この項目では、カルボニル化合物について説明しています。金属化合物については「金属アミド 」を、建具については「網戸 」をご覧ください。
カルボン酸アミドの一般式
酸アミド (さんアミド)とは、化合物 、特に有機化合物 の分類のひとつで、オキソ酸 とアンモニア あるいは 1級、2級アミン とが脱水縮合した構造を持つものを指す[ 1] 。例えば、カルボン酸アミドは R-C(=O)-NR1 R2 の構造を持つ。特に断らない限り、単に「アミド 」といった場合は、カルボン酸アミド(カルボキサミド)のことを指すことが多い。他にスルホンアミド 、リン酸アミドなどが知られる。
通常、カルボン酸アミド(
R
− − -->
C
(
=
O
)
− − -->
NR
1
R
2
{\displaystyle {\ce {R-C(=O)-NR1R2}}}
)はアミン とカルボン酸 の脱水縮合反応 で生成される。その構造のうち、カルボニル基と窒素との結合を特にアミド結合 と呼ぶ(金属アミドの結合はアミド結合とは呼ばれない)。
化合物フラグメントがアミド結合で多数連結した高分子化合物(樹脂)をポリアミド と呼ぶ。ポリアミド系樹脂 の代表としては6,6-ナイロン が挙げられる。
一方、生体を構成するタンパク質 は α-アミノ酸 が多数連結して生成されるが、ポリアミドとは呼ばれずにペプチド と呼ばれる。また、ペプチドを構成する α-アミノ酸単位が連続したアミド結合の部分をペプチド結合 と呼称する(たとえタンパク質中であっても、α-アミノ酸単位が連続していない部分は単に「アミド結合」と呼ばれる)。
分類
カルボン酸アミドは、置換基の数により以下のように分類される (R1 , R2 ≠ H)。
1級アミド
R
− − -->
C
(
=
O
)
− − -->
NH
2
{\displaystyle {\ce {R-C(=O)-NH2}}}
2級アミド
R
− − -->
C
(
=
O
)
− − -->
NHR
1
{\displaystyle {\ce {R-C(=O)-NHR^1}}}
3級アミド
R
− − -->
C
(
=
O
)
− − -->
NR
1
R
2
{\displaystyle {\ce {R-C(=O)-NR^1R^2}}}
環状構造を持つアミドはラクタム とも呼ばれる。
他にアミド結合を持つ化合物群としては、1個の窒素と 2個のカルボニル基が結合したイミド (
R
′
− − -->
C
(
=
O
)
− − -->
N
(
R
)
− − -->
C
(
=
O
)
− − -->
R
″
{\displaystyle {\ce {R'-C(=O)-N(R)-C(=O)-R''}}}
)、2個の窒素と 1個のカルボニル基が結合した尿素 およびその誘導体 (
RR
′
N
− − -->
C
(
=
O
)
− − -->
NR
″
R
‴
{\displaystyle {\ce {RR'N-C(=O)-NR''R'''}}}
) がある。
合成法
カルボン酸エステル とアミン の置換反応によってアミド結合を形成できる。
RCOOR
1
+
NHR
2
R
3
⟶ ⟶ -->
RCONR
2
R
3
+
R
1
OH
{\displaystyle {\ce {RCOOR^1 + NHR^2R^3 -> RCONR^2R^3 + R^1OH}}}
しかし基本的にアミドの合成には活性化した酸成分とアミン成分を用いる。活性化した酸成分を用いるのは通常のエステルでは反応性が低いためであり、特別な置換基を持つ酸成分を用いて反応を速めるのが一般的である。活性化した酸成分としてカルボン酸ハロゲン化物 、カルボン酸無水物 、カルボン酸アジド 、活性エステル などが用いられる。
活性化された酸成分を R-COX と表すとき、一般にHX の酸性が強いほど反応性が高いと考えてよい。ただし反応性の高い方法はラセミ化 など副反応を伴うこともあり、このため様々な工夫が凝らされている。特にα-アミノ酸からペプチドを合成する場合は、α位のラセミ化が問題となるのでこの点を留意して合成法を検討する。
