腕挫膝固(うでひしぎひざがため)は、柔道の関節技。膝を曲げた脚を使って極める技。講道館、国際柔道連盟 (IJF) における正式名。IJFにおける別正式名膝固(ひざがため)、U.H. hiza gatame。IJF略号HIG。
チェコスロバキア柔道レジェンドウラジミール・ロレンツによる脛を相手の顔の前におく腕挫膝固
概要
極め方には様々なバリエーションがある。
基本形はガードポジションから右(左)手で相手の右(左)手首を掴んで引き、相手を前に崩し、左(右)膝を相手の右(左)肘に当てて左(右)足を相手の右(左)脇腹または帯に当てて支点とし極める[1][2]。記録映画『柔道の真髄 三船十段』では膝固腕挫(ひざがためうでくじき)、立ち姿勢からのものは立合腕挫(たちあいうでくじき)の名称で紹介されている[3]。柔道川石メソッドでの別名腕挫変化技(うでひぎへんかわざ)[4]。柔道形の「固の形」でも演じられている。
- 全日本柔道連盟ch『平成26年度全日本形競技大会優勝組演技「固の形」』(9m53s〜) - YouTube
- 試合での実例
- ×ガンバータル・オドバヤル(モンゴル) (1:07 腕挫膝固(AJJF)[5]、十字固 (IJF) [6]) 橋本壮市(日本)○ IJFサイト映像[6]
- 腕挫十字固に近い形で極めている。
- ○サリー・コンウェイ(イギリス) (3:59 膝固[7]) ガブリエラ・ウィレムス(ベルギー)× IJFサイト映像[7]
- 腕挫腕固に近い形で極めている。
柔道川石メソッドでは基本形からさらに左(右)足を相手の顔の前に移動して極める技を腕挫膝固 (うでひしぎひざがため)としている[8]。
横腕挫
横腕挫(よこうでひしぎ)[9]はうつ伏せの受の右(左)腕を両手でつかみ両腋を絞めて伸ばし、上から左(右)脚を掛け左(右)足を受の顎に掛け支点とし左(右)膝で受の右(左)肘を押して極める腕挫膝固[10]。記録映画『柔道の真髄 三船十段』では腕固腕挫(うでがためうでくじき)の名称で紹介されている[11]。
腕挫別形
腕挫別形(うでひしぎべつがた)[12]はガードポジションから片手で相手のどちらかの手首を持ちその腕に片脚を絡めて極める腕挫膝固。もう一方の手で相手の後帯を掴む場合もある。足首を相手の膝裏に掛ける場合もある[13]。記録映画『柔道の真髄 三船十段』では腕固腕挫(うでがためうでくじき)の名称で紹介されている[14]。
体固腕挫
腕挫膝固の一つ体固腕挫
体固腕挫の実演動画
体固腕挫(たいがためうでひしぎ)[15]は柔道での正式な分類では腕挫膝固に包含される[16][17]。
ガードポジションで、下の選手が上の選手の腕を持ち、脚を外側から肩付近に絡め、そのまま絡めた腕の腋の下から自分の体を相手のガードポジションから回転するように脱出しつつ、相手の腕を背中側から取る技である。
ブラジリアン柔術ではオモプラッタと呼ばれている。オモプラッタとはブラジルの公用語ポルトガル語で肩甲骨のことである。国際ブラジリアン柔術連盟、国際柔術連盟ともにティーン (U16) 以下では禁止技である。
別名三角緘(さんかくがらみ)[18][19]。「三角緘」は三角絞や腕挫三角固を指す場合も多い[20]。
リバースオモプラッタ
リバースオモプラッタはハイジンハ・ロールののち、後袈裟固の体勢から曲げた脚に相手の片腕を絡めて極める腕挫膝固。
亀の体勢の相手の背後から両脚で相手の左腕を挟む腕挫脚固のような体勢から左脚は挟むのを外し右脚は相手の左腕に絡めたまま左足で床を蹴って相手もろとも前転するハイジンハ・ロールを行う。後袈裟固の体勢になったら右脚に絡まった相手の左腕の肘関節を極める。ムンフバット・ウランツェツェグ(モンゴル)の得意技である。
- 試合での実例
- ○ムンフバット・ウランツェツェグ(モンゴル) (2:09 膝固[21]) ガン・ファンミン(中国)× IJFサイト映像[21]
Vクロスアームロック
腕挫膝固の一種Vクロスアームロックの実演
Vクロスアームロック(ブイクロスアームロック)は腕挫膝固に包含される[22]。
掛けかたは相手を本袈裟固や崩袈裟固で抑え込み、曲げた右(左)脚で頭部側に曲げた相手の右(左)腕を絡めて固定し右(左)腕で相手の頭部を持ち上げ、腹を突き出して極める。自らの右(左)脚と相手の右(左)腕がそれぞれVの字状で交差しているのでこの名が付けられた。別名スカーフ・ホールド・アームロック (Scalf hold Armlock) 。
