戸別訪問(こべつほうもん)とは、一軒ずつ訪ねて回ること。
日本の公職選挙法では家ごとに訪問して選挙の投票を依頼することや、演説会や候補者の氏名の宣伝をすることは、同法第138条第1項、第2項で禁止されている(罰則は239条第1項3号、1年以下の禁錮又は30万円以下の罰金)。
公職選挙における戸別訪問が禁止されている理由は買収や利益誘導などの不正行為を招きやすいためと説明される。しかし、戸別訪問は有権者が直接政策を知り、深める手段として有効であり、なおかつ街頭演説に比べ音量が小さく住民の気分を害しにくいという利点も指摘されている。また、戸別訪問規制は選挙運動の複雑化や負担の増大化になり、少数党派や新党の政界進出を阻んでいると指摘する意見もある。
選挙における戸別訪問への規制が行われている国は、日本と大韓民国(日本に統治されていた名残)が知られている。日本における戸別訪問の禁止規定は1925年制定の普通選挙法に遡るものであり、第二次世界大戦の終了の直後に一時規制が緩和されたこともあるが、1952年の改正により全面禁止が復活し、現在に到っている。1993年の細川内閣以降何度か解禁の論議が出ているが、解禁実現には至っていない。
選挙における戸別訪問の禁止は憲法で保障された表現の自由に違反するのではないかとして、過去において裁判で何回か争いになっている。
下級裁判所では違憲判決が出ているものの、最高裁では一貫して合憲判決を出している(昭和56年7月21日第三小法廷刑集35巻5号568頁など)。