鄭欽文(てい・きんぶん、ジェン・チンウェン、簡体字: 郑钦文; 拼音: Zhèng Qīnwén, 英語: Zheng Qinwen、2002年10月8日 - )は、中国・湖北省十堰市出身の女子プロテニス選手。これまでにWTAツアーでシングルス5勝を挙げている。身長178cm、右利き、バックハンド・ストロークは両手打ち。自己最高ランキングはシングルス5位、ダブルス724位。
2024年パリオリンピック女子シングルス金メダリスト。2024年全豪オープン女子シングルス準優勝。2024年WTAファイナルズ準優勝。
2002年に湖北省十堰市に生まれ、7歳の時にテニスを始めた[1]。8歳の時に練習のために武漢市に移ると[1][2]、11歳の時に北京市に移り、カルロス・ロドリゲスのもとで練習した。鄭欽文のあこがれの選手は李娜であり、カルロス・ロドリゲスは李娜の元コーチである。2019年に母親とともにスペインのバルセロナに移った[1][2]。2021年にはペレ・リバをコーチに据えた[3]。
2021年7月、パレルモ国際でWTAツアーデビューし、1回戦では第2シードのリュドミラ・サムソノワ(英語版)を破った[4]。
2022年1月のメルボルン・サマーセットでは、1回戦で本玉真唯、2回戦でベラ・ズボナレワ、準々決勝でアナ・コニュを破り[5]、準決勝で第2シードのシモナ・ハレプに敗れたが、WTAツアーで初めてベスト4となった[6]。2022年全豪オープンでは初めてグランドスラム本選に出場し[7][8]、1回戦ではアリャクサンドラ・サスノビッチを破ったが[9]、2回戦で第5シードのマリア・サッカリに敗れた[10]。
2022年全仏オープンでは、1回戦でマリナ・ザネフスカ(英語版)を破り[11]、2回戦で第19シードのシモナ・ハレプを破ると[12]、3回戦はアリーゼ・コルネの棄権で4回戦に進出した。4回戦では第1シードのイガ・シフィオンテクに敗れたが、月経痛が影響したと語っている[13]。1週間後のバレンシア国際オープンではWTA 125で初優勝を飾り、世界ランキング46位となってトップ50に入った。
2022年ウィンブルドン選手権では、1回戦でスローン・スティーブンスを[14]、2回戦でグリート・ミネン(英語版)を破ったが、3回戦では最終的に優勝したエレナ・リバキナに敗れた。8月の行われたWTA1000トーナメントのナショナル・バンク・オープンでは、2回戦で第5シードのオンス・ジャバーを、3回戦でビアンカ・アンドレースクを破り、準々決勝で第14シードのカロリナ・プリスコバに敗れたものの、WTAランキングでは初のトップ10入りを果たした。
2022年全米オープンでは、1回戦でエレナ・オスタペンコを、2回戦でアナスタシア・ポタポワ(英語版)を破り、3回戦でジュール・ニーマイヤー(英語版)に敗れた。9月に日本で開催された東レ パン・パシフィック・オープンでは、2回戦で第1シードのパウラ・バドサを破り、決勝でリュドミラ・サムソノワ(英語版)に敗れたものの、初めてWTAツアー決勝に進出した中国の10代選手となった。また、9月26日にはWTAランキング28位となってトップ30入りを果たした[15]。2022年シーズン終了後の12月にはWTA年間最優秀新人選手賞を受賞した。
2023年全豪オープンには第29シードとして出場し、2回戦でベルナルダ・ペラ(英語版)に敗れた。5月のイタリア国際では、1回戦でアリーゼ・コルネ、2回戦でアンナ・ボンダール(英語版)、4回戦で同胞のワン・シユ(英語版)を破り、クレーコート大会で初めてベスト8となった。WTAランキングでは19位となってトップ20入りし、トップ20入りした5人目の中国人選手となった[16][17]。2023年全仏オープンには第19シードとして出場し、1回戦でタマラ・ジダンシェクを破ったが、2回戦でユリア・プチンツェワに敗れた。
7月のパレルモ国際には第2シードとして出場し、地元のサラ・エラーニをダブルベーグル(6-0、6-0)で破ると、準々決勝で第7シードのエマ・ナヴァッロ、準決勝で第3シードのマヤル・シェリフ(英語版)、決勝で第5シードのジャスミン・パオリーニを破り、WTAツアーで初優勝した[18]。
2023年全米オープンには第23シードとして出場し、1回戦でナディア・ポドロスカ、2回戦でカイア・カネピ、3回戦でルシア・ブロンゼッティを破ると、4回戦では前回大会準優勝者で第5シードのオンス・ジャバーを破った。準々決勝では最終的に準優勝したアリーナ・サバレンカに敗れたが、グランドスラムで初めてベスト8となった[19]。9月のアジア競技大会女子シングルスでは金メダルを獲得した[20]。
10月には母国開催の鄭州オープン(英語版)に出場し、決勝では第7シードのバルボラ・クレイチコバを破り、2度目のWTAツアー優勝を果たした[21][22]。10月末にはWTAエリート・トロフィーに出場し、準決勝では同胞の朱琳(英語版)を破ったが[23]、決勝でベアトリス・ハダッド・マイアに敗れて準優勝だった。2023年シーズン終了後の12月には WTA最も上達した選手賞を受賞した。
2024年全豪オープンに第12シードとして出場すると、1回戦でアシュリン・クルーガー(英語版)、2回戦でケイティ・ボウルター(英語版)、3回戦で同胞の王雅繁(英語版)、4回戦でオセアン・ドディン(英語版)、準々決勝でアンナ・カリンスカヤ、準決勝でダヤナ・ヤストレムスカを破り、鄭潔、李娜、彭帥に次いでグランドスラムの準決勝に進出した4人目の中国人選手となった[24][25]。なお、準決勝までに勝利した6人はいずれもノーシードの選手である。決勝では第2シードのアリーナ・サバレンカに敗れたが、大会後にはWTAランキングでトップ10入りし、李娜に次いでトップ10入りした2人目の中国人選手となった[26]。
全仏オープンは3回戦、ウィンブルドン選手権は1回戦敗退。それでも、ウィンブルドン直後のパレルモ国際では、決勝でカロリナ・ムホバを降し優勝した。そして挑んだ2024年パリオリンピックでは、エマ・ナバーロとの3回戦をマッチポイントをしのいで逆転勝ちすると、準決勝では全仏覇者にして世界ランキング1位のイガ・シフィオンテクを破り、決勝進出。決勝はドナ・ベキッチと対戦し、6-2, 6-3で勝利を収め、シングルスでは中国勢初となる五輪金メダルを獲得した[27][28]。
W=優勝, F=準優勝, SF=ベスト4, QF=ベスト8, #R=#回戦敗退, RR=ラウンドロビン敗退, Q#=予選#回戦敗退, LQ=予選敗退, A=大会不参加, Z#=デビスカップ/BJKカップ地域ゾーン, PO=デビスカップ/BJKカッププレーオフ, G=オリンピック金メダル, S=オリンピック銀メダル, B=オリンピック銅メダル, NMS=マスターズシリーズから降格, P=開催延期, NH=開催なし.