるなどして、おしゃれな曲調に仕上げた[2]。 また、宮前は音楽の使い方にもこだわっており、シーンの切り替えやロード中にもBGMを入れることもあれば、切り替え前からBGMを継続して場面の同一性を保つこともある[25]。
物語においては、感情の高まりなどを表現するために、歌唱曲を用いる演出がとられる場合がある[12]。 たとえば、2019年2月[26]に開催された期間限定イベント「嵐の暴魔と囚われの騒魔」では、プロメテウスが歌手である設定とスキルを結び付けた上、ストーリーにおいては彼女の歌が流れるという演出がとられた[12][27]。その後、第5章のアスモデウス戦では、1980年代のアニメに多かった「最終回で歌付きのBGMが流れる」という演出をヒントに、アスモデウスの思いを表現する手段として、彼女本人による歌唱曲「混沌より愛をこめて」が用いられた[12]。 さらに、2019年3月に開催された期間限定イベント「悪魔の勝負師と幻の酒」では、カスピエル(演:朝霧友陽)、メフィスト(演:高橋広樹)、インキュバス(演:鈴木裕斗)の3人が歌う「俺らイケメン」が使われた[28]。 宮前は同楽曲について「これまで本作ではキャラクターソングを出してきたものの、すべて女性ばかりだったため、男性キャラクターによる曲も出したいと考えていた。また、2月と3月はサキュバスとインキュバスを題材とすることを決めていたため、それに合わせた」とインサイドとのメールインタビューの中で話しており、80年代の3人組アイドルを念頭に置いたうえで寄崎に発注したと述べている[28]。 一方、ハックのイベントでは、キャラクターソングが続いたため、彼らしいテーマをと発注した結果、プロレスのような曲になってしまったと宮前は2019年の4Gamer.netとのインタビューの中で振り返っている[29]。
ゲーム内で使用されている一部の音楽は、「メギド名曲コレクション」として公式サイトからダウンロードが可能である。 一部の曲はゲームで使用されているバージョンから微調整が施されている[25]。
本作はSNS等を通じて話題となり、プレイヤー同士のプレゼンが行われることもあった[30]。 宮前は4Gamer.netとのインタビューの中で、バトル重視のゲームとして作ったため、女性のファンがここまで増えるとは思っていなかったと述べており、特にサタナキアの人気が高いことに驚いたと話している[30]。