「マッカーサー・パーク」(MacArthur Park)は、アメリカのシンガーソングライターであるジミー・ウェッブによって書かれた曲で、1968年にアイルランド出身の俳優・歌手、リチャード・ハリスが歌った最初のバージョンが全米2位・全英4位を記録。1978年にドナ・サマーが全米1位を記録したディスコバージョンなど、数多くのアーティストによってカバーされている。
概要
「マッカーサー・パーク」は、1967年の夏から秋にかけて当時21歳のジミー・ウェッブによって作詞・作曲された。
この曲は、1965年にウェッブが交際していたガールフレンドのスーザン・ホートンとの関係そして離別が題材になっている。ロサンゼルスのマッカーサー公園は、彼女が勤めていた会社の事務所の向かいにあり、二人がときどき昼食のために会い、ともに楽しい時間を過ごした場所だった[1]。2014年10月のNewsdayのインタビューにおいて、ウェッブは次のように説明している。
歌詞に出てくるものはすべて目にしたものであり、創作ではない。木のそばで
チェッカーをしている老人たち、雨の中に放置されていたケーキ、曲の中で語られているあらゆるものは実際に私が見たものばかりだ。だからこれは、マッカーサー公園で起きていた恋愛を総括したある種の音楽的なコラージュといえる。(中略)曲を書いているとき、私は感情的な機械のようになって、自分の中に湧き上がってきたものがピアノを介して譜面に飛び込んできた。
[2]。
1967年の秋、フィフス・ディメンションのセカンドアルバム『マジック・ガーデン』の制作に携わっていたウェッブは、当初「カンタータ(Cantata)」と呼んでいた本曲をアソシエイションに歌ってもらおうと、フィフス・ディメンションとアソシエイションのプロデューサーだったボーンズ・ハウに話を持ち掛けた。ハウはこの曲を気に入り、ウェッブはアソシエイションのメンバーの前でこの曲を披露したが、自分たちの書いた曲以外はレコーディングしたくないと考えていたメンバーたちによってこの提案は却下された[1][3]。
その後、ロサンゼルスで開催されていたイベントでピアノを演奏していたウェッブは、映画『キャメロット』で主役のアーサー王を演じていたアイルランド出身の俳優リチャード・ハリスと出会う。二人は意気投合し、その際にハリスがウェッブに対してレコード制作の協力を依頼した。ウェッブはそのことを真剣に受け止めていなかったが、その数週間後、イギリスに帰国していたハリスから「ロンドンへ来てくれ。一緒にレコードを作ろう」という電報を受け取り、ウェッブはロンドンに向かうことになった。ロンドンでは、ハリスがどのような曲を歌いたいのか、ウェッブはハリスの前で自作の楽曲を次々とピアノで演奏してみせたものの、ハリスが気に入るものはなかった。困り果てたウェッブが最終的にハリスに提示した曲が「カンタータ」だった。この曲を聞いたハリスはピアノを叩き、「気に入った。この曲をヒットさせてみせる」と叫んだ[1][3][4]。
帰国したウェッブは、ハリウッドのサウンド・レコーダーズ・スタジオにハル・ブレイン(ドラムス)をはじめとするレッキング・クルーのメンバーを集めてベーシックトラックのレコーディングを行った。ハープシコードの演奏はウェッブ自身によるものである。ハリスのボーカルはロンドンのスタジオで録音された[3][4]。
「マッカーサー・パーク」というタイトルが付いたこの曲は、ポップスの楽曲といえば2~3分が標準だった時代に7分21秒という長さ、難解な歌詞、音楽的に複雑な構成、そしてハリスのボーカリストとしての実績がなかