イタリア軍 (イタリアぐん、イタリア語 : Forze armate 、略称FF.AA. )は、イタリア共和国 の軍隊 。
概要
陸軍 ・海軍 (イタリア沿岸警備隊 を含む)・空軍 に加え第四の軍といえる警察軍(カラビニエリ )を保有し、軍事費総額は世界第11位に達する。現役兵員は陸海空の総数が18万3000名[1] 、警察軍は10万9499名となる。
これ以外に予備役 制度が存在する他、財務省管轄である財務警察 (イタリア語版 、英語版 ) も一部が国境警備隊や憲兵 として運用されている。
1946年 以降、共和制 を採用するイタリア共和国において国軍 はイタリア国防省 の管轄下に置かれ、国防最高評議会及び共和国議会 の承認を受けた共和国大統領 の命令によって行動する。国外の協力組織としてロードス及びマルタにおけるエルサレムの聖ヨハネ病院独立騎士修道会 (マルタ島政府 とは異なる)を指揮下に置いており、主に医療活動への従事が求められる。
略称がF.A.ではないのは、消防(イタリア語 ; Vigili del Fuoco)などと同じように、軍隊には複数の人員がいることを表すためである。
組織
指揮官
大統領
首相
国防大臣 (Ministro della Difesa)
国防参謀総長 (Capo di stato maggiore della difesa)
陸軍参謀総長 (Capo di stato maggiore dell'Esercito Italiano)
海軍参謀総長 (Capo di stato maggiore della Marina Militare)
空軍参謀総長 (Capo di stato maggiore dell'Aeronautica Militare)
カラビニエリ総司令官 (Comandante generale dell'Arma dei Carabinieri)
軍政軍令機関
国防最高評議会 (Consiglio supremo di difesa)
国防省 (Ministero della difesa)
国防参謀本部 (統合参謀本部、Stato maggiore della difesa)
陸軍参謀本部 (Stato maggiore dell'Esercito Italiano)
海軍参謀本部 (Stato maggiore della Marina Militare)
空軍参謀本部 (Stato maggiore dell'Aeronautica Militare)
カラビニエリ総司令部 (Comando generale dell'Arma dei Carabinieri)
主要部隊
イタリア陸軍(Esercito Italiano)
アルピーニ (山岳兵)
イタリア陸軍 (Esercito Italiano、エゼルチト・イタリアーノ)は1861年 5月4日 、中世時代からの歴史を持つサヴォイア家 の軍隊を中核にヴィットーリオ・エマヌエーレ2世 により王立陸軍 (Regio Esercito レージョ・エゼルチト)として創設された。第一次世界大戦と第二次世界大戦を経て共和制移行後はサヴォイア家から共和国大統領を最高司令官として再編される。冷戦期はNATOの一角を占める傍ら、1982年のレバノン内戦 介入を契機に積極的な国際貢献活動に従事した。近年ではアメリカ合衆国 が主導する対テロ戦争に協力し、アフガニスタン の国際治安支援部隊 に山岳部隊(アルピーニ )などが参加している。
2004年、軍の合理化を進める過程で徴兵制度の廃止が決定され、職業軍人 のみの組織へと再編された。
イタリア海軍(Marina Militare)
航空母艦「カヴール 」
イタリア海軍 (Marina Militare、マリーナ・ミリターレ)は1861年 3月17日 、ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世 により王立海軍 (Regia Marina レージャ・マリーナ)として創設された。伝統的に海洋国家を志向する事で中世・近世の戦乱に対処した勢力が根付いてきたイタリア半島 の歴史から重要視され、特にイギリス海軍 との交流で造船技術の蓄積が試みられた。装甲艦 、前弩級戦艦 、弩級戦艦 といった大型艦艇の建艦競争にも積極的に参加したが、第一次世界大戦から水雷艇などの小型艦艇の運用に転じて超弩級戦艦 は建造されなかった。
第二次世界大戦までの戦間期に新戦艦という定義で戦艦建造を再開したのを最後に大艦巨砲主義 から脱却、共和制移行後に海軍の現代化を推進した。V/STOL空母や強襲揚陸艦の保有を進め、冷戦期にはソ連 黒海艦隊と対峙する役割を負った。現在もNATO軍の航空艦隊の一翼を担う存在として国際貢献活動に関わる他、イタリア沿岸警備隊 (Guardia Costiera、グアルディア・コスティエーラ)を指揮下に置いている。
イタリア空軍
ユーロファイター タイフーン
