リージョナルジェット

ヤコヴレフ Yak-40

リージョナルジェット (Regional jet, RJ) は、短距離輸送用ターボファンエンジン搭載航空機地域間輸送用旅客機と訳されることもある[1]

一般的に、旅客機では、旅客数が50から100名程度で、必要な滑走路も短い低騒音な小型ジェット機のことを呼ばれるようになった[1]。しかし、アエロフロートヤコヴレフ Yak-40ソ連期から地域間輸送用旅客機として運用していたように、リージョナルジェットそのものは航空界において新しい概念ではない。また、西側でもシュドカラベルが長い間使用され、1978年アメリカ合衆国での航空規制緩和法制定後、その運用が世界的に拡大したという背景がある。

歴史

主なリージョナルジェットの座席数比較

航空機の歴史は複雑で、単に短距離ジェット機をリージョナルジェットとして分類するのは、歴史的に正確ではない。

第二次世界大戦まで大手航空会社の旅客機は、距離が短いながらも経済的に重要で信頼が不可欠なロンドンパリ間、ニューヨークシカゴ間のようなルートで使われた。しかし、第二次世界大戦で与圧が実用化され、戦後の年にコーチ旅行が普及すると、大型プロペラ旅客機は世界規模の航空路に就航しはじめた。

戦後すぐの頃は、ベストセラーとなったダグラス DC-3に代わる旅客機を製造しようと、多くの航空機メーカーがマーチン 2-0-2フォッカー F27を開発した。1960年代に入ると、初期の大型50人乗り旅客機は少しずつ大型化へシフトし始めた。特に短距離路線を扱っていた小規模の航空会社向けに地域間航空機のニーズを意識して、イギリスショート スカイバンブラジルエンブラエル EMB 110フランスノール262など、各航空機メーカーがダグラス DC-3の代替機を展開し、ヨーロッパ内で活躍した。

ボンバルディア CRJ100

1970年代に入ると、エアライン・ディレギュレーション (Airline Deregulation) が1978年に制定されてアメリカ合衆国の航空路が自由化され、より小型に設計された旅客機ミニ・エアライナーの市場は急成長した。自由市場の動向を通して、客室乗務員もいなければトイレットもないミニ・エアライナーの不満を受け、航空会社と航空機メーカーは充実した設備を備えるミニ・エアライナーの代替を急いだ。この頃のミニ・エアライナーはターボプロップエンジンを搭載し、小規模の航空会社が地域の空港からより大きなハブ空港へ運航していた。しかし同時に高速でより長い航続距離のミニ・エアライナーも受け入れられ、この差別化をなすリージョナルジェット市場の土壌が出来つつあった。

シュド・カラベル、フォッカー F28、ヤコヴレフ Yak-40といったいくつかの小型ジェット機が1950年代ごろから就役していたが、短距離路線では燃費に勝るターボプロップ機に対して運用経費での競争に挑めず、旅客の少ない空路に活路を見出していた。しかしエンジンの技術が向上すると燃費が向上し、飛行時間の短縮に不可欠な高速巡航が可能という点が利用率を伸ばし、ターボプロップ機との優劣の違いは少なくなった。

エンブラエル ERJ 145

設計当初からリージョナルジェットとして開発されたBAe 1461981年に初飛行したが、これに追従する形になったボンバルディア CRJがベストセラーとなった。ボンバルディア CRJは中距離路線での運用にも十分な航続距離であったが、むしろ、そういった路線を既存の大型機で間に合わせ、大規模なハブ空港を避けて目的の空港へ直接飛ぶことを想定した。これは、ハブ・アンド・スポーク方式の減少に関する産業全般にわたる議論に導かれた。小規模な空港へ直接飛ぶ直行便には、ターボプロップ機ほど燃費にシビアでなくとも、経費が少なくて済むリージョナルジェットが必要であった。また、ターボプロップ機は比較的静かであるが、低周波のプロペラ音が機内に伝わりやすく[2]、旅客側はジェットを好んだ。

