西垣 通(にしがき とおる、1948年12月12日 - )は、日本の情報学者、小説家。東京大学名誉教授[1]、工学博士(東京大学)。
コンピューター・システムの研究開発を経て、情報化社会における生命、社会を考察する。『アメリカの階梯』(2004年)などの小説も執筆。著書に『集合知とは何か』(2013年)、『ビッグデータと人工知能』(2016年)など。
俳人で明治大学教授の西垣脩の長男として東京都に生まれる。東京少年少女合唱隊に所属し、NHKのみんなのうたで歌ったことがある。世田谷区立松沢小学校から世田谷区立松沢中学校を経て都立西高校に進み、1968年に東京大学理科一類入学。1972年に東京大学工学部計数工学科を卒業(卒業論文のテーマはファジィ代数の応用)。
1972年、エンジニアとして日立製作所に入社。このときOSやネットワーク、データベースなどの性能設計や信頼性設計を研究し、客員研究員としてスタンフォード大学に留学。1982年、東京大学より博士(工学)の学位を取得。論文名は「多重プログラミング方式による計算機システムの資源管理最適化に関する研究」[2][3]。
1986年、過労のため工場で倒れたことがきっかけとなり[4]、日立製作所を退職。1986年明治大学法学部助教授、1991年明治大学法学部教授を経て、1996年に東京大学社会科学研究所日本社会研究情報センター教授。2000年東京大学情報学環教授。2013年定年退任、東京経済大学コミュニケーション学部教授。2019年定年退任。
1991年、『デジタル・ナルシス』でサントリー学芸賞(芸術・文学部門)受賞。歴史小説『1492年のマリア』(2002年)ではコロンブスの新大陸発見とスペインからのユダヤ教徒追放を扱い、この作品はNHK-FMで連続ラジオドラマとして2016年に全国放送された。技術者出身でありながら文系的な問題意識も旺盛で、文理両方の分野にわたる脱領域的な執筆研究活動を行っている。