ワーテルローの戦い(1815年)の功により「グレナディア」の名称が与えられる以前の連隊名は “First Guards” 或は “First Regiment of Foot Guards” であった。そして、同じ近衛歩兵連隊であるコールドストリームガーズとスコッツガーズが以前の”2nd Regiment of Foot Guards”、”3rd Regiment of Foot Guards”という名称を使用していないのに対し、グレナディアガーズは現在でも “The First or Grenadier Regiment of Foot Guards” の名称を併用している。従って、日本語で「第1近衛連隊」、「近衛第1連隊」、「近衛歩兵第1連隊」等と表記されている部隊もこの連隊である。
イギリスの歩兵連隊で海上戦闘を経験している部隊は珍しくない。イギリスに艦上勤務を専門とする歩兵部隊である海兵隊自体が無かった第一次英蘭戦争には、イングランド共和国に属していたコールドストリームガーズ(当時の名称は”モンクの歩兵連隊”(Monck's Regiment of Foote))が海上戦闘に加わっており、イギリスで初の海兵連隊である”デューク・オブ・ヨーク・アンド・アルバニー海上歩兵連隊”(Duke of York and Albany's Maritime Regiment of Foot)が、1664年にコールドストリームガーズ(当時の名称は”ロードジェネラル近衛歩兵連隊”(The Lord General's Regiment of Foot Guards))から将兵を抽出して編成された後も、歩兵部隊が海上任務に就くことが度々あった。更に時代が下ったナポレオン戦争でも、第2及び69歩兵連隊[1]が艦隊に配属されている。また逆に、第3、第30、第31、第32の4歩兵連隊[1]は何れも海兵隊から一般の歩兵連隊に改編された部隊である。
ワーテルローの戦いの前哨戦である、カトル・ブラの戦い(Battle of Quatre Bras)に於ては第3大隊が大きな損害を受けた。1815年6月18日は早朝から、同盟軍右翼の防御拠点であるウーグモン館(Château d'Hougoumont)にナポレオン軍の激しい攻撃が加えられていた。そこを守っていたのは近衛歩兵第二連隊(コールドストリームガーズ)のジェームス・マクダネル中佐(James Macdonnell)が指揮する部隊であった。この守備隊には、近衛歩兵第二及び第三連隊(後のスコッツガーズ)の軽歩兵中隊と共に近衛歩兵第一連隊の軽歩兵中隊も分派されていた。そして、戦いが終わるまでこの城館を守り抜いた。
フランス大陸軍の最精鋭部隊とされていた皇帝近衛擲弾歩兵連隊を破ったこの日、連隊は”近衛歩兵第一又はグレナディア連隊”(1st or Grenadier Regiment of Foot Guards)となった。そして後日、擲弾を象った連隊徽章が制定され、擲弾兵の象徴であったベアスキン(熊皮帽)を連隊全員が着用するようになった。それに伴い、連隊の擲弾兵中隊は廃止されて全中隊が同一の編成となり、それまで擲弾兵中隊の行進曲だったブリティッシュ・グレナディアーズが連隊の速歩行進曲に制定された。
また同年、イギリス陸軍の各連隊に置かれていた軍楽隊が分離され、陸軍音楽学校を母体として編成された陸軍音楽軍団(Corps of Army Music)の下に編入された。そのため、現在ではグレナディアガーズ軍楽隊(Band of the Grenadier Guards)もグレナディアガーズ連隊ではなく、陸軍音楽軍団の傘下にある。
連隊本部
連隊本部はバッキンガム宮殿の向かいにあるウェリントン・バラックス(Wellington Barracks)にある。連隊のカーネル・イン・チーフ(Colonel in Chief)には歴代君主が就任している。名誉職の連隊長(Colonel of the Regiment)は陸軍の将官又は王族が務めることになっており、2017年にエディンバラ公が退任した後はエリザベス2世の第2王子ヨーク公爵アンドルー王子がその地位にあったが、彼を被告とする児童買春の民事訴訟が受理されたことにともなって2022年1月13日に辞任しており[2]、連隊長位は一時的に空席となった。ちなみに、エリザベス2世女王も戴冠以前の1942年、15歳にして名誉連隊長を預かった経験を持つ[3]。
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