イタリア空軍 (Aeronautica Militare、アエロナウティカ・ミリターレ)はイタリア陸軍航空隊(1884年 発足)を前身とし、1915年 1月7日 に陸軍航空団(Corpo Aeronautico Militare )として正式に創設された。1923年 3月28日 にヴィットーリオ・エマヌエーレ3世 から王立空軍 (Regia Aeronautica、レージャ・アエロナウティカ)の名を与えられた。組織的にも王立空軍には独立指揮権が与えられ、陸軍航空隊から独立空軍へと昇格された。
欧州 でも古い歴史を持つ空軍組織の一つとして、共和制移行後も冷戦 や対テロ戦争での貢献活動に従事している。
カラビニエリ
カラビニエリ GIS(国家治安警察隊特殊介入部隊
カラビニエリ (Carabinieri)、現正式名称アルマ・デイ・カラビニエリ (Arma dei carabinieri)は、1814年 7月13日 、ヴィットーリオ・エマヌエーレ1世 により創設された。1726年に設立されたサルデーニャ竜騎兵隊 (Dragoni di Sardegna、ドラゴーニ・ディ・サルデーニャ)に代わり、軍警察 及び国家憲兵 としての役割を与えられた。2001年、正式に陸海空軍に次ぐ第四の軍として承認されるなど独立指揮権を持つ。
最高階級であるカラビニエリ総司令官 (Comandante generale dell'Arma dei Carabinieri)は、陸海空軍中将と同格として扱われる。
2005年、主要国首脳会議 は行動計画「世界的な平和支援活動能力の拡大」に基き、イタリア国家警察軍を中心とした警察先端研究センター (CoESPU)を設立した。同組織は治安任務に関する先端研究・訓練拠点として、警察部隊の整備が不十分な地域・国家での治安組織の設立に協力している[2] 。
憲法
イタリア軍の法的地位は、憲法11条、52条、87条により規定される。
イタリア共和国は他国市民の自由を抑圧する為の戦争行為、または国家紛争を調停する為の戦争行為を行ってはならない。他国と平等な条件の下に、平和と正義による世界秩序を維持する為に必要と判断される限りにおいて、イタリア共和国は主権の制限に同意する。またそうした動きを促進する国際組織を支援するものとする。
国家の防衛は共和国市民の神聖な義務である。徴兵制は法と制限の範囲内において義務とする。その兵役実施は市民の職業や政治的権利を脅かさない事を前提に行われる。また国軍は共和国における民主主義の精神に則り、運営される。
軍事上の最高指揮権は共和国大統領が保有し、その命令は国防最高評議会と共和国議会の承認を得て実行される。
国際活動
Current operations of Italian Armed Forces highlighted on a map of Afro-Eurasia.
第二次世界大戦 以後、各国軍が国際貢献活動を重要な目的とする中、パリ 講和条約によって軍備と対外活動に制限が加えられていたイタリア軍も1951年のインド・パキスタン紛争以来、多くの国際貢献活動に参加している。冷戦中期から現在に至るまで、国連・NATO・アメリカ主導の有志連合を通じて旧ソ連領(ロシア 及びCIS )やアフリカ 情勢での紛争 ・虐殺 の停止、中東 和平プロセス、対テロ戦争、幼児・女性への人権侵害 の防止などに協力している。
冷戦期にアメリカ合衆国と西欧 諸国間の同盟として設立されたNATO(北大西洋条約機構 )では、米欧州軍の南欧方面部隊の中核である米第173空挺旅団 と米第6艦隊 を含む在伊米軍とNATO地中海海軍(ナポリ統連合軍司令部 )と協力しつつ、NATO国防大学(EUR)の監理運営、15か国からなるイタリアNATO緊急展開軍団 の指揮編成などが委任されている。
1982年、サブラ・シャティーラ事件 に伴うレバノン内戦 介入がイタリア軍にとり、国連中心の国際貢献活動に参加する上で重要な契機となった。またNATOやアメリカ軍 との共同作戦でも湾岸戦争 (1990年)での航空支援、対テロ戦争 における不朽の自由作戦 と作戦後の治安作戦(国際治安支援部隊 )に山岳兵や国家憲兵を派遣した。続くイラク戦争 には国内の反対から侵攻作戦には参加しなかったが、治安 維持については人道支援を目的に派兵した。
2006年5月26日、本国での政権交代 により対米関係の見直しが進められ、NATOや国連 の同意を得ていないイラク戦争からの撤収が決定された。
参加作戦
現在、イタリア軍は国際貢献に関する23件の作戦に派兵している[3] 。
引用
外部リンク
西ヨーロッパ 東ヨーロッパ 中央ヨーロッパ 南ヨーロッパ 北ヨーロッパ バルト三国 自治領 その他 関連項目
バチカンは国際連合 非加盟。「その他」は国家の承認を得る国が少ない、または無い国であり、国際連合非加盟。国家承認を得た国連非加盟の国と地域の一覧 ・独立主張のある地域一覧 も参照。
1 ウラル山脈以東はアジアに分類されることもある。
2 島嶼部はアジアにも分類され得る。また、隣国のトルコ もヨーロッパに分類され得る。