日本では、コーヒーの上にホイップクリームを浮かべたものが、一般的に「ウィンナ・コーヒー」と呼ばれる[7][8]。この名前を冠したコーヒーを初めて提供した店は、東京の神田神保町にある喫茶店「ラドリオ」で[9]、同店の常連であった東京大学の教授がウィーンに留学した際に目にしたコーヒーの話を参考に開発されたものである[10]が、この名称の由来となったウィーンには「ウィンナ・コーヒー」ないし「ヴィーナー・カフェー」という名称のコーヒーは存在しない。日本のウィンナ・コーヒーに近いものとして「アインシュペナー」(Einspänner)[7]や「カフェー・ミット・シュラークオーバース」(Kaffee mit Schlagobers) などがある。アインシュペナーはコーヒーにほぼ同量の生クリームが載っていて、カップではなくグラスに注がれている。アインシュペナーとは一頭立ての馬車を意味し[7]、かつて馬車の御者が暖を取るために飲んでいたことから名付けられた[8]。カフェー・ミット・シュラークオーバースは、コーヒーカップとは別の器に砂糖をかけたホイップクリーム(シュラークオーバース、Schlagobers)が添えられている。
アメリカ・イギリス・フランスなどでは、エスプレッソにホイップクリームを載せた「エスプレッソ・コン・パンナ」(espresso con panna, イタリア語でクリームを添えたエスプレッソの意)を、同じくウィーン風コーヒーという意味である「カフェ・ヴィエンヌ」(café vienne) または「カフェ・ヴィエノワ」(café viennois) と呼ぶことがある。
ウィンナ・コーヒーが登場する作品
トーマス・マンが1947年に発表した小説『ファウストゥス博士』の執筆の過程を記した自伝的作品『『ファウストゥス博士』の成立』(Die Entstehung des Doktor Faustus. Roman eines Romans, 1949年)の第6章で、マンと同様にアメリカに亡命していたアルノルト・シェーンベルク宅で、Wiener Kaffee を飲んだことが記されている。
Zum Abendessen bei Schönbergs in Brentwood. Vorzüglicher Wiener Kaffee.(ブレントウッドのシェーンベルク家で夕食。素晴らしいWiener Kaffee)