地下鉄の開業は1919年、路線数は13、駅数は231で、路線長は282.5 キロメートルある。またこの他に Metro Ligero というライトレール路線が2007年に開業し、3路線38駅で路線長28キロメートルである。
歴史
マドリード地下鉄の最初の路線は、1919年10月17日にメトロ・アルフォンソ8世会社(Compañía de Metro Alfonso XIII)の運営で3.5 キロメートルの区間に8駅で開業した。狭断面で建設され、駅には60 メートルのプラットホームを備えていた。この路線の延長工事と他の2路線の建設はそのすぐ後に行われた。1936年には地下鉄網には3つの路線とオペラ駅(Opera)とノルテ駅(Norte)の間の支線が存在していた。これらの全ての駅はスペイン内戦時には防空壕として用いられた。
スペイン内戦後、地下鉄網の拡張工事は少しずつ進められていった。1944年、4号線が建設されて、2号線の支線のゴヤ駅(Goya) - ディエゴ・デ・レオン駅(Diego de León)間を1958年に4号線へ吸収した。この支線は建設当初から4号線の一部となるべく意図されていたものであったが、4号線が建設されるまで2号線の支線として用いられていた。
1960年代には、プラサ・デ・エスパーニャ駅(Plaza de España)とカラバンチェル駅(Carabanchel)の間の郊外鉄道線が建設され、プラサ・デ・エスパーニャ駅で3号線と、また同駅で2号線のノビシアード駅(Noviciado)と長い通路で接続した。さらに5号線が狭断面であるが90 メートルのプラットホームをもって開業した。5号線の最初の区間の開業のすぐ後に、1号線のプラットホームが60 メートルから90 メートルへと延長され、また隣のイグレシア駅(Iglesia)と500 メートル以下しかなく近すぎるためチャンベリ駅(Chamberí)が閉鎖された。旧チャンベリ駅は現在では地下鉄博物館となっている。
1990年代初め、地下鉄網の管轄は公営事業へと移管され、メトロ・デ・マドリード(Metro de Madrid)となった。さらに大規模な拡張プロジェクトが提案された。1号線、4号線、7号線が拡張され、またマドリード郊外地域に向けて新線である11号線が建設された。8号線と10号線は統合されてより長い新しい10号線となり、新しい8号線が地下鉄網をマドリード=バラハス空港へと接続するために建設された。さらに拡張された9号線はマドリード郊外から初めて離れて、マドリード南東にある2つの町、リバス=バシアマドリードとアルガンダ・デル・レイ(Arganda del Rey)へ到達した。
現在のマドリード市政府は地下鉄網の拡張に多くの努力を注いでいる。近年完了した2003年-2007年計画では、エスペランサ・アギーレマドリード自治州首相は、路線の新設と既存路線のほとんど全ての拡張工事に数百万ドル規模のプロジェクトを実施した。このプロジェクトには90 キロメートルに上る新線と80の新駅建設が含まれている。この計画により、それまで地下鉄が通じていなかった多くの地域、ビジャベルデ(Villaverde)、マノテーラス(Manoteras)、カラバンチェル・アルト(Carabanchel Alto)、ラ・エリーパ(La Elipa)、ピナール・デ・チャマルティン(Pinar de Chamartín)などへ地下鉄を開通させ、東や北の郊外地区、コスラーダ、サン・フェルナンド・デ・エナーレス(San Fernando de Henares)、アルコベンダス、サン・セバスティアン・デ・ロス・レージェスにも地下鉄網が延びた。マドリードでは初めて、3つのライトレールも建設され、西側郊外のポスエロ・デ・アラルコン(Pozuelo de Alarcón)、ボアディージャ・デル・モンテ(Boadilla del Monte)へmL2、mL3、北側の郊外のサンチナーロ(Sanchinarro)とラス・タブラス(Las Tablas)へmL1が開業した。mLはMetro Ligero(メトロ・リヘーロ)の略である。最も近年の拡張としては、マドリード・バラハス空港T4(ターミナル4)の8号線の接続がある。
