カルミン
カルミン酸
コチニール色素 (コチニールしきそ、英 : cochineal extract )または、カルミンレッドK 、カルミンレッドMK-40 、カルミンレッドKL-80 、(あるいは単にカルミン [ 1] )、クリムゾンレーキ 、ナチュラルレッド4 [ 2] 、C.I. 75470 [ 2] 、E120 は、赤色 系やピンク色系の色素 であり、染料 、食品用の天然着色料 (食品添加物 )、化粧品 の着色料などとして使用されている。カルミン酸 のアルミニウム 塩として得られる。カメムシ目 カイガラムシ 上科の一部の昆虫、特にアジア産のラックカイガラムシ、南ヨーロッパのケルメスカイガラムシ、メキシコのコチニールカイガラムシ などのメスの体を乾燥させ、体内に蓄積されている色素化合物を水 またはエタノール で抽出して色素としたもの。その本質はアントラキノン 誘導体のカルミン酸であることから、カルミン酸色素 とも呼ばれる。カルミンの語源 は欧州のケルメスカイガラムシ(タマカイガラムシ)から古代から中世に伝統的に抽出して用いられてきた色素に由来する。
製法・派生物
コチニールカイガラムシが密生した葉
現代では工業的に通常は乾燥させたラックカイガラムシ、エンジムシ(コチニールカイガラムシ )から温水・熱水などで色素を抽出する。アルミニウム塩として不溶化(レーキ化)させるとコチニールレーキ という赤色顔料 となり、かつては赤色絵具 のクリムソンレーキ やカーマイン に使われた。しかし近年のクリムゾン やカーマイン は合成されたアントラキノンレッド に代替されている(一部メーカーではアリザリンレーキ で代替している)。ただ、絵具 においては、今日でもドイツ のシュミンケ社 (ドイツ語版 ) がコチニールレーキを原料とした赤色の透明水彩絵具「コチニールレッド (Cochineal Red)」を生産している[ 3] 。コチニールレーキのColour Index Generic NameはNatural Red 4である[ 4] 。
ルネサンス期、ケルメスカイガラムシから得られたカルミンが毛織物用の高級染料として知られ、フランチェスコ・ディ・マルコ・ダティーニ がこれを入手しようとしていた。同時期にレーキ化技術によって絵具に転用された。およそ一世紀を経て中南米がコンキスタドール の征服戦争の手に落ちると、エンジムシが生息し、伝統的にウチワサボテン を宿主として大量に養殖されてきたこの地域を領土として所有していたスペイン はコチニールの正体を秘匿して新大陸産のカルミンとしてヨーロッパに売りつけ、巨額の富を築いた。
食品添加物
清涼飲料水 、酒 、菓子 類、ハム ・ソーセージ 類、蒲鉾 などの着色に使われており、著名なところでは、過去にリキュール 「カンパリ 」がコチニール色素で着色されていた。加熱や発酵に対して安定だが、pH により色調が変化し、酸性側でオレンジ色、アルカリ性側では赤紫色を呈する。またタンパク質 が豊富な食品では紫色を呈するので、これを防止する場合にはミョウバン などの色調安定剤を併用する必要がある。
各種の安全性試験(急性毒性・催奇性・発ガン性など)の結果に問題はなく、FAO/WHO合同食品添加物専門家委員会はコチニールレーキの一日摂取許容量を体重1kgあたり5mgと評価している。なお、コチニール色素は動物由来であることから、菜食主義 や信仰上の理由から忌避されることがある。
アメリカ合衆国 ではコチニール色素およびコチニールレーキの使用は規制されていない。欧州連合 ではコチニール色素およびコチニールレーキはE120として食品ごとに使用が認可されており、他の添加物と同様の表示義務が課せられている。日本ではコチニール色素は食品衛生法 の既存添加物名簿に収載されており、他の添加物と同様の表示義務が課せられている。しかしコチニールレーキは指定添加物でも既存添加物名簿所収でもないため使用できない。
アレルギー
コチニール色素(カルミン)を使った食品や化粧品を、製造する人々、使用する人々、摂取する人々の間で、付着部位の腫れ[ 5] 、喘息 、アナフィラキシーショック などのアレルギー 発作が報告されている[ 6] 。
これらのアレルギー反応の原因について、原料のエンジムシ由来の特定のタンパク質が原因物質だろうと考える人も一部にいるが[ 7] 、色素自体がハプテン抗原として反応する可能性を示唆する報告もある[ 7] 。
化粧品の場合、口紅 や頬紅 (ほおべに。チークカラー)や、まぶた にピンク色を加える化粧品にカルミン(コチニール色素)がたいてい含まれているが、化粧品のカルミンが原因でアレルギーを発症した場合、たとえばカルミンを含む化粧品を塗った部分の皮膚 が腫れ上がったりするが、そのような場合、医師はカルミン入りの化粧品の使用を止めるようにアドヴァイスすることが一般的である。
出典
^ 日本の化粧品のパッケージの成分表示では単に、カルミン、と表示されている。
^ a b Dapson, Rw; Frank, M; Penney, Dp; Kiernan, Ja (2009). “Revised procedures for the certification of carmine (C.I. 75470, Natural red 4) as a biological stain”. Biotechnic & Histochemistry 82 (1): 13–15. doi :10.1080/10520290701207364 . ISSN 1052-0295 .
^ シュミンケ社の透明水彩絵具のブランドであるシュミンケホラダムから発売されている。
^ The Color of Art Pigment Database : Pigment Red,PR
^ 「魅惑の赤色口紅」が原因でアナフィラキシーに 日経メディカル 2022/5/11, (要登録)
^ 原田晋, 山川有子, 杉本直樹, 穐 浩「O55-5 コチニール色素を原因物質と考えた,フランス製赤色マカロン摂取後に生じたアナフィラキシーの2症例(食物アレルギー アナフィラキシー1,口演,第62回日本アレルギー学会秋季学術大会) 」『アレルギー』第61巻第9-10号、日本アレルギー学会、2012年、1538頁、doi :10.15036/arerugi.61.1538_1 。
^ a b 穐山浩, 杉本直樹「コチニール色素・カルミン摂取による食物アレルギー 」『ファルマシア』第50巻第6号、日本薬学会、2014年、522-527頁、doi :10.14894/faruawpsj.50.6_522 。
参考文献
関連項目
外部リンク
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