長母音(ちょうぼいん、英: long vowel)は持続時間が長い母音である[1]。
母音はその継続長によって分類できる。持続時間が長いものを長母音という。対照的に持続時間が短いものは短母音(たんぼいん)と呼ばれる。
長短の違いで意味の弁別を行う言語があり、日本語はその代表的な例である。中にはエストニア語のように短・長・超長の三段階で意味を区別する言語もあるが、非常に珍しい。
現代英語では、アクセントがある緊張母音は音声学でいう長母音で発音されることも多いが[2][3]、アクセントに伴う現象であって、長短の意識は持たない。
国際音声記号では母音の後ろに記号 [ː] をつけて長母音を表す。短母音は何も記号をつけないことで表される。このほか、[ˑ](半長音)と [ ̆](超短音、母音の上につける)の記号が用意されている。
特にゲルマン語派に属する言語(ドイツ語、オランダ語など)は母音の長短を弁別する言語が多い[4]。
ただし、英語やアイスランド語では、歴史的には長母音と短母音が対応していたものの、長母音の発音が変化したこと(大母音推移など)により、音声学上の長短の対応関係は崩壊している。
古代ギリシア語、ラテン語、ケルト語でも母音の長短を弁別するが、ラテン語の子孫であるフランス語やスペイン語などロマンス諸語は母音の長短の区別を失っている。同様に現代ギリシャ語も長短の区別はない。アクセントなどの関係で長母音が現れることはあるが、これはあくまでも異音であり、意味の弁別に関与しない。
スラヴ語派は、チェコ語やスロバキア語など一部を除き、母音の長短を区別しない言語が多い。
バルト語派(ラトビア語やリトアニア語など)では区別される。
ヨーロッパでアルファベットの母音字Oの名を長母音で発音する言語の例。
フィンランド語、ハンガリー語など、母音の長短を区別する言語が多い。エストニア語に至っては母音の長さを3段階で区別する。
アラビア語は、(方言によって多少は異なるが、標準語の場合)3種類の短母音と、それぞれに対応した長母音がある。
特にポリネシア諸語に属する言語は、ほとんどの言語が日本語同様の5母音体系を持ち、尚且つ母音の長短を区別する。
エスペラント語は母音の長短を区別しない。アクセント(必ず語末から2番目の音節に置かれる)のある母音は長めに発音されやすいが、あくまでも異音であり、意味の弁別に関与しない。
言語によって長母音の表示方法は様々である。
現代英語における英語話者の認識では、「long vowel」(長母音)は音声学的な長母音を意味しない。その代わりに、上述の歴史的変遷を経た英語の母音の二種類の区別の一方を意味する場合が多い[5]。
a・e・i・o・u についての例では、baby の /eɪ/、meter の /iː/、tiny の /aɪ/、broken の /oʊ/、humor の /juː/ などは、この意味での「長母音」である。
したがって音声学的には記号 [ː] で表される「長母音」であってもそう呼ばれない場合があり(短母音についても同様)、母音の長短について述べるときは混乱を招きやすい。
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