6号線 アベニーダ・デ・アメリカ駅(Avenida de América)、マヌエル・ベセーラ駅(Manuel Becerra)、サインス・デ・バランダ駅(Sáinz de Baranda)、パシフィコ駅(Pacífico)、プラザ・エリプティカ駅(Plaza Elíptica)、オポルト駅(Oporto)、ラグーナ駅(Laguna)
7号線 アベニーダ・デ・アメリカ駅(Avenida de América)、プエブロ・ヌエボ駅(Pueblo Nuevo)
路線間で素早く乗換ができるように、対面乗り換えができる設備を備えている駅もある。この配置になっているのはプリンシペ・ピオ駅(Príncipe Pío、)とカサ・デ・カンポ駅(Casa de Campo、)である。どちらの駅でも、10号線が外側の線路を使っており、このためこの駅に到着する旅客は通常の左側のドアではなく、右側のドアを使う。
マドリードの地下鉄には12の路線と1つの支線、282 キロメートルの路線に231の駅がある。地上を走行するのは、5号線のカンパメント駅(Campamento) - エウヘニア・デ・モンティホ駅(Eugenia de Montijo)、10号線のラゴ駅(Lago) - カサ・デ・カンポ駅(Casa de Campo)、9号線のプエルタ・デ・アルガンダ駅(Puerta de Arganda) - アルガンダ・デル・レイ駅(Arganda del Rey)である。これに加えて、メトロ・リヘーロ(Metro Ligero)と呼ばれる30 キロメートルほどのライトレールが、非常に費用のかかる地下鉄新線を建設するほど人口が多くないと思われる多くの地域で営業している。ほとんどのメトロ・リヘロの路線は地上を走行しており、道路交通から分離された専用軌道を走行する。しかしながらmL1には地下の区間と地下駅が存在する。もともとは、マドリード地下鉄は市域内に制限されていたが、現代ではおよそ3分の1の区間はマドリード市域の外側で運行されている。今日、地下鉄網は以下の6地域に分割されている。
メトロスール(MetroSur、ゾーンB1、B2)、12号線と10号線の最後の2駅、ホアキン・ビルムブラーレス駅(Joaquín Vilumbrales)とプエルタ・デル・スール駅(Puerta del Sur)。南部のアルコルコン、レガネス、ヘタフェ、フエンラブラーダ、モストレスの町を走行する。
メトロエステ(MetroEste、ゾーンB1)、7号線のエスタディオ・オリンピコ駅(Estadio Olímpico)からホスピタル・デ・エナーレス駅(Hospital de Henares)の間で、コスラダ、サン・フェルナンド・デ・エナレス(San Fernando de Henares)の町を走行する。
メトロノルテ(MetroNorte、ゾーンB1)、2007年に開業した、10号線のラ・グランハ駅(La Granja)からホスピタル・デル・ノルテ駅(Hospital del Norte)の区間。マドリード北部郊外とアルコベンダス、サン・セバスティアン・デ・ロス・レージェスの町を走行する。トレス・オリーボス駅(Tres Olivos)で都心側の路線と乗り換える。
メトロオエステ(MetroOeste、ゾーンB1、B2)、メトロリヘーロの2号線、3号線で構成される。ポスエロ・デ・アラルコン(Pozuelo de Alarcón)とボアディージャ・デル・モンテ(Boadilla del Monte)の町を10号線との乗換駅、コロニア・ハルディン駅(Colonia Jardín)まで結ぶ。
TFM(ゾーンB1、B2、B3)、9号線のプエルタ・デ・アルガンダ駅(Puerta de Arganda)以遠の、マドリード市域を最初に越えて営業した区間。リバス=バシアマドリード(Rivas-Vacíamadrid)とアルガンダ・デル・レイ(Arganda del Rey)の町を結ぶ。
