石の下(いしのした)は、囲碁用語の一つで、意図的に相手に石を取らせて空いた交点に着手する手筋のこと。実戦に現れることは稀で、詰碁の死活の問題で現れることが多い。
集四型の石の下
上図は黒番で生きる手段を問う問題。
黒1で白2子を取るが、この黒1は後で取らせる捨て石である。
白2が黒aなら白bで欠け眼にしようとする白の抵抗である。四角形の黒4子がアタリだが、
構わずに黒3と打つ。白4で黒4子が取られるが、
石を取らせてできた空いた交点に黒5のキリを打てば白2子が取れる。白2子を取ってできる一眼と隅の一眼で二眼の生きとなる。
以上の黒1、黒3、黒5の一連の手段を石の下の手筋と呼ぶ。特に黒5は「取られた跡のキリ」なのでアトギリ(跡切り)と呼ぶ。
取らせた四角形の黒4子の形を集四またはダンゴと呼ぶ。
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稲妻型の石の下
上図は黒番で生きる手段を問う問題。
黒1から黒3で捨て石を4子に増やす。この4子の形を稲妻形と呼ぶ。白4から白8で稲妻形の4子を取られるが、
黒9のアトギリで白6子を取って生きる。
[1]
石の下が実戦に生じることは稀だが、その中では稲妻型の石の下が生じることが多い。
上図の左上は赤星因徹の『玄覧』に示された実戦形の黒番で得を図る問題。右下の黒1から黒9で稲妻形にして捨てる。[2]
アトギリで眼を奪う
石の下で生きるケースばかりではなく、眼を奪って殺す手段もある。
白の5子はウッテガエシで取られている形だが、白1とわざわざ6子にして取らせるのが好手。黒は▲の点に抜くしかないが、
白3に切るとこの部分には一眼もできず、黒死となる。
大中手
ナカデ(中手)には3子から6子を取らせるものがあるが、7子以上を取らせても抜き跡を囲んでいる石に欠陥があると石の下の手筋で殺せる場合がある。これを大中手と呼ぶ。
上図は赤星因徹の『玄覧』の「垂棘屈産失国之形」の部分図で、白番で殺す手段を問う問題[3]。
黒4:トリ
白1から黒4で白16子を取られるが、
白5のアトギリで黒に生きる手段がない。この後、黒aなら白b。
類似の手筋
ウッテガエシやナカデ、ホウリコミ(ウチカキ)なども「相手に石を取らせて空いた交点に着手する手筋」だが、実戦に多く現れる基本的なもので石の下とは呼ばない。
脚注
- ^ a b 『算月』29頁
- ^ 『囲碁の研究』40頁
- ^ 『算月』32頁
参考文献
- 赤星因徹 『玄覧』 1846年。
- 木谷実、久保松勝喜代 『囲碁の研究』 東京博文館、1937年。
- 石倉昇監修、塚本惠一著 『算月』 亘香通商株式会社、1998年。
関連項目