ヘント市電 (フランス語 : Tramway de Gand 、オランダ語 : Gentse tram )は、ベルギー の都市・ヘント 市内に存在する路面電車 。1870年代に開通した長い歴史を持つ路線で、2020年 現在はフランデレン地域 で路線バス 、路面電車 などの公共交通事業を展開するフランデレン交通公社、通称"ドゥ・レイン (オランダ語版 ) "によって運営が行われている。
歴史
ヘント市内における最初の軌道交通は1874年 から営業運転を開始した馬車鉄道 で、それまで市内の交通機関の主力であった乗合馬車 を置き換える形で路線網を拡大した。その後、1898年 にこの馬車鉄道をより近代的な路面電車 へ置き換えるためにヘント電気軌道 (フランス語 : Tramways Electriques de Gent 、オランダ語 : Elektrische Tramwegen van Gent )が設立された。1899年 の運行開始当初はヘント市からの要望に基づき、蓄電池 を用いた車両の導入が実施されたが、故障の頻発、運用コストの増大など多数の問題を有していた事で、1904年 に架線 を用いた路面電車への置き換えが実施された。
それ以降は路線網の拡大を続け、ヘント万国博覧会 が開催された1913年 時点で総延長は32 kmを記録していた。第一次世界大戦 による中断はあったものの、その後も需要の高さを背景に次々と延伸が行われ、1933年 には53 kmにも達した。ただしそれ以降は第二次世界大戦 を挟み、1950年代までこの路線網が維持されていた。一方、運営組織であったヘント電気軌道については1954年 に民営企業からヘント市の公営企業へと移管し、1961年 3月15日 以降は公営組織のヘント自治体協会 (Maatschappij voor het Intercommunaal te Gent、MIVG)が路面電車を始めとした公共交通の運営を実施した[ 8] 。
この1960年代当時、ベルギー国内ではモータリーゼーション の進展から路面電車の路線網の縮小が相次ぎ、ヘント市電も1961年の11系統をピークに廃止が相次いでいた。そこでベルギー各地の都市では路面電車の一部を地下に移し、将来的に路面電車から高規格の地下鉄 へ移行するプレメトロ (フランス語版 ) と呼ばれる計画が進行しており、ヘント市電でも市内中心部の区間を中心に地下へ移行する事が検討されていた。だが、工事の過程での歴史的建造物の破壊や騒音・振動などの被害への懸念から多数の反対意見が寄せられた結果、ヘント市内におけるプレメトロの建設計画は保留を経て1975年 に撤回された。それ以降はPCCカー の導入を始めとした路面電車そのものの近代化が積極的に実施された。
その後、ヘントを含めたフランデレン地域 の公共交通事業者(ベルギー国鉄 を除く)は1988年 に実施された制度改革によって各地の市や公営組織からフランデレン政府の管轄下へと移管し、1991年 1月1日 以降はフランデレン交通公社(Vlaamse Vervoermaatschappij)、通称「ドゥ・レイン (オランダ語版 ) 」が運営している。ドゥ・レインは新型車両の導入に加え、路線の延伸や更新工事も積極的に実施しており、その中で2000年代以降に行われた主要な路線延伸は以下の通りである[ 8] 。
運用
系統図 (2017年 時点)
ヘント市電では2000年代以降路線の延伸・整備に合わせて系統の再編が何度か行われており、2017年 に21・22号線が2号線に統合されて以降は以下の3系統で運用されている。系統数は減少したがそれぞれヘント市内の要所を巡る経路を有しているため利用客数は多い[ 12] 。
運賃はドゥ・レインが運営する他の公共交通機関と共通で、券売機から乗車券を購入する場合運賃は2020年 現在2.5ユーロ である一方、同事業者が展開するスマートフォン向けのアプリケーションを用いた場合は1.8ユーロに割引される。また、複数回利用可能な乗車券(2回:5ユーロ、10回:16ユーロ)や複数日(1日:7.5ユーロ、3日:15ユーロ)利用可能な乗車券の発行も実施しており、一部はアプリケーションからも購入可能である[ 13] [ 14] [ 15] 。
系統番号
経路
備考
1
Evergem Brielken - Rabot - Korenmarkt - Sint-Pietersstation - Gent Flanders Expo
Zonnestraat電停はGent Flanders Expo方面、Korte Meer電停はEvergem Brielken方面の列車のみ停車
2
Zwijnaarde - Krijgslaan - Sint-Pietersstation - Rozemarijnbrug - Zonnestraat - Zuid - Vijfwindgatenstraat - Melle Leeuw
4
Gent UZ - Krijgslaan - Sint-Pietersstation - Rozemarijnbrug - Rabot - Muidebrug - Korenmarkt - Zuid - Vijfwindgatenstraat - Ledeberg
Muideburg電停はLedeberg方面の列車のみ停車 Ledeberg - Moscou間は2017年 11月 以降線路・施設の老朽化のため休止中[ 16]
車両
2020年 現在、ヘント市電に在籍する路面電車車両は以下の通りである。ドゥ・レインが運営する3つの路面電車路線のうち、ヘント市電にのみ両運転台車両が導入されている[ 1] [ 17] 。
下記の現有車両以外に、ドゥ・レインへの運営移管後の1994年 には輸送力増強のためドイツ のボーフム/ゲルゼンキルヒェン市電 で使用されていた2車体連接車 のデュワグカー が9両譲渡されたが、乗降扉や制動装置 に関するトラブルが頻発し、これらが要因となった衝突事故も発生した結果1998年 10月 までに全車両が営業運転から撤退し廃車された。また、これに先立つ1993年 にはフランス のサン=テティエンヌ市電 (英語版 ) から2車体連接式のPCCカーが1両導入されたものの、こちらも短期間のみの運用で終わっている[ 18] 。
今後の予定
路線
ドゥ・レインでは、1960年代までに廃止されたダンポーント(Dampoort)方面へ向かう7号線や、2009年 までトロリーバス (ヘント・トロリーバス )の路線として運用されていた3号線を含めたヘント市電の大規模な延伸が計画されている。そのうち7号線のSint-Pietersstation - Dampoort間については、2013年 の計画発表時点では早くても2020年 までに開通する計画であったが、実際に許可が承認されたのは2019年 となり、2024年 以降の開通を目指している[ 22] [ 23] [ 24] [ 25] 。
また、2012年 に開通したガルデニエス自転車橋(Gaardeniersbrug)は中央に路面電車が通行可能な構造となっており、既存の路線と新たに作られる車両基地を結ぶ予定になっているが、建設予定地の土壌から有害物質が検出されるなどの事情から車両基地の開設は予定されていた2015年 から遅れている[ 26] [ 27] 。
中央を路面電車が走行可能な構造となっているガルデニエス橋(
2010年 撮影)
車両
ヘント市電を運営するドゥ・レインは、同事業者が運営する路面電車路線に残存する旧型電車の置き換え用として、スペイン のCAF が展開する超低床電車のウルボス100 を各路線に導入する事になっている。そのうちヘント市電には5車体連接式・両運転台仕様車両が18両登場する予定である[ 28] [ 29] 。
脚注
注釈
出典
参考資料
外部リンク
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