対称酸無水物を用いると酸の半分はアミンと反応しないため、無水酢酸 など入手しやすい酸の無水物に限って用いられる。
酸ハライドを使ってアミド合成する際、触媒量のピリジン を用いると収率が向上する。これは系内で不安定なアシルピリジニウム塩が発生し、これがアミンと反応するためである。ピリジンは再生するので触媒量でよい。4-ジメチルアミノピリジン (DMAP) はさらに強力な触媒で、数万倍もアミド結合形成を速める効果がある。またアミンを塩基性水溶液に溶解させ反応させる方法も知られている(ショッテン・バウマン反応 )。
中性条件下で反応を進めたい場合は、酸成分とアミン成分存在下で各種縮合剤 を作用させる。N ,N' -ジシクロヘキシルカルボジイミド (DCC)は古典的な縮合剤で、反応系中で非対称酸無水物 を作るため酸成分が無駄にならない。ラセミ化を防ぐため、1当量の 1-ヒドロキシベンゾトリアゾール (HOBt)を加えることが多い。この場合カルボン酸はいったん HOBt と縮合して活性エステルを作り、これがアミンと反応してアミド結合を作る。ただし DCC はアレルギー誘発物質であるなど問題も多いため、さらに優秀な試薬 が多数開発されている。アゾジカルボン酸ジエチル (DEAD)とトリフェニルホスフィン を用いる光延反応 も、穏和な条件でアミド結合を作る方法として多用される。
工業的に大量生産する場合、酸無水物や酸ハライドのように、有害な副生成物が生じる原料は好ましくない。近年では、アルコール とアミン を触媒 存在下で反応させることで、直接アミドを合成する方法も開発されている[ 2] 。
反応
アミドは酸または塩基性条件下に加水分解すると、カルボン酸 成分とアミン 成分とを与える。一般に、相当するエステル よりも強い反応条件を必要とする。
RC
(
=
O
)
NHR
′
+
OH
− − -->
⟶ ⟶ -->
RCO
2
− − -->
+
R
′
NH
2
{\displaystyle {\ce {RC(=O)NHR' + OH^- -> RCO2^- + R'NH2}}}
1級アミドを五酸化二リン などで脱水するとニトリル に変わる。
RC
(
=
O
)
NH
2
− − -->
H
2
O
⟶ ⟶ -->
R
− − -->
CN
{\displaystyle {\ce {RC(=O)NH2 - H2O -> R-CN}}}
ギ酸アミドからトリホスゲン などで脱水を行うとイソニトリル (イソシアニド)が得られる。
RNHCHO
− − -->
H
2
O
⟶ ⟶ -->
R
− − -->
N
=
C
:
{\displaystyle {\ce {RNHCHO - H2O -> R-N=C:}}}
2級アミドに塩化チオニル やオキシ塩化リン などを作用させると、イミド酸塩化物が得られる。
RC
(
=
O
)
NHR
′
+
SOCl
2
⟶ ⟶ -->
RC
(
=
NR
′
)
Cl
{\displaystyle {\ce {RC(=O)NHR' + SOCl2 -> RC(=NR')Cl}}}
水素化アルミニウムリチウム によりアミン に還元される。
RC
(
=
O
)
NHR
′
+
LiAlH
4
⟶ ⟶ -->
RCH
2
NHR
′
{\displaystyle {\ce {RC(=O)NHR' + LiAlH4 -> RCH2NHR'}}}
物性
1級、2級アミドは水素結合性を持ち、そのことがペプチドや蛋白質の高次構造の要因となっている。記事: タンパク質 およびそのリンク先に詳しい。
アミド構造は、イミド酸 構造 (R-C(=NR')-OH) との互変異性 を持つ。通常はアミド構造がはるかに安定であるが、環状のラクタムあるいは複素環式化合物 ではイミド酸構造(ラクチム)が安定となることがある。
主なアミド
参考文献
関連項目
ウィキメディア・コモンズには、
アミド に関連するカテゴリがあります。