ターボプロップ機であったように、CRJの成功が多数のメーカー参入につながった。その成功の一例がエンブラエル ERJ 145であり、優れた売上を見せて大部分の市場でCRJと競った。以来、ボンバルディアとエンブラエルは輸出税と助成金に関する一連の訴訟に陥った。しかし、ERJの成功がエンブラエル E-Jetシリーズにつながり、ボンバルディアはそれに対抗機種を出さないことを選んだ。

フォッカー100
Bae146

現代では短距離路線向けに30-50席クラス、リージョナル路線に70-90席クラス、利用客が多い路線向けにストレッチモデルとして100-120席クラスが開発されている。特に70席クラスはスコープ・クローズの上限いっぱいとした設計が多い。20席以下はビジネス機、10席以下はエアタクシーと競合する。

主な機体

機材[3] 現状 エンジン (PTL / Jet)[4] 生産期間 全長 m [5] 全幅 m [5] 航続距離 乗客 生産数 (2008年現在)[6]

[7] [8]

運用数 (2008年現在)[6][9] 生産国 写真
An-32 運用中 2 PTL 1976~ 24 m 29 m 1.000~3.000 km 50 361 268[7]  ウクライナ (ソビエト連邦の旗 ソビエト連邦) An-32
An-38 運用中 2 PTL 1984~ 16 m 22 m 2.000 km 27 8 6[7]  ウクライナ (ソビエト連邦の旗 ソビエト連邦) An-38
An-74 運用中 2 Jets 1977~ 28 m 32 m 1.500~4.300 km 65 180+  ウクライナ (ソビエト連邦の旗 ソビエト連邦) An-74
An-140 運用中 2 PTL 1999~ 23 m 25 m 1.300~3.000 km 50 15+ [7]  ウクライナ An-140
An-148 運用中 2 Jets 2004~ 29 m 29 m 2.200~3.600 km 75 2 0  ウクライナ An-148
ATR 42 運用中 2 PTL 1984~ 23 m 25 m 1.600 km 50 403+ 403[7] イタリアの旗 イタリア/フランスの旗 フランス ATR 42
ATR 72 運用中 2 PTL 1988~ 27 m 27 m 1.300 km 68 539+ 539[7] イタリアの旗 イタリア/フランスの旗 フランス ATR-72
BAE Avro RJ85/100, 146, 146QT 運用中 4 Jets 1981~2003 26~30 m 26 m 1.800 km 85 390 354[7] イギリスの旗 イギリス BAE 146
BAE Jetstream 31/41 (Handley Page) 運用中 2 PTL 1991~ 14~19 m 16 m 1.200+ km 19~29 547[10] 406[11] イギリスの旗 イギリス Jetstream 31
BAE ATP 運用中 2 PTL 1988~1996 26 m 31 m 1.800 km 70 62 56[7] イギリスの旗 イギリス ATP
Berijew Be-200 運用中 2 Jets 1997~ 32 m 32 m 1.700~3.800 km 44~72 9 7[7] ロシアの旗 ロシア Be-200
ボーイング717
(MD-95)
運用中 2 Jets 1998~2006 37 m 28 m 2.200 km 110~145 156 155[7] アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 B-717
ボンバルディア CRJ100/200/440/800 運用中 2 Jets 1991~ 27 m 21 m 1.800~3.100 km 50 1.021+ 995[7] カナダの旗 カナダ CRJ200
ボンバルディア CRJ700/900/1000 運用中 2 Jets 2001~ 32~39 m 23~26 m 3.000 km 70 550+ 441[7] カナダの旗 カナダ CRJ705
エアバスA220
(ボンバルディア Cシリーズ)
運用中 2 Jets 2016~ 34~38 m 35 m 4,000~5,000 km 100~145 300 300 カナダの旗 カナダ A220
デ・ハビランド・カナダ DHC-6 運用中 2 PTL 1965~1988, 2008~ 16 m 20 m 1.800 km 20 842[7] 565[7] カナダの旗 カナダ DHC-6
デ・ハビランド・カナダ DHC-7 運用中 4 PTL 1965~1988, 2008~ 25 m 28 m 1.500~2.200 km 50 113[7] 80[7] カナダの旗 カナダ DHC-7
デ・ハビランド・カナダ DHC-8 運用中 2 PTL 1980er~ 22~33 m 26~28 m 1.600~2.500 km 50~80 809+ 809+[7] カナダの旗 カナダ Dash 8
ブリテン・ノーマン トライランダー 運用中 3 レシプロエンジン 1970~1982 15 m 16 m 1.600 km 17 74 イギリスの旗 イギリス Trislander Aurigny
セスナ 208 "Caravan" 運用中 1 PTL 1982~ 12~13 m 16 m 1.700 km 9~14 1.500+ アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 208
ドルニエ (RUAG英語版) / HAL