この形式は29編成が製造されて1998年に投入された[9]。CAFによって製造された中で丸くなったデザインを採用した最初の形式である。9号線のマドリードからアルガンダ・デル・レイへの延長区間であるTFMへ投入される計画で製造されたため、内装は他の地下鉄の列車に比べて近郊列車のセルカニアスに似ており、2列のコンパクトな座席が線路と垂直方向に配置され、急な加減速に備えて多くの持ち手があるなどといった特徴がある。また路線が2つの区間に分割されていて、プエルタ・デ・アルガンダ駅(Puerta de Arganda)で乗り換える必要があることから、目的地を表示する発光パネルを初めて備えている。CAF3000系のように連節構造となっているが、編成は4両または6両で構成されているのに対して2両間でのみ通行可能な通路がある。6000系は現在9号線の主力として用いられているが、一部は先述のCAF5000系の代替としてブエノスアイレス地下鉄に輸出されている。
アンサルドブレーダ7000系/9000系
7000系は、CAF以外、またスペイン以外のメーカーから初めて購入された形式で、37編成が特に需要の多い10号線に投入され、またラッシュ時に6号線の支援に使われることもたまにある。編成を通じて全て連節構造となっている最初の形式で、6両の間を通行することができる。1.3 メートル幅の十分余裕のあるドア、滑らかで控えめなデザインで、1編成あたり1,260人(うち座席180人)の定員のとても機能的な形式である。この形式は、各車両に2台ずつテレビモニタを備えているが、通常時も緊急時も使用されないままとなっている。9000系はこれとよく似ているが、バリアフリー対策が改善されており、また安全関係の改良がされている。例えばドアの開閉の視覚・聴覚警告装置が取り付けられていたり、より効率的な非常ブレーキになっていたりする。7000系は10号線の主要区間、プエルタ・デル・スール駅(Puerta del Sur)とトレス・オリボス駅(Tres Olivos)間で使用されており、一方9000系は7号線の主力で、また10号線のトレス・オリボス駅とホスピタル・デル・ノルテ駅(Hospital del Norte)間でも用いられ、たまに9号線のラッシュ時の支援に用いられる。2009年までに次の編成が6号線に投入されて、15年使用されてきたCAF5000系を置き換える予定である。
また、Consorcio Regional de Transportes(Regional Transportation Authority、地域運輸当局)は、AからC2までの地理的に区分けしたゾーンを定めている(右の図を参照)。この当局は、指定されたゾーン内で1月または1年無制限に乗車できるパスを発売している。また旅行者向けの1日、3日、5日または7日使えるパスも発売している。これらのパスはゾーン内の地下鉄駅で使うことができ、また空港の加算金を払う必要が無い。
乗車券の詳細一覧表
乗車券
有効ゾーン
有効期間
価格
MetroX Sencillo
特定ゾーン内
1乗車
1ユーロ
METRO ZONA A
Zone A および Metro Ligero (ML1)
1乗車
最低で1.5ユーロ、駅により最高2ユーロで発売
Metrobús
マドリード地下鉄とEMTバス
10乗車
6.70ユーロ
MetroX 10 viajes
特定ゾーン内
Sencillo Combinado
地下鉄網全体
1乗車
1.75ユーロ
Abono Transportes Joven
A - C2(21歳未満)
1ヶ月
26.3ユーロ - 46.4ユーロ
Abono Transportes Normal
A - C2
40.45ユーロ - 73.60ユーロ
Abono Transportes 3ª Edad
A - C2 (65歳超)
10.15ユーロ
Abono Transportes Annual Normal
A - C2
1年
444.95ユーロ - 809.60ユーロ
Abono Transportes Annual 3ª Edad
A - C2 (65歳超)
111.65ユーロ
Abono Turístico
A
1 - 7日
3.80ユーロ - 19.80ユーロ
Abono Turístico
T (地域運輸当局の全てのゾーン)
7.60ユーロ - 39.60ユーロ
事業者
マドリード地下鉄は、一部の区間を除くマドリード州の公共事業・都市計画・交通省傘下の会社が運営している。9号線のプエルタ・デ・アルガンダ駅とアルガンダ・デル・レイ駅の間はTransportes Ferroviarios de Madrid(TFM)が運営している。マドリードの全ての公共交通機関は地域運輸連合の一員である。