潮流放送(ちょうりゅうほうそう)とは、海上保安庁の一部の海上交通センター(マーチス)が、特定の海峡を航行する船舶に対し、潮流の状況を音声とモールス信号で送信するものである。来島海峡および関門海峡に3局が設置されていた。 本記事では、視覚情報で潮流を伝える潮流信号所についても解説する。
電波法令上は特別業務の局による同報通信[1]であり、地上基幹放送局による地上基幹放送ではなく、放送法令上の放送でもない。
船舶が多く航行する海峡において、潮流が著しく強い、または潮流の方向が不定期的に変化することで、航行障害を起こして海上交通の妨げになる海峡や潮流の方向により航路が指定される海峡に設置され、音声とモールス信号により潮流の向き・流速・流速の変化の傾向について送信する。来島海峡(西水道・中水道)[注釈 1]、関門海峡(早鞆瀬戸)の2か所に設置され、識別信号"NT"、"おおはま"、"ひのやました"の3局(前者2つが来島海峡、後者が関門海峡)により運用されていた。
この2つの海峡では、潮流にさかのぼって航行する場合に速力4ノット以上を確保して航行すること、また潮流7ノット以上のときに、停泊している船舶が潮に流されないよう処置をすることが義務付けられている。特に来島海峡では、潮流の流行と同じ方向(順潮時)に航行する時は中水道を航行し、潮流の流行に逆行(逆潮時)して航行する時は、西水道を航行する「順中逆西(じゅんちゅうぎゃくせい)」という、特殊な航法[2]が実施されており、中水道の潮流が0ノットになり、潮流の向きが変化する「転流」[2]のときに来島海峡を航行する際は、来島マーチスに「転流時通報」をしなければならない[3]。(来島海峡に関する事項は、海上交通安全法に規定されている。)
ゆえに潮流放送・潮流信号は、海上交通上の処置を実施するための情報提供に利用される。(詳しくは来島海峡の項参照) 流速は、海底に埋設された流速計によるが、故障したときは、天文儀から計算されたものを用いる。 同様の送信は、来島マーチス・関門マーチスからも日本語と英語で1時間に各2回行われるほか、7ノット以上の場合には国際VHF波での送信も行われている。これに加え、ひのやました局については、呼び出し符号を除いた放送内容をそのまま自動電話サービスで提供していた。
なお、2018年2月27日に、潮流放送について定めた「郵政省告示第五百九十九号」告示が改正され、"NT"、"おおはま"の項目が削除されている[4]。また、総務省の無線人免許でも確認できないことから来島海峡の2局は廃止したと思われる。そのため、それ以降は"ひのやました"のみが運用されていたが、こちらも自動電話サービスと共に2022年12月16日で終了した[5]ことで、すべての潮流放送が廃止された。
中水道の潮流についてモールス信号により送信される。終期とは、転流20分前~転流時刻までの時間を指す。(後述の『転流期』と混同しやすいので注意。)
また、南流・北流は後述の『南への流れ』・『北への流れ』と同じ意味である
船舶気象通報と同様に合成音声により送信される。内容は1度繰り返される。
「各局、各局。こちらは『おおはま』。海上保安庁が、来島海峡の、潮流の状況を、お知らせします。」で始まる。
送信内容は、西水道・中水道・大角鼻沖合の、現在・30分後・1時間後の『潮流の向き』・『流速』、中水道の『転流時刻』である。
最後は「こちらは『おおはま』。」と告知し、"NT"の放送が始まる。
電波発射を開始し「各局、各局。こちらは『ひのやました』。海上保安庁が、関門海峡、早鞆瀬戸の潮流の状況を、お知らせします。」で始まる。
送信内容は『潮流の向き』・『流速』・『流速の変化の傾向』の3つである。
最後は「こちらは『ひのやました』。さようなら」と告知し、一度停波。
来島海峡の西水道・中水道、関門海峡の早鞆瀬戸の潮流信号については、電光掲示板(来島海峡4箇所、関門海峡3箇所)による表示も行われている。表示は、潮流放送と同じように、潮流の向き、流速、流速の傾向として表示される[3][6]。来島海峡には加えて、『転流期(転流20分前~転流20分後)』および『転流1時間前~転流時刻』という表記がある。[3]表示はそれぞれ"潮流の向き→消灯→流速→消灯→流速の傾向→消灯"を繰り返す。
更に、来島海峡については、潮流放送"おおはま"と以下の相違がある。
来島海峡[8][9]
関門海峡
来島海峡では転流~転流20分後は 向き・×・↑と表示。