決勝当日のヨハネスブルク
2010 FIFAワールドカップ ・決勝 は、2010年 (平成 22年)7月11日 (現地時間 20:30(UTC+2 ))にヨハネスブルク ・サッカー・シティ・スタジアム で行われた、第19回目のFIFAワールドカップ の決勝である[3] 。
背景
ファイナリスト
決勝に進出したオランダ とスペイン は、永年にわたって世界の強豪国と言われながらもワールドカップの優勝経験がなく、どちらが勝っても初優勝となる。オランダは1974年西ドイツ大会 と1978年アルゼンチン大会 以来3度目の決勝進出だが、前2回はいずれも開催国代表の西ドイツ とアルゼンチン に苦杯をなめさせられており、三度目の正直を目指す。一方のスペインは1950年ブラジル大会 の4位が最高だが、このときは上位4チームによる決勝リーグ戦方式であり、現在のノックアウト式トーナメント方式では過去4回のベスト8が最高で、本大会が初の準決勝・決勝進出であった。
両チームはFIFAワールドカップのみならず、UEFA欧州選手権 (EURO)の決勝トーナメントでも対戦したことはなく、1920年アントワープオリンピック 2位決定戦[4] 以降の9度の対戦はいずれもEUROの予選リーグ(1984年大会予選 で対戦)や国際親善試合 のみである。対戦成績は4勝4敗1分けの全くの互角である。
ワールドカップ初
本大会の決勝では、いくつかの「ワールドカップ初」となる出来事が予想されていた(対戦前に確定していた事柄もある)。
まず、前述のとおり、オランダとスペインのどちらが勝ってもワールドカップ初優勝となり、8ヶ国目のFIFAワールドカップ優勝国が誕生することになる(ワールドカップ初優勝をかけた国同士の決勝は1978年のアルゼンチン vs オランダ以来)。また、この対決により「欧州勢は欧州開催以外での大会では優勝できない」(過去9度の欧州勢の優勝はいずれもヨーロッパで開催された大会)というジンクスが破られることになる。
また、オランダが勝つと「ワールドカップ開催経験のない国の優勝」となり、これは1954年スイス大会 の西ドイツ以来2チーム目となる(ドイツでは後にワールドカップが2度開催されている。また、オランダは2018年大会 にベルギーと共催で立候補していた)。
一方、スペインが勝つと初めて「本大会の初戦で敗れたチームによる優勝」を成し遂げることになる。
決勝までの道のり
ヨーロッパ予選 では、オランダがグループ9で8戦全勝、スペインがグループ5で10戦全勝と、両チーム共に圧倒的な力を示して本戦進出を決めた。
本大会ではオランダはグループE に入り、デンマーク 、日本 、カメルーン と対戦、3戦全勝で決勝トーナメント 進出を決めた。決勝トーナメント1回戦ではスロバキア に快勝、準々決勝では優勝候補の一角と目されたブラジル を逆転で下し、準決勝では優勝2回の南米の古豪ウルグアイ を突き放して決勝へ進出した。オランダは国際Aマッチ 25戦無敗、ヨーロッパ予選から準決勝まで全勝と勢いを持続している。
一方のスペインは、EURO 2008 での優勝や、予選の全勝、無敗・連勝の世界記録樹立などにより、優勝候補の最右翼に位置づけられていたが、初戦のスイス 戦を圧倒的に攻め込みながら0対1で落とす。続くホンジュラス 戦には勝利するも内容は芳しいものではなく、グループリーグ最終戦のチリ 戦の結果如何ではなおグループリーグ敗退の危機にあった。結局、チリには2対1で勝利し、得失点差で辛うじてグループ1位での決勝トーナメント進出を決めた。決勝トーナメント1回戦はポルトガル との「イベリア半島 決戦」に1対0で勝利、準々決勝ではパラグアイ の組織的な守備に手こずりながらも終盤の決勝ゴールでこれを降し、60年ぶりのベスト4進出を決める。EURO2008 の決勝と同じ顔合わせとなった準決勝では、3回の優勝を誇り2試合連続4得点と波に乗っていたドイツ をポゼッションサッカーで封じ込め、初の決勝進出を果たしている。
試合結果
概要
両チームのスターティングメンバー
共に初優勝をかけた一戦は、攻撃的スタイルのチーム同士による撃ち合いも予想されたが、実際には持ち前の攻撃力で中盤を支配するスペインに対して、それまでの攻撃的スタイルを捨てて必死に守るオランダがFWアリエン・ロッベン を中心に逆襲のカウンターを仕掛けるという展開となった。スペインは得意の高速パスワークから幾度となくオランダのディフェンス陣を崩しにかかるが、オランダのファウルをもいとわない気迫の守備に阻まれ得点チャンスをものに出来ず、逆にオランダもロッベンがゴールキーパーと1対1の局面を2度作り出すも、いずれもスペインのGKイケル・カシージャス のスーパーセーブに阻まれるという緊迫した展開が続いた。
共に幾度かの決定的なチャンスをものに出来ないまま試合はワールドカップ決勝史上6度目の延長戦に突入。延長前半4分、スペインのMFアンドレス・イニエスタ がMFセスク・ファブレガス に絶妙なスルーパスを出し、ゴールキーパーと1対1の場面を作りだすが、オランダのGKマールテン・ステケレンブルフ に阻まれた。延長後半4分にオランダのDFヨン・ハイティンハ が2枚目のイエローカード で退場処分になり1人少なくなる一方、スペインも延長後半から出場したFWフェルナンド・トーレス が突如足の不調を訴えてフィールドを離れる(スペインはこの時点で3人の交代枠を使い切っていた)など、お互いに満身創痍の状態となっていた。
PK戦 による決着が観衆の脳裏にちらつき始めた延長後半9分、オランダのFWヴェスレイ・スナイデル の放ったゴール正面からのフリーキックはスペイン守備陣の壁に当たってゴール左へそれるも、判定はコーナーキックではなくゴールキック。スペインはそこからパスをつなぎ、延長後半11分に途中出場のMFセスク・ファブレガス の出した絶妙なパスをMFアンドレス・イニエスタ が右45度の角度からボレーシュート。無回転のボールがオランダGKマールテン・ステケレンブルフ の手をわずかにかすめ、ゴールに吸い込まれた。これが決勝点となり、スペインが初優勝を成し遂げた。
この試合は、(主審がイエローカードをよく出すと言われているハワード・ウェブ だったことを差し引いても)両チーム合わせてワールドカップ決勝史上最多の14枚のイエローカード が出される(うち2枚はハイティンハに出されたもの)というやや荒れ気味の展開となった。特に、イエローカード承知でラフプレーを仕掛けていったオランダの守備スタイルには、かつてのオランダの名選手であり「トータルフットボール 」の中心的存在だったヨハン・クライフ は「(オランダのスタイルは)醜く低俗。スペインを動揺させるために、汚いプレーを展開した」と批判した[5] 。
データ
時間は南アフリカ標準時 (UTC+2)。
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2010 FIFAワールドカップ優勝国
スペイン 初優勝
テレビ中継
FIFAによれば、全世界で9億1000万人が視聴したといわれている[7] 。
スペイン
スペイン では地上波のテレシンコ など3局が中継を行い、平均視聴率は合計82.9%、最大瞬間視聴率は91.0%だった[8] 。
オランダ
南アフリカ共和国
その他の国
日本 ではジャパンコンソーシアム の枠組みに基づき、日本放送協会 (NHK)がテレビ中継を担当した。実況は野地俊二 が、解説は山本昌邦 と早野宏史 が務めた[9] 。同国では7月11日が参議院選挙 の投開票日だったため、開票速報 の放送枠を確保する必要から、地上波中継は総合テレビ ではなく教育テレビ で行われた。日本時間 では翌日未明から早朝にかけての放送だったにもかかわらず、平均視聴率12.0%(3時20分-5時00分) / 15.4%(5時00分-6時05分)を記録している[10] 。
アメリカ合衆国 ではABC が英語の中継を行い、平均視聴率8.1%・平均視聴者数1554万5000人を記録した[11] 。この放送は2011年5月2日に発表された第32回スポーツ・エミー賞 において、最優秀中継特別番組賞 を受賞した[12] 。
エピソード
決勝に先立って行われた閉会セレモニーには、開会セレモニーに駆けつけられなかった南アフリカの元大統領ネルソン・マンデラ が登場。カートに乗ってピッチ上に現れると、スタンド内の観衆から歓待を受けた。
試合開始前には「乱入男」として知られるスペイン人のジミー・ジャンプ がピッチに乱入するが、警備員に取り押さえられている。
決勝点を挙げたイニエスタはゴール直後、喜びのあまりユニフォームを脱いだ(イニエスタはこれが原因でイエローカードを受けている)が、その下のアンダーウエアには手書きで「DANI JARQUE SIEMPRE CON NOSOTROS(ダニ・ハルケはいつも我々と共に)」と書かれていた。元スペイン代表で、前年8月に26歳で急死した親友ダニエル・ハルケ に捧げたメッセージであった。このときイニエスタが着用していたアンダーウエアは、試合後にハルケが所属していたRCDエスパニョール に寄贈されている[13] 。
決勝が延長で決したのは6度目だが、2大会連続延長決着となったのは今回が初めて[14] 。ちなみにオランダは2度目の決勝進出時(1978年アルゼンチン大会 )も延長の末敗れている。
本大会でのスペインの総得点8は優勝チームとしては過去最少(それまでの最少は1938年フランス大会 のイタリア 、1966年イングランド大会 のイングランド 、1994年アメリカ大会 のブラジル の11)、総失点2は1998年フランス大会 のフランス 、2006年ドイツ大会 のイタリア と並んで最小タイ記録である。
この試合のパブリックビューイングが行われていたウガンダ ・カンパラ のエチオピア料理レストランとラグビー競技場で、観客を狙った爆弾テロ が発生、64名の犠牲者を出す惨事となった。ソマリア (オランダでベアトリクス女王の衛星国)の急進的イスラム組織、アル・シャバブ の犯行と見られている[15] 。
本大会でのドイツ 戦の予想を全て的中させてきた、ドイツの水族館で飼育されているタコ のパウル が特別にドイツ戦ではない本決勝戦の予想を行い、スペインの勝利を予想した。一方、シンガポール で占い師に飼われているインコで、準々決勝の勝者を全て的中させたマニ はオランダの勝利を予想した。予想が正反対となったことから、一部のメディアで「タコ対インコ」と紹介された。結果はスペインの勝利であり、パウルの予想の方が的中した。
脚注
外部リンク