大宇宙と小宇宙の図解,ロバート・フラッド『両宇宙誌=大宇宙誌』(1617年)
宇宙における人間と天空現象との関係,ロバート・フラッド『宇宙の気象学』(1626年)
マクロコスモスとミクロコスモス (英 : Macrocosmos and microcosmos, Macrocosm and microcosm )は、マクロコスモス(大宇宙)とミクロコスモス(小宇宙)の対概念。前者は通常の「宇宙 」、後者は宇宙に見立て られた「人体 」を主に指す。マクロコスモスとミクロコスモスは、このふたつのコスモスが互いに照応するという思想である。
概説
マクロコスモスとミクロコスモスの対応は、人間のなかに大宇宙の本性や能力が内在しており、また大宇宙そのものが一つの人間であるとして、両者が類比 関係にあり、互いに影響をおよぼす動的な関係にあることを意味する。同様の思想は西洋だけでなく世界各地に存在し、例えば中国 の内丹術 にも見られる[ 3] 。
西洋では、古代ギリシア のデモクリトス にみられるが、特にプラトン学派 で用いられて、プラトン の『ティマイオス 』で生命的宇宙観と結びつけて語られた。この思想は、ボエティウス や新プラトン主義 を介して、シャルトル学派 など中世西欧にもみられるが、ルネサンス 期になるとフィレンツェ のプラトン主義者マルシリオ・フィチーノ らによってヘルメス主義 の復興とともに、それと融合されて、ルネサンス思想の典型として広範に支持された。
ヘルメス文書 のひとつ『エメラルド板 』に含まれる「下なるものは上なるもののごとく、上なるものは下なるもののごとし」という文章は、マクロコスモスとミクロコスモスの照応を見事に表現している。マクロコスモスとミクロコスモスとの間には、厳密な類比関係があり、ともに機械的ではなく「生命的」な存在とされる。また、宇宙と個体が照応するという考え方は、錬金術 や西洋占星術 とも結びつき、医学 、人相学 、骨相学 の原理ともなった。その後、近代科学の進展に伴って、マクロコスモスとミクロコスモスの照応という神秘性は、次第にその意味を失っていった。
脚注
参考文献
三浦信夫 執筆「大宇宙と小宇宙」『岩波哲学・思想事典』岩波書店、1998年。
清水純一 執筆「ミクロコスモス」『世界大百科事典 第27巻』加藤周一 編集、平凡社、2007年。
関連項目
外部リンク