袈裟緘
袈裟緘(けさがらみ)[23]はVクロスアームロックに似た肘関節技で極める腕をVの字状にせずに伸ばして極める袈裟固からの腕挫膝固[24][25][26]。別名スカーフホールドアームバー[27]、タイ・アンド・フット・アーム・ロック (Thigh-and-foot Arm-lock)[28]、スカーフ・ホールド・アームロック (Scalf hold Armlock) 。
- 試合での実例
- ×ウィリー・ウィリアムス (3ラウンド2:3 腕ひしぎ足固め) 前田日明○
- 発表は「腕ひしぎ足固め」(うでひしぎあしがため)だが、講道館の分類では腕挫膝固である[25]。講道館の分類でも後袈裟固から同様の形で極めた場合は腕挫脚固(うでひしぎあしがため)となる[29]。
双膝十字固
双膝十字固(もろひざじゅうじがため)[30]はガードポジションから受の両手首を両腋で挟むか両手でつかむか両手を組んで自分の胸に抑えつけるかし、受の両腕を伸ばし両膝で外側から受の両上腕を押して両肘を極める腕挫膝固。立ち姿勢から飛びついて極める場合もある。柔道川石メソッドでは膝固(ひざがため)と呼んでいる[31]。別名両肘固め(りょうひじがため)[32]、ダブルアームバー。
- 試合での実例
- ×マイク・ボーク (1R 0:28 ダブルアームバー) アレクサンダー大塚○
バイセップスライサー
バイセップスライサーの多くは腕挫膝固に包含される。相手のくの字に曲げた片腕の中に自らの前腕か脛を入れてから強引に曲げることにより相手の上腕二頭筋(バイセップス biceps)を痛めつける関節技である。前腕を入れ、脚の力で曲げないものは腕挫腕固に分類される。
バイセップスライサーの代表的な形のものとしては左からの横四方固の下から相手の右袖を持ちながら右脛を相手の左上腕部内側にあてる。相手の左腕を曲げ右の脛と腿で相手の左前腕部を挟み抜けないようにする。両手で相手の左上腕部を引き極める。
- 実演動画
- JJIF Rules: Jiu-Jitsu (Ne-Waza) MAJOR FOULS(2m28s〜) - YouTube[33]
ブラジリアン柔術の国際ブラジリアン柔術連盟ではジュブナイル (U18) 以下や紫帯青帯白帯では反則である。国際柔術連盟寝技柔術ではU16以下では反則である[33]。別名バイセップススライサー。
キーロック
プロレスでよく用いられるキーロックはバイセップスライサー、腕挫膝固の一種である。
グラウンド状態で相手の片方の腕を「く」の字にして二の腕と手首のあたりを片脚ではさみ、曲がった腕の間に自分の前腕を通し4の字の形になるよう両脚を組んで固め、自分のいる方向に体重をかけて引っ張ることで極める技。
腕挫膝固返からの腕挫膝固
腕挫膝固返(うでひしぎひざがためがえし)(別名ラッソースイープ、巻きスパイダースイープ)というスイープがある。ガードポジションから左手で相手の右袖口を取り、左脚を外から相手の右腕に絡める。右脛を相手の腹に当て、右手で相手の左足首をとり、相手の左脚を持ち上げながら、左脚で相手を外側に揺さぶって相手を仰向けに返す。そのまま、相手の右腕をくの字に曲げて中に左脛を通し、臀部で相手の右腕に体重を掛けて横四方固の体勢でバイセップスライサー、腕挫膝固[34]を極める[35][36]。
柔道 極の形 居取 摺上での腕挫膝固
柔道 極の形(きめのかた) 居取(いどり) 摺上(すりあげ) で演じられる腕挫膝固はうつ伏せの相手の片方の肩または上腕と手首を掴み床に着けて相手のその腕を前に押し出し伸ばし、片膝頭を相手のその腕の肘に乗せて[37]体重を掛けて極める[38]。古流柔術の演武でもよく演じられる。格闘技の試合では滅多に使われない技である。
- 全日本柔道連盟ch『平成26年度全日本形競技大会優勝組演技「極の形」』(1m27s〜) - YouTube
出典
外部リンク
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投技(68本) |
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固技(32本) |
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柔道黎明期に存在した技 | |
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