アンドリュー・アルム・ベンソン (Andrew Alm Benson 、1917年 9月24日 - 2015年 1月16日 )は、アメリカ合衆国 の生物学者 。学位 はPh.D. (カリフォルニア工科大学 ・1942年 )。
カリフォルニア大学 サンディエゴ校 教授 などを歴任した。
概要
植物の炭素循環 の研究で知られている[ 1] [ 2] 。1989年に退職するまでカリフォルニア大学サンディエゴ校 の生物学の教授だった。
若齢期と教育
1917年9月24日、カリフォルニア州 モデスト でスウェーデンの移民の医師の息子として生まれた[ 3] 。カリフォルニア大学バークレー校 でルイス・ウォルター・アルヴァレズ から光学を学び、グレン・シーボーグ の化学研究所で研究し、学士号、修士号を取得した[ 3] 。1942年にカリフォルニア工科大学 でPh.D. を取得した[ 4] 。カリフォルニア工科大学ではカール・ニーマン (英語版 ) の下で研究し、チロキシン のフッ素化 に関する実験を行った。また彼は、第二次世界大戦 において良心的兵役拒否 をしたが、この政治的立場が、卒業後にバークレーに戻ったときに彼に困難をもたらした[ 3] 。
卒業後の業績
ベンソンは1942年7月に専任講師としてバークレーに戻った。1946年5月、メルヴィン・カルヴィン の研究グループに参加するように招かれた。カルヴィンはバークレーの旧放射線実験室で光合成 の研究グループを立ち上げたところだった。1951年から1952年まで、フルブライト奨学金 でノルウェー農業大学 に留学し、1954年にペンシルベニア州立大学 で教員の職を得た[ 3] 。1962年にカリフォルニア大学ロサンゼルス校 からカリフォルニア大学サンディエゴ校 に移った[ 5] 。
研究
1946年から1953年にかけて行われた研究で、メルヴィン・カルヴィン 、ジェームズ・バッシャム (英語版 ) とともに、ベンソンは植物の炭素固定 の経路(光合成的炭素還元回路、PCR回路)を解明した。炭素還元回路は一般に「カルヴィン回路 」と呼ばれており、ベンソンとバッシャムの業績が評価されていない[ 6] 。多くの科学者は、「カルヴィン・ベンソン回路」「ベンソン・カルヴィン回路」「カルヴィン・ベンソン・バッシャム(CCB)回路」と呼んでいる[ 4] 。2002年のPlant Biology Annual Reviewの論文で、ベンソンは自身の人生と業績について詳細な回顧録を提供した[ 3] 。
植物における光合成の研究によりカルヴィンは1961年のノーベル化学賞 を受賞したが、共同研究者のベンソンとバッシャムが受賞対象になっておらず、論争 となった。ノーベル賞の受賞から30年後、カルヴィンは"Following the trail of light"(光の軌跡に従って)という自叙伝を出版したが、そこではベンソンについて言及されていない。
賞と栄誉
ベンソンは、1972年に米国科学アカデミー に[ 7] 、1981年にアメリカ芸術科学アカデミー に[ 8] 、1984年にノルウェー科学アカデミー (英語版 ) に[ 1] 選出された。1962年、アメリカ合衆国エネルギー省 は彼に、放射性同位体 を用いた炭素循環の研究に対してアーネスト・ローレンス賞 を授与した[ 9] [ 10] 。彼はまた、炭素循環の生成物としてリブロース を発見したことで、1950年に砂糖研究財団賞[ 11] を、1972年にアメリカ植物生物学会のスティーブン・ヘレス賞[ 12] を受賞した。2007年、彼の90歳の誕生日を祝ってPhotosynthesis Research の特別号が発刊された[ 13] 。
門下生
生物学者の丸尾文治 は1956年8月から1958年6月にかけてペンシルベニア州立大学に留学しており[ 14] 、その際にベンソンから直接指導を受けている[ 15] 。
脚注
^ a b Govindjee (September 2010). “Celebrating Andrew Alm Benson's 93rd birthday” . Photosynthesis Research 105 (3): 201–8. doi :10.1007/s11120-010-9591-3 . ISSN 0166-8595 . http://www.life.illinois.edu/govindjee/Honoring_AndrewABenson.pdf .
^ http://www.legacy.com/obituaries/utsandiego/obituary.aspx?n=andrew-benson&pid=173956530
^ a b c d e Benson, A. A. (2002), “Paving the Path”, Annual Review of Plant Biology 53 (1): 1–25, doi :10.1146/annurev.arplant.53.091201.142547 , PMID 12221968 .
^ a b Adrianov, A. V.; Vaskovsky, V. E.; Pudovkin, A. I.; Terekhova, T. A.; Titlyanov, E. A.; Titlyanova, T. V. (2007), “On the 90th anniversary of Andrew Alm Benson great scientist and excellent man”, Russian Journal of Marine Biology 33 (5): 343–346, doi :10.1134/S1063074007050136 .
^ Shor, Elizabeth Noble (1978), Scripps Institution of Oceanography: Probing the Oceans 1936 to 1976 , Tofua Press, http://ark.cdlib.org/ark:/13030/kt109nc2cj/ .
^ Han, Kathy; Labos, Christopher (2004), “Historical Footprints: MJM Past and Present” , McGill Journal of Medicine 7 (2), オリジナル の2008-05-17時点におけるアーカイブ。, https://web.archive.org/web/20080517083955/http://www.medicine.mcgill.ca/mjm/issues/v07n02/editorial/editorial.htm : "It would be unfair of us to talk of the Calvin cycle and credit its discovery to Melvin Calvin without at least giving a passing nod to Andrew Benson who did a considerable portion of the work while on Calvin's team."
^ “95 Named to Academy of Sciences in Recognition of Achievements”, The New York Times , (April 29, 1973) .
^ “Book of Members, 1780–2010: Chapter B ”. American Academy of Arts and Sciences. 25 July 2011時点のオリジナル よりアーカイブ。June 15, 2011 閲覧。
^ “Five Scientists Get U.S. Awards For Their Work in Nuclear Field”, The New York Times , (April 24, 1962) .
^ Award citation Archived April 1, 2009, at the Wayback Machine . from U.S. Department of Energy web site.
^ “Sugar Research Unit Gives $25,000 Prizes”, The New York Times , (June 21, 1950) .
^ ASPB Award Winners Archived 2007-07-02 at the Wayback Machine ..
^ A Tribute to Andrew A. Benson , Photosynthesis Research Volume 92, Number 2, May 2007.
^ 「訃報」『分生研ニュース』54号、東京大学分子細胞生物学研究所 、2015年 7月 、13頁。
^ 山根國男「枯草菌と奮闘した人々――丸尾文治研究室の系譜」『蛋白質核酸酵素』42巻12号、共立出版 、1997年 9月 、1925頁。