『イングランド国王エドワード二世の困難に満ちた治世と嘆かわしき死、また誇り高きモーティマーの悲劇的な失墜』(英語: The Troublesome Reign and Lamentable Death of Edward the Second, King of England, with the Tragical Fall of Proud Mortimer) は『エドワード二世』 (英語: Edward II) として知られ、クリストファー・マーロウによって執筆されたルネサンス、または近世の戯曲である。最初期のイングランド歴史劇の一つであり、イングランド王エドワード二世とピアーズ・ギャヴェストンの関係、ロジャー・モーティマーの命令によるエドワード殺害に焦点を当てている。
『エドワード二世』の著者に疑いが生じたことはない。1744年にドズリーは「エドワード二世」を Select Collection of Old Plays に収録したが、マーロウの名前は序文では言及されていない[5] 。マーロウの世評は1597年に出版されたトーマス・ビアード(英語版)の The Theatre of God's Judgement の中の中傷によって毀損されたままだった[6]。
『エドワード二世』の多くの批評はホモエロティシズムと権力に焦点を当てている。例えば、どのようにマーロウは「他者」を描写したか、また、いかにしてその描写は「自ら権威化し権力を強化する戦略としての他者の悪魔化」を暴露しているかに焦点を当てたエミリー・バーテルのSpectacles of Strangeness には "The Show of Sodomy" と題された『エドワード二世』についての章がある[8]。この章では、バーテルは「マーロウの中で、男色は隠されたものでも言葉に表せないものでもなかった。むしろそれは不可視化された存在として露わにされ、支配の継続を「既成事実」として維持しようとする者たちによって、見せられないものとして露呈された」と述べ、いかに男色が政治化され、暴露され、定義されたかに焦点を当てている[9]。マーロウの演劇の中で男色がいかに機能しているかを表すため、バーテルはいかに男色が劇の中で隠されているか、そしてまたエドワード殺害の手段を通して制裁を受けているかの間にある緊張に限定的な関心を置いている[10]。バーテルはライトボーンによる王の殺害が王の身体に痕跡を残さないことに綿密に注目する[10]。彼女は「男色の傾向は(中略)政治的な堕落ではない。主として暗黙のものではあるが、言葉に表せないものではない」と結んでいる[11]。
アンドルー・ガーによれば、知られているうち最初の『エドワード二世』の上演はペンブルック伯一座(英語版)による1592年のもので、おそらくシアター座で上演された[16]。ロスリン・ナットソンは『エドワード二世』の初期の上演について推測したことがある。評論 "Marlowe, Company Ownership, and the Role of Edward II" で、ナットソンは『エドワード二世』はエドワード・アレンとストレンジ一座のために書かれたと主張しているが、ペンブルック伯一座は『エドワード二世』をリチャード・バーベッジ(ウィリアム・シェイクスピアの劇団で最も著名な俳優)をエドワード役にして上演している[17]。ナットソンは主張の論拠として、俳優に割り当てられた台詞、マーロウの複数の劇団との親交、イザベラの役を用いている。彼女は『エドワード二世』でのバーベッジの演技はシェイクスピアがバーベッジのために書いた役に影響を与えているとしている。
^Masten, Jeffrey (28 December 2012). “Bound for Germany: Heresy, sodomy, and a new copy of Marlowe's Edward II”. Times Literary Supplement: pp. 17–19、p. 18.
^Robert Dodsley. Select Collection of Old Plays (12 vols.), 1744
^cf. Thomas Dabbs. Reforming Marlowe: The Nineteenth-Century Canonization of a Renaissance Dramatist. London, (Toronto: Associated University Presses, 1991)
^Bartels, Emily. Spectacles of Strangeness. University of Pennsylvania Press,1993.P.XV.
^Bartels, Emily. Spectacles of Strangeness. University of Pennsylvania Press, 1993. p. 145.
^ abBartels, Emily. Spectacles of Strangeness. University of Pennsylvania, 1993, 143-73
^Bartels, Emily. Spectacles of Strangeness. University of Pennsylvania, 1993. p. 172.
^Goldberg, Jonathan. "Sodomy and Society:The Case of Cristopher Marlowe." Staging the Renaissance: Reinterpretations of Elizabethan and Jacobean Drama. Edited by David Kastan and Peter Stallybrass, Routledge, 1991.
^Stymeist, David. "Status, Sodomy, and the Theatre in Marlowe's 'Edward II.'" Studies in English Literature, 1590-1900, vol.44, no.2, 2004, pp. 233–253. JSTOR, JSTOR, https://www.jstor.org/stable/3844628
^"Marlowe, History, and Politics." Kewes, Paulina. Christopher Marlowe in Context, edited by Emily Bartels and Emma Simth, Cambridge UP, 2013. pp. 138–154.
^ abLeech, Clifford. "Marlowe's 'Edward II': Power and Suffering." The Critical Quarterly,Vol. 1. Spring 1959. pp. 181–197
^Gurr, Andrew. The Shakespearean Stage 1574-1642. Cambridge UP,2009
^Knutson, Roslyn. "Marlowe, Company Ownership, and the Role of Edward II." Medieval & Renaissance England, Vol. 18. (2005) Rosemont Publishing & Printing Corp DBA Associate University Press, 2005. pp. 37–46
^Chambers, E.K. (1951). The Elizabethan Stage. Vol. II. Oxford, Clarendon Press. pp. 128–29
^"I wrote this play with Lion Feuchtwanger"; Dedication page from Leben Eduards des Zweiten von England, 1924.
^McDowell, W. Stuart. "Acting Brecht: The Munich Years," The Brecht Sourcebook, Carol Martin, Henry Bial, editors (Routledge, 2000).
参考文献
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Logan, Terence P., and Denzell S. Smith, eds. The Predecessors of Shakespeare: A Survey and Bibliography of Recent Studies in English Renaissance Drama. Lincoln, NE, University of Nebraska Press, 1973.
Marlowe, Christopher. Edward II, Nick Hern Books, London, 1997. ISBN978-0-7136-3942-1
Jeffrey Masten, "Bound for Germany: Heresy, sodomy, and a new copy of Marlowe's Edward II," Times Literary Supplement, 21 & 28 December 2012, pp. 17–19.
Jeff Rufo, "Marlowe's Minions: Sodomitical Politics in Edward II and The Massacre at Paris," Marlowe Studies 1 (2011): 5–24.