枝角
成熟したアカシカ , Denmark (2009)
枝角 (えだつの、Antler)またはアントラー は、シカ科 の角 である。骨 、軟骨 、線維組織、皮膚 、神経 、血管 で構成される単一の構造で、一般的にオス にのみに見られる(トナカイ [ 1] を除く)。枝角は毎年落ちて再成長し、主に性的ディスプレイとして、またハーレム を制御するためのオス間の戦いの武器として用いられる。
構造
アカシカ の角。ベルベットが成長中の角を覆ってい、酸素と栄養分を供給する血液が流れる。
枝角はシカ に固有のものである。枝角は、角座骨(pedicle)と呼ばれる頭蓋骨 の先端から成長する。枝角が成長している間、それはベルベットと呼ばれる血管 の多い皮膚 で覆われ、成長している骨に酸素 と栄養素 を供給する[ 2] 。枝角は、動物界 で雄の第二次性徴 の最も誇張されたケースの1つと見なされており[ 3] 、他の哺乳類 の骨よりも速く成長する[ 4] 。成長は先端で起こり、最初は軟骨 であり、後に骨組織に置き換わる。枝角がフルサイズに達すると、ベルベットが失われ、枝角の骨が死ぬ。この死んだ骨の構造が成熟した枝角である。ほとんどの場合、根元の骨は破骨細胞 によって破壊され、枝角はある時点で脱落する[ 2] 。ほとんどの北極 および温帯 の種では、枝角の成長と脱落は一年生であり、日光の長さによって制御される。枝角は毎年再成長するが、そのサイズは多くの種で、齢によって異なり、最大サイズに達するまでは数年にわたって毎年増加する。熱帯の種では、枝角は一年中生え換わる可能性があり、サンバー などの一部の種では、枝角は複数の要因に応じて一年の異なる時期に生え換わる。赤道域に分布する一部のシカは、枝角が生え換わらない。枝角は、支配と性的ディスプレイとして機能し、オス間の闘争の武器として、時には相手に深刻な傷を負わせることもある[ 4] 。
機能
性選択
ほとんどの種で、枝角の進化の主な手段は性淘汰 であり、これは雄同士の競争(行動的、生理学的)と雌の配偶者選択という2つのメカニズムを介して機能する[ 3] 。
外敵からの防御
イエローストーン国立公園 のオオカミ は、枝角のないオスのヘラジカ 、または少なくとも1匹のオスが枝角のないヘラジカの群れを攻撃する可能性が3.6倍高いという結果がある[ 5] 。
雪かき
トナカイは、枝角を使用して雪を取り除き、下の植生を食べることができる。これは、トナカイの雌が角を進化させた理由の一つとされる[ 2] 。
聴覚アンテナ
ヘラジカでは、枝角は大きな補聴器 として機能する場合がある[ 6] 。
多様性
枝角、体の大きさ、牙の多様化は、生息地と行動(戦いと交尾 )の変化に強く影響されてきた[ 7] 。
シカ亜科
オジロジカ亜科
枝の相同性と進化
枝角の系統進化
現在発見されている最古の枝角の化石 記録は、約1,700万年前の中新世 初期である。初期の枝角は小さく、2分岐であった[ 8] 。枝角が進化するにつれて、長くなり、多くの枝を獲得し、より複雑になっていった[ 8] 。枝の相同性 は1900年代以前から議論されている[ 9] [ 10] [ 11] が、最近、枝の分岐構造と相同性を記述する新たな方法が考案された[ 12] 。
枝角と動物や人間の関わり
動物
生え落ちた角にはカルシウム、リン、その他のミネラルが含まれているため、リス、ヤマアラシ、ウサギ、マウスなどの小動物が摂取する。特にミネラルが土壌に少ない場所では顕著である[ 13] 。
人間
生え落ちる角を犬を使って探索したり、餌と網などを使った罠で収集したりする[ 14] 。また、奈良公園 では人間や他の鹿に怪我をさせないよう、一年に一度切り落としを行う[ 15] 。それとは別に、トロフィーハンティング として鹿を仕留めた景品として切り落とされる。
アメリカでは販売が許可されているが[ 16] 、カナダでは自然で消費される物資とみなされ、取引すると罰せられる[ 17] 。
人間が手に入れた角は、道具、武器、装飾品、おもちゃを作るための材料とされる[ 18] 。ヨーロッパの後期旧石器時代の歴史資料として発見され、後の時代には象牙の代替品として利用された。
アジアでは伝統医学 や栄養補助食品とされた(漢方薬の鹿茸、鹿角など)[ 19] 。ヨーロッパでも気付け薬 などの材料とされた[ 20] 。
関連項目
骨角器
鹿角霜
袋角 (英語版 ) - 春から夏にかけて角を覆い成長させる皮膚。体温調節機能がある。漢方薬では鹿茸と呼ばれる。
脚注
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^ 奈良)鹿の角きり始まる 追い込む姿に歓声も 朝日新聞 更新日:2018年10月7日
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