『絆』(きずな)は、小杉健治による日本の小説。
1987年、第41回日本推理作家協会賞長篇部門を受賞、1988年、第98回直木賞候補となる。
これまでに3度テレビドラマ化されている。詳細は#テレビドラマを参照。
あらすじ
夫殺しの罪を問われている弓丘奈緒子。最初は否認していた奈緒子だが、偽装工作が露顕してからは自白し、起訴後も罪を認める姿勢を貫いていたため、情状酌量が裁判の争点になると注目されていた。検察官が読み上げた起訴状にも、事実に間違いない、と述べる奈緒子だが、弁護人の原島は無罪を主張する。凶器を購入したのは奈緒子自身、夫には愛人がおり、離婚の話も出ていた。本当に奈緒子は無実なのか、無実ならばなぜ罪を受け入れようとするのか。
登場人物
- 弓丘 奈緒子
- 被告人。43歳。会社社長で夫の勇一を殺したとして起訴される。旧姓・市橋。自宅で茶道教室と生け花教室を開いていた。
- 原島 保
- 奈緒子の2番目の弁護人。前任の水木に指名され、引き受けた。3年前『小岩母娘殺人事件』で弁護を担当し、一審で無期懲役だった被告人を、二審で無罪にしたが、その人物が真犯人だったことが後に判明し、それ以来弁護士業から身を退いて隠遁生活を送っていた。「原島弁護士の愛と悲しみ」参照。
- 水木 邦夫
- 奈緒子の最初の弁護人。コンピュータ技術者から弁護士に転身した。「原島の方がこの事件の弁護に向いている」と、原島を後任に指名し、突如辞任した。3年前の事件の一審の弁護士。
- 司法記者
- 今回の事件を取材している。小学生の頃、上級生の奈緒子に一目惚れし、ずっと憧れの存在だった。奈緒子より5歳年下。奈緒子の弟・寛吉と仲が良かった。
- 妻の妊娠が発覚するが、医師から知恵遅れになる可能性があると指摘され、産むべきか悩んでいる。
- 弓丘 勇一
- 被害者。奈緒子の夫。弓丘産業の社長だった。並木初江の夫とはゴルフ仲間。
- 市橋 晴彦
- 奈緒子の4歳年下の弟。T大卒の大蔵省役人。
- 市橋 寛吉
- 奈緒子の2歳年下の弟、晴彦の兄。知恵遅れだった。ある日姿を消す。
- 金沢
- 今回の事件の公判検事。東京地検の鬼検事と言われる。44歳。
- 伊勢
- 裁判長。T大法学部出身。50歳過ぎ。感情に左右されずに事実を追求しようとする。
- 吹田・福山
- 右陪席判事、左陪席判事。
- 中尾 日出子/玉恵
- 34歳。日本橋浜町で芸者をしていた勇一の愛人。勇一の出資で銀座にクラブを出す予定だった。
- 弓丘 美砂子
- 奈緒子と勇一の娘。16歳。
- 並木 初江
- 奈緒子の生け花教室の生徒。36歳。
- 三津井 沢子
- 元弓丘産業OL。社長秘書をしていた。事件の翌日に自殺している。
テレビドラマ
日本テレビ版(1996年)
1996年10月8日、日本テレビ系列「火曜サスペンス劇場」の15周年記念作品としてテレビドラマ化。脚本:掛札昌裕、演出:長谷和夫。
キャスト
ほか
テレビ東京版(2002年)
2002年3月20日、テレビ東京系列「女と愛とミステリー」にて『渡哲也サスペンス 絆』というタイトルでテレビドラマ化。
キャスト
スタッフ
テレビ朝日版(2006年)
2006年4月29日、テレビ朝日系列「土曜ワイド劇場」のシリーズ『事件』の第12作として、「妻はなぜ嘘の自白をしたか?」が放映された。
キャスト
関連項目
- 墨田区 - 作中の舞台、作者の出生の地でもある。
- 知的障害 - 作中では当時一般的だった「精神薄弱」という呼称が使われている。
- 検察者 - 弁護士・水木邦夫が登場する。
外部リンク