ドルニエ 228[12][13]

運用中 2 PTL 1981~1998, 2009~ 15~17 m 17 m 600~1.300 km 15 270+ 270+ ドイツの旗 ドイツ/スイスの旗 スイス/インドの旗 インド Do-228
ドルニエ (RUAG英語版) / HAL

ドルニエ 328

運用中 2 PTL 1992~2005, 2008~ 21 m 21 m 1.800 km 30 107 104[7] ドイツの旗 ドイツ/スイスの旗 スイス/インドの旗 インド Do-328
エンブラエル ERJ 145 (ERJ-135/140/145) 運用中 2 Jets 1995~ 26~29 m 20~21 m 2.200 km 50 1.000+ 1.000+ ブラジルの旗 ブラジル
Embraer E-Jets 170, 175, 190, 195 運用中 2 Jets 2004~ 29~38 m 26~28 m 3.700 km 78 446 446 ブラジルの旗 ブラジル
Evektor EV-55英語版 運用中 2 PTL 2004~ 14 m 16 m 2.240 km 9~14 3 3[7]  チェコ
フォッカー 50/60 運用中 2 PTL 1987~1997 25~29 m 29 m 1.400 km 50~60 213 160+ (ca.) オランダの旗 オランダ F50
フォッカー 70 運用中 2 Jets 1993~1997 31 m 28 m 2.000 km 80 48 40+ (ca.) オランダの旗 オランダ F70
フォッカー 100 運用中 2 Jets 1986~1997 35 m 28 m 2.400 km 100 277 225 (ca.) オランダの旗 オランダ F100
ビーチクラフト 1900 運用中 2 PTL 1982~2002 17 m 18 m 400~2.500 km 19 938 643[7] アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 B1900
Let L-410 運用中 2 PTL (Walter M601英語版) 1972~ 14 m 17 m 1.100 km 17 1100+  チェコ (チェコスロバキアの旗 チェコスロバキア) Let L-410
NAL / HAL NAL Saras英語版 [14] 運用中 (開発中) 2 PTL 2004~ 15 m 15 m 1.000~2.800 km 14 2+ インドの旗 インド Saras
ピラタス PC-12英語版 運用中 1 PTL 1993~ 14 m 16 m 2.800~4.100 km 6~9 780+ スイスの旗 スイス PC-12
サーブ 340 運用中 2 PTL 1984~2005 20 m 21 m 1.400 km 35 459  スウェーデン Saab 340B
サーブ 2000 運用中 2 PTL 1994~1999 27 m 25 m 1.800 km 50 64  スウェーデン 2000
ショート 330[15] 運用中 2 PTL 1974~1992 18 m 23 m 1.600 km 30 136 62[7] イギリスの旗 イギリス 330
ショート 360 運用中 2 PTL 1982~1991 22 m 23 m 800 km 35+ 164 125[7] イギリスの旗 イギリス 360
スホーイ・スーパージェット100 運用中 2 Jets 2010 30 m 28 m 3000~4600 km 98-108 92 92 ロシアの旗 ロシア SSJ100
西安飛機 MA60 運用中 2 PTL 1982~1991 24 m 29 m 1,400 km 60 12+ 12+[7] 中華人民共和国の旗 中国 MA60
COMAC ARJ21 運用中 2 Jets 2015~ 33 m 27 m 2,200 km 90 100 100 中華人民共和国の旗 中国 ARJ21

脚注

注釈・出典

  1. ^ a b 用語解説”. 国土交通省. 2009年2月25日閲覧。
  2. ^ 低周波振動高周波振動に比べて遮音が困難である。
  3. ^ zusammengestellt anhand der Ubersicht der ?Regionals“ (eingegrenzt auf 10 bis etwa 100 Sitzplatze bzw. entsprechende Fracht) in: Flight International: World Airliners, 28. Okt. ? 3. Nov. 2008, S. 51?63.
  4. ^ hier als Abkurzungen PTL = ターボプロップエンジン, Jet = ジェットエンジン -- s. entsprechende Artikel der Wikipedia: -- ターボプロップエンジン (komb. aus: Turbine u. Propeller) ist eine landlaufige Bezeichnung fur Propellerturbinenluftジェットエンジン (auch als PTL bezeichnet). -- ジェットエンジンe (auch Dusentriebwerke oder Strahlturbinen, engl. Jet engine) sind Gasturbinen, die vor allem als Triebwerke verwendet werden und nach dem Prinzip des Ruckstosantriebes arbeiten. ジェットエンジンe saugen die Umgebungsluft an und stosen die Verbrennungsprodukte und zum Teil Luft als Antriebsstrahl wieder aus, wobei durch den Ruckstos eine Schubkraft erzeugt wird. Weil im Unterschied zum Raketentriebwerk der fur die Verbrennung notwendige Sauerstoff der angesaugten Luft entnommen wird, spricht man auch von luftatmenden Triebwerken.
  5. ^ a b Die Langen- und Spannweitenangaben sind gerundet auf Meter, um die Tabelle ubersichtlich zu halten. Unterschiedliche Grosen bei Varianten eines Modells: x?y m, bei Schwenkflugelflugzeugen: maximale/minimale Grose.
  6. ^ a b Ubersicht in: Flight International: World Airliners, 21.?27. Okt. 2008, S. 31?43 und 28. Okt. ? 3. Nov. 2008, S. 51?63. (Alle bis Mitte 2008 produzierten Flugzeuge und alle noch im Einsatz befindlichen Flugzeuge einschlieslich vorubergehend stillgelegter Exemplare.)
  7. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w Flight International: World Airliner Census, 28 Oct ? 3 Nov 2008, S. 46?63 (Ubersicht aller derzeit eingesetzten 26.675 Flugzeuge.)
  8. ^ Ubersicht in: Flight International: Airliner Survey, 19.?25. Aug. 2008, S. 37?63 (Alle Mitte 2008 von Fluggesellschaften eingesetzte Flugzeugtypen, ohne Militar und Privatflugzeuge.)
  9. ^ Ubersicht in: Flight International: World Air Forces, 11.?17. Nov. 2008, S. 48?76 (Einleitung und Liste als PDF mit einer englischsprachigen Ubersicht aller in den Air Forces eingesetzten Flugzeugtypen)
  10. ^ J 31: 447, J-41: 100 Mitte 2008 (s. -World Airliner Census“)
  11. ^ J 31: 309, J-41: 97 Mitte 2008 (s. -World Airliner Census“)
  12. ^ Ruag Aerospace Services acquired Dornier 228 support and modification work, as well as the type certificate form the administrator of Fairchild Dornier in Dec 2002. The company is to reinstate production under the designation -228 NG“ using airframes from Hindustan Aeronautics - which has undertaken production in India since 1983 - and completing them at die original Dornier factory at Oberpfaffenhofen. in: Flight International, 28 Oct - 3 Nov 2008, p 61
  13. ^ Information zur weiteren Produktion bei HAL-India (engl.)
  14. ^ engl. Wilipedia NAL und Saras, Informationen des Herstellers: Typenbeschreibung und Programm (engl.)
  15. ^ In der Fachliteratur werden Modelle der Hersteller Short Brothers meist mit Shorts bezeichnet.
  16. ^ 三菱重工が国産初のジェット旅客機事業から撤退”. 東洋経済オンライン (2023年2月8日). 2023年2月11日閲覧。

関連項目

Strategi Solo vs Squad di Free Fire: Cara Menang Mudah!