カッシーニは自らが発見した4つの衛星に対して、ルイ14世を讃えて Sidera Lodoicea と名付けた。これは「ルイの星」という意味である[15]。17世紀の終わりになると、天文学者はこれらの4衛星とタイタンをあわせ、Saturn I から Saturn V というように番号で呼ぶようになった。1789年にミマスとエンケラドゥスが発見されるとこの命名方法は Saturn VII まで拡張され、古い5衛星の番号を押し上げる形で番号が振り直された。この方式が続いたのは1848年にヒペリオンが発見されるまでであり、この時はイアペトゥスの番号が Saturn VIII に変更された。
これらの7つの衛星に現在知られている名前を与えたのは、天文学者のジョン・ハーシェルである。彼はミマスとエンケラドゥスの発見者であるウィリアム・ハーシェルの息子である。1847年に発表した『Results of Astronomical Observations made at the Cape of Good Hope』の中で、7つの衛星に対して命名した。テティスの名前は、ギリシア神話の巨人族(ティーターン)の1人テーテュースに因む。なおギリシア神話には別にテティス (Thetis) というニンフが登場するが、この衛星とは関係がない[11]。
軌道
テティスは土星からおよそ 295,000 km 離れたところを公転しており、これは土星半径のおよそ4.4倍に相当する。軌道離心率は非常に小さく、また軌道傾斜角はおよそ 1° である。テティスはミマスとの軌道傾斜角の共鳴に固定されているが、両者の質量が小さく及ぼす重力が弱いため、この共鳴は軌道離心率や潮汐加熱には目立った影響を与えていない[16]。
テティスの表面には多くのクレーターが見られ、直径が 40 km を超えるものが多く存在している。先行半球の一部の領域は滑らかな表面になっている。またカズマ地形と呼ばれる溝状の地形やトラフも多数発見されている[25]。
先行半球の西側には、直径が 450 km と衛星直径の 40% に及ぶ大きさを持つオデュッセウスという巨大なクレーターが存在する。現在のオデュッセウスは非常に平坦であり、より正確に表現するとこのクレーターの底部はテティスの球状の輪郭に沿った形状をしている。これはテティスの氷地殻の長時間に渡る粘性緩和が働いた結果だと考えられている。ただし平坦と言ってもクレーターの縁の頂上は衛星の平均半径から測っておよそ 5 km の高さがある。オデュッセウスの中心部には 2-4 km の深さの穴が存在し、それはクレーター底部から 6-9 km 高い領域に囲まれている。この高い領域自身は、テティスの平均半径よりも 3 km ほど低い位置にある[25]。
テティス表面に見られる衝突クレーターの大部分は、単純な中央丘を持つタイプである。直径が 150 km を超えるクレーターの場合はより複雑な丘とリング構造を持つ形態を示す。最大のクレーターであるオデュッセウスのみが、中央付近が沈んだ形状をしている。古い衝突クレーターは新しいものに比べて幾分か浅い形状をしており、これは地形の緩和の度合いを表している[7]。
降着過程は衛星が完全に形成した後数千年に渡って続いた可能性が高い。理論モデルでは、降着に伴う天体衝突がテティスの外層を加熱し、地下 29 km 程度にわたって最大温度は 155 K に到達したことが示唆されている[32]。形成が終了した後、熱伝導によって地下は冷えていき、内部は外層から熱が伝わるため加熱される[32]。冷えていく表面付近の層は収縮し、逆に内部は膨張する。この過程はテティスの近くに強い伸長応力を及ぼし、その強さは 5.7 MPa になったと推定される。これにより、表面のひび割れが発生したと考えられる[33]。
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