‘王林 ’(おうりん、英 : ‘Orin’)は、福島県 で育成されたリンゴ (セイヨウリンゴ)の栽培品種 であり、日本における代表的な青リンゴである(図1)。1930年代に‘ゴールデンデリシャス ’と‘印度 ’の交配によって作出され、1952年に「りんごの王様」という意味で‘王林’と命名された。黄緑色の果皮の表面に茶色い果点が目立つ果実をつけ、日本での収穫は10月下旬から11月上旬である。芳香があり、一般的な青リンゴのイメージ[ 6] とは異なり、酸味が少なく甘みが強い。日本においては、‘ふじ ’、‘つがる ’に次いで3番目に生産量が多いリンゴの品種である(2023年時点)。
特徴
樹姿は直立性[ 7] 。樹勢が強く、枝が直立しやすく、節間長が長い[ 8] [ 7] 。褐色腐朽 に弱い[ 2] 。自家不和合性 に関わるS遺伝子型はS2 S7 である[ 8] 。晩生品種であり、日本における収穫期は10月下旬から11月上旬[ 9] 。貯蔵性に優れているため、翌年の夏ごろまで出荷されている[ 10] [ 11] 。
2a . 赤色色素である
アントシアニン があまり合成されないため、成熟しても赤くなりにくい。
2b . 熟すにつれて果皮に茶色いサビが見られるようになるが(中央下)、甘みは強くなるとされる
[ 12] [ 10] 。
‘王林’の果実 は長円形から長円錐形、重さは300グラム ほどである[ 8] [ 11] [ 9] 。日本における代表的な青リンゴであり[ 10] [ 13] 、アントシアニン 合成はほとんど見られず果皮は黄緑色であるが[ 5] 、シーズン後半には黄色味がかったものが出回り、日に当たっていた部分がうっすらと赤みがかることもある[ 2] [ 10] [ 12] (上図2a)。果皮には褐色の果点(コルク化した気孔 の痕)が目立つ[ 10] [ 8] [ 11] [ 9] [ 10] [ 14] (上図2a)。ひび状のサビ(果皮のコルク化)が発生しやすいが[ 10] [ 11] (上図2b)、サビがあるほうが甘いともいわれる[ 12] (図2b)。果肉はやや硬めで緻密、果汁が豊富、褐変しにくい[ 11] [ 9] [ 12] [ 2] 。独特な芳香があり、甘みが強く(糖度14–15%)、酸味が少ない(約0.2%)[ 8] [ 11] [ 9] [ 10] 。‘王林’は、リンゴ果実に含まれるポリフェノール の主成分であるプロシアニジン を多く含む品種の一つである(約40 mg/100g)[ 15] 。
ほとんど生食用に利用される[ 2] 。
生産
‘王林’は、日本で最も生産量が多い青リンゴである。2023年の日本における‘王林’の生産量はリンゴ品種別で‘ふじ ’、‘つがる ’に次ぐ第3位(44,600トン )であり、リンゴ全体(603,800トン)の約7.4%を占めている[ 16] 。‘王林’生産量は青森県 (38,000トン)が飛び抜けて多いが、他に山形県 (1,620トン)、岩手県 (1,520トン)、秋田県 (1,040トン)、長野県 (1,030トン)で多い[ 16] 。赤くなるリンゴには必要となる着色管理が不要なため、リンゴ栽培における省力品種として生産者からの支持も得ている[ 11] 。
‘王林’は、カナダ やニュージーランド でも栽培されている[ 17] [ 18] 。2015年の世界(中国を除く)のリンゴ生産量において‘王林’は18位、0.49%を占めていた[ 19] 。
歴史
1931年ごろよりリンゴの品種改良に取り組んでいた福島県伊達郡 桑折町 の大槻只之助は、‘ゴールデンデリシャス ’を種子親、‘印度 ’を花粉親とした交配を行い[ 注 2] 、得られた実生から選抜、1943年に初めて結実した[ 14] [ 20] 。栽培当初は「そばかす美人」や「ナシリンゴ」などと呼称されていたが[ 14] [ 21] 、1952年、当時伊達農協の組合長を務めていた大森常重により「りんごの中の王様」という意味をこめて‘王林’と命名され、市場に出回るようになった[ 14] [ 20] [ 22] 。
果点の目立つ独特な外観が欠点とされ、品種登録 審査を通過しなかったため、農林水産省 には登録されていない[ 11] [ 20] 。しかし、1961年に福島県桑折町の生産者によって「王林会」が設立され、王林の普及が推進された[ 20] 。無袋栽培に適した品種であり、生産工数低減に寄与した王林は着実に生産数を増やしていき、1987年(昭和62年)からリンゴの作物統計調査において独立項目となり、当初は‘ふじ ’、デリシャス系 、‘つがる ’に次ぐ第4位であったが、その後デリシャス系が減少し、2022年時点では3位となっている[ 23] 。
派生品種
‘王林’を交配親とした品種 も多く作出されており、‘王林’を種子親としたものとして‘秋しずく’(花粉親は‘千秋’、三倍体)[ 24] [ 25] 、‘きおう’(花粉親は‘はつあき’)[ 26] [ 27] 、‘トキ ’(花粉親は‘ふじ ’)[ 28] [ 29] 、‘王林’を花粉親としたものとして‘あおり9’(生果名は‘彩香’; 種子親は‘あかね’)[ 30] [ 31] 、‘栄黄雅’(種子親は‘千秋’)[ 32] 、‘津軽ゴールド’(種子親は‘千秋’)[ 33] 、‘富香’(種子親は‘つがる ’)[ 34] などがある。
‘王林’と同じく‘ゴールデンデリシャス ’を種子親、‘印度 ’を花粉親とした交配によって、青森県りんご試験場で作出され、1977年に報告された品種として、‘ジャンボ王林’がある[ 35] 。‘王林’とは別品種であるが、‘王林’と同様に果肉は硬めで果汁に富み、甘い[ 35] 。果実は非常に大きく、円錐形から長円錐形、果皮は基本的に黄色[ 35] 。また、比較的よく知られた品種である‘陸奥 (クリスピン)’も、同じく‘ゴールデンデリシャス’を種子親、‘印度’を花粉親とした交配から作出されたものである[ 36] 。
脚注
注釈
^ 他に‘Ohrin’、‘Ourin’、‘Oorin’と表記されることもある[ 2] [ 5] 。
^ 意図的な掛け合わせではなく、‘ゴールデンデリシャス’の偶発実生に由来するともされる[ 20] 。
出典
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関連項目
王林 (タレント) - 青森県出身であり、地元のアイドルグループ所属時にこのリンゴの品種名から命名された。
外部リンク