ABCセンターは、1966年6月から2008年まで大阪府大阪市北区大淀南2丁目に存在していた、朝日放送(ABC、現・朝日放送グループホールディングス)の旧社屋及び隣接する関連施設を含めた街区の総称である。
中核施設である朝日放送本社社屋には、4つのテレビスタジオ・4つのラジオスタジオ、公開放送用ホール「ABCホール」などがあり、その南側には広場を挟んでホテルプラザ、西側には大阪タワーが設置されていた。この他、センター周辺には、朝日放送の別館ビルや関連会社が入居するビル、ザ・シンフォニーホールなどが点在していた。
1989年から1998年および2001年まで使われたABCテレビの放送開始・終了映像でも、CGにより作成されたABCセンターの全景映像を見ることができた。
1966年6月に関西大倉学園が茨木市に移転した跡地に、中之島に分散してあったテレビ(旧大阪テレビ放送の社屋を使用)とラジオ(新朝日ビルディング)のスタジオやホールを統合する形で本社社屋を竣工。その後、大阪タワーやホテルプラザなどの周辺施設を建設し、規模を拡張していった。竣工当時の社屋周辺は倉庫と町工場しかない不便な地域で、社屋前の道路すら舗装されていない状態だった。
1995年の阪神・淡路大震災では、事務フロアのある社屋の東側とスタジオが並ぶタワー寄りの西側を繋ぐ通路が地震の震動で裂けて半壊、コンクリートが飛散、1階の日産ギャラリーの外に面したガラスが破損(後述)するといった被害が生じた。また、コンクリートの塊の一部が社屋西側の無線制御室にいた技術局員の至近距離に落下するといったこともあった[1]。
その後、経年劣化による建物の老朽化が顕著となり、2008年5月18日に大阪市福島区福島1丁目(ほたるまち)の新社屋に本社機能を移転、また移転後も残っていたテレビ・ラジオの送出マスター(主調整室 アナログ・デジタル統合テレビマスター、AMラジオ放送マスターともNEC製を使用)も、同年6月23日をもって新社屋の送出マスターに切り替えられ、朝日放送の本社機能は全て新社屋へ移った。 新社屋移転後も同センターで一部の録音番組等(ラジオ)の収録をおこなったが、同年8月5日のABCホールの閉鎖をもって42年の歴史に幕を閉じた。
新社屋(ほたるまち)への完全移転後、ザ・シンフォニーホール以外の建物は全て解体され、解体後の跡地は商業施設もしくは住宅施設に再開発されることが決定しており、旧社屋およびABCホール→大阪タワー→ホテルプラザの順に解体された。 当該施設の跡地は全て駐車場等に転用されているが、2017年1月に積水ハウス、三菱地所レジデンス、東急不動産など5社が共同で跡地を取得し、高さ最大178mのタワーマンションを建てる計画があると報じられた。名称は「グランドメゾン新梅田タワー THE CLUB RESIDENCE(ザ・クラブレジデンス)」で[2]、計画では2022年完成予定としている[3][4]。また、大阪府済生会中津病院の附属施設となる「大阪北リハビリテーション病院」が2023年4月1日に開院した[5]。
なお、2008年4月22日放送のごきげん!ブランニュ(ABCテレビ)において「さよなら大淀社屋特集」とのタイトルで、ABCセンターが詳しく紹介された。
ABCセンター時代のベリカードは、旧社屋のペーパークラフトだった時期がある。
Aスタジオは竣工当初から1964年の東京オリンピック後の普及や1970年の大阪万博を見据えてカラー放送に対応した機材が導入されていた。この他、竣工当初はDスタジオもあった。2008年4月ごろから新社屋Aスタジオが稼動したことに伴い、旧社屋Aスタで制作していた番組『ごきげん!ブランニュ』、『朝だ!生です旅サラダ』、『パネルクイズ アタック25』、『上沼恵美子のおしゃべりクッキング』は新社屋での制作へと順次切り替えられた。また従来のBスタジオで放送していた番組『おはよう朝日です』、『ムーブ!』、『ABC NEWSゆう』は、Bスタジオ機器の新社屋移設工事に伴いAスタジオへ移動したのち、同年6月23日の新社屋カットオーバーと同時に新社屋での制作へと切り替えられた。同年4月29日の環境特別番組『ガラスの地球を救え』で、初めて新社屋Aスタジオから生放送を行っている。また、5月6日に新社屋完成記念特別番組第1弾『朝日放送新社屋完成記念 番組対抗No.1スペシャル 〜オールスター大集合!おめでたバトル〜』が新社屋Aスタジオにて制作されており、5月17日の第2弾『朝日放送新社屋完成記念 くるくる朝日です』は新社屋スカイテラスから生放送されている。
また、かつては主調整室のアナウンスブース(2室)で生放送を行っており、当時は「キースタジオ」と呼ばれていたが、生放送の雑然とした雰囲気を伝えるために、ブースの外の主調整室側で放送するようになった。この部屋は窓に面していて、出演者が喋るテーブルを窓側に設け、外の天気などがわかるようになっていた。
ここではABCセンター内の施設だけではなく、センター外の施設についても併せて説明する。
朝日放送は、1991年(平成3年)に社屋用地の再開発試案を発表していた。具体的には、センター用地の北側にあるABC公園部分に22階建て規模の本社機能のある社屋を建設し、公園などの施設を整備、大阪タワーを取り壊し、跡地に15階建て前後のビルを建設し、多目的ホール・アスレチックジム・美術館などが入居した文化ゾーンにするといった構想であった。
計画では、1995年(平成7年)頃に着工し、第一期は1997年(平成9年)、第二期は1998年(平成10年)、そして第三期は2000年(平成12年)に完成させる予定であったが、資金問題(ホテルプラザの閉鎖なども関係した)やデジタル放送の準備などもあり、新社屋の計画は白紙となった。
2004年(平成16年)に改めて、大阪市福島区福島1丁目の大阪大学医学部附属病院(阪大病院)跡地(大淀移転時にも候補地の一つとして挙がっていた)に移転する計画が発表され、4年後の2008年(平成20年)6月23日に完全移転した。
ABCセンターが存在していた当時の情報。