取らず三目(とらずさんもく)は、囲碁用語で、下図のような形が代表的なもの。現行の日本ルール(1989年制定の日本囲碁規約)では黒白共にセキ扱いとなる。下図の場合、黒から打てば白地3目(場合によれば最大8目)になり、白から打てば白地2目(場合によれば1目)になる。
ただし、歴史的にはこの形の死活あるいは地を何目とするのかがルール上の問題とされてきた(「歴史」節を参照)。また、本形について「先に取り上げた側が損をする」といった解説が散見されるが、それはあくまでも1949年制定の旧規約を基準とする理屈である。
詳細
黒から打てば白地3目になる。
黒1で黒のアゲハマは1個になる。
白2で白のアゲハマは5個になる。黒5で黒のアゲハマは1個増えて2個になる。結果として白のアゲハマが3個多くなり、白地3目になる。
なお、白にコウ材が多ければ、白地は最大8目になる。
黒5:コウダテ
白4とコウにする手があり、白6で白のアゲハマは1個増えて6個になり、盤面に3目の白地が残る。このとき黒のアゲハマは1個なので、この隅の白地は8目になる。黒にはコウダテによる他の箇所での得がはかれる。
逆に白から打てば白地2目になる。
白1で白のアゲハマは4個になる。
黒4で黒のアゲハマは3個になる。
白7で白のアゲハマは1個増えて5個になる。結果として白のアゲハマが2個多くなり、白地2目になる。
なお、黒にコウ材が多ければ、黒6で7の左に打つ手があってさらに白地は1目減る。
歴史
嘉永年間に取らず三目の形が実戦にでき、本因坊秀和が裁決を依頼されて「取らず三目(打たず三目)がよかろう」と答えたと伝えられている
[1]。
1949年の日本棋院囲碁規約の日本棋院判例で
取らず3目の形は、そのまま終局すれば白地を三目と計算する。
とされた。
1989年の日本囲碁規約では、死活確認例で
黒の四子、白の一子はともに「活き石」で、第八条により「セキ石」。[2]
とされた[注 1]。すなわち、どちらも着手せずに終わればどちらの地にもならないため、実戦では白が着手して二目を得ることになる。
脚注
- ^ 新しい日本囲碁規約では古い日本棋院囲碁規約とセキの定義が異なる。日本囲碁規約におけるセキの定義は囲碁のルール#死活判定も参照。
出典
参考文献
- 林裕 『囲碁百科辞典』 金園社、1975年。
- 関口晴利 『囲碁ルールの研究』 文芸社、2007年。
外部リンク
関連項目