リムジン (limousine)、リモ (limo) とは、
- ドイツ語でセダンの意味。
- 世界的には職業運転手が運転することを前提とした大型の乗用車、特に高級車を通常指す。同じ大型乗用車であってもワゴン車はこれに含まない。ショーファーカー、ショーファードリブンカー(ショーファーとはお抱え運転手という意味)とも呼ばれ、同じ高級車でもオーナーが自分で運転するものはドライバーズカー、およびオーナードリブンカーと呼ばれる。
- 後部座席部分の構造を延長し、運転席との間に(可動式の)仕切りを設けた大型乗用車。拡大された後部空間には、通常3名以上の乗員が乗車でき、豪華な装備を持つ。ストレッチ・リムジン(stretch limousine)とも呼ばれる。
- 特定区間を連絡するバスや大型のバン。シャトル[要曖昧さ回避]の一種。特に、空港と市街を結ぶものを指すことが多い。日本では、「リムジンバス」「エアポート・リムジン」などと意味を明確にしたうえで、路線バスの愛称として使われる。
概要
元来は馬車の形式の一つであり、御者と客室の間に仕切りがある、もしくは御者席が客室の外側にあるもののことである。なお、このような仕切り(パーティション)を設けた、つまり運転席・助手席と後部座席が完全に隔離されている形式のリムジンが、現在においても最も格の高い正式なリムジンとされている。ほかにも、後部座席部分を延長して補助座席を設けたものや、後部にドアを追加して3列目のシートを設けたもの(この場合は単純に乗車定員を増やすことが目的の送迎用のものが多い)がある。
全長を延ばす理由はさまざまで、送迎用のリムジンとして乗車定員を増やすことや、ロングホイールベースにより揺れを減少させること、さらに後部座席の足元のスペースの拡大やテレビモニターやカクテルキャビネットの設置などの居住性、各種設備の充実を図ること(応接室化)に主眼がおかれるが、トランクスペースを改造してジャクージバスにするなどの変り種もある。後部座席が車体と並行の長椅子型になっているものもあり、その場合その座席にシートベルトはなく、ドアも最後部片側に1つだけで、反対側には付いていないことがある。
国家元首級の要人が用いるリムジンにおいては、狙撃やテロリズムからの防御のために、防弾ガラスや装甲、ランフラットタイヤなどの特別な仕様が施されている。このような装甲リムジンとして有名なものは米国大統領専用車やソビエト連邦のZIL-41047、日本の内閣総理大臣専用車などが挙げられる。また、日本においては天皇などの皇族が用いた御料車のうち、初の国産車両となった1967年の日産・プリンスロイヤルは、当時の日本のモータリゼーションの水準では過剰性能の排気量6400cc、V型8気筒のW64型が採用された。これも一般車両に比べて大きく重くなった車体を非常時には一般車両以上の高速で走らせ、危機を回避するための装備である。
東京空港交通を筆頭に都心や周辺都市からの空港連絡路線バスをリムジンバス (airport limousine bus)と称することがある。これは東京空港交通が都心から空港への送迎車(ハイヤー)をリムジンで運行していたことに由来し、その後航空需要が増大したことによって路線バスを始めたため、リムジンバスという名称を使うようになったのが通説である。
リムジンは一般的にはボディ加工の専門的な技術を持つコーチビルダーが既存の市販高級車のボディを改造し、キャビンを延長した(セダンボディを中央から切り離し、間に詰め込むニコイチ式加工をする)ストレッチ・リムジンを指すが、一部には自動車メーカーが最初からリムジン専用ボディを製造し、リムジンとして工場出荷される車体もある。こうした自動車メーカー製のリムジンはプルマン・ボディ(ドイツ語版)(Pullman-Body)と呼ばれ、ストレッチ・リムジンとは明確に区別されている。
アメリカにおけるリムジン
リムジンの営業免許は基本的に「小型貸切旅客運送業」免許で、各州の関連法により差はあるが、運行には「事前予約」と「貸切」「小型(15名以下)」の条件が付く。
タクシー(一般)や空港シャトル(乗り合い)ホテル送迎(自家用)とは業務免許が異なるので、流しや乗合は違法となり、空港や観光地などで客引きをしているようなリムジンは、正式な運行許可もなく、業務保険にも加入していない可能性がある。
ラスベガスやロサンゼルスなどでよく見かける、ホテルに待機しているリムジンは、予約なくその場で利用が可能な場合が多いが、ホテルと「事前予約(待機)」を済ませていることが多く、運行業務要件を満たしている。大抵の場合、ドライバーと客の直接交渉ではなく、ホテルのコンシェルジュやドアマンなどが間に入る(顧客からリムジンへ直接料金を支払っても運行免許上の問題はない)。
ハマーなど大型のリムジンは、書類上は「貸切バス」に分類されるが、あくまで運営者側の業務免許や業務保険上の違いであり、大手のリムジン会社は1社で黒塗りセダンからストレッチ・リムジン、バス(パーティ・バスやリモ・バスと呼ばれる)まで所有していることも多い。
ほぼすべての州の道交法は、運転者のみならず同乗者が車内で飲酒することや酒類の車載を禁止しているが(トランク内積載や封を開けていない酒類は可)、リムジン車内はこの法の適用免除になっている(自動車の形状にかかわらず、旅客運送業免許者が運営する自動車の車内)。レンタカーやホテル所有の送迎車の車内での飲酒は違法。
旅客運送業免許を受けている業務用の場合は車種にかかわらず(プリウスでもストレッチ・ハマーでも)法的にリムジンであり、車内の飲酒等も可能であるが、非営利目的で旅客運送業認定外の場合は(社用・私用)ストレッチ・リムジン以外はリムジンと呼ばれずに単にショーファー・ドリブンと呼ばれる。
米国では、セレブリティの授賞式や映画のプレミア、パーティなどに加え、中流所得層の冠婚葬祭、コンサート、スポーツ観戦、高校主催のプロムなどでの利用も多い。セレブリティのアワード賞やパーティなどの依頼は黒限定、一般顧客の場合(除く葬儀)は白もしくは色にこだわらない依頼が多い。
ストレッチ・リムジンでもトランク部分はストレッチ(拡張)されておらず、ベース車と同じサイズであり、しかも既にクーラーボックスなどが収納されている場合が多いため4人以上(スーツケース4つ以上)での空港送迎には適していない(拡張された車室内に荷物を置くことはできる)。
セレブリティなどが家族での空港送迎でリムジンを利用する場合は、同時に荷物車(SUVなど)を手配するが、多くはビジネスジェットを利用することが多いので、リムジンは飛行機ドアに横付け、荷物車は機体後部荷物ドアに横付けする。
日本におけるリムジン
日本において、リムジンに関する特別な免許、許可は無く、一般的な乗用車として扱われるが、霊柩車として登録する場合は特殊車両の8ナンバーが適用される。
営業
リムジンを含む一般的な乗用車の営業免許は、「国土交通省」および営業しようとする各地域の「運輸局長」からの許可を得ている必要がある。
これは、道路運送車両法の「旅客自動車運送事業」という許認可であり、営業方法等により
- 一般乗用旅客運送業
- 一般貸切旅客運送業
- 一般乗合旅客運送業
- 特定旅客運送業
の上記4種類の事業免許に分類される。
なお、リムジンと呼ばれるストレッチした車両の場合、「一般乗用旅客運送業」、「一般貸切旅客運送業」、「特定旅客運送業」のいずれかに必ず該当する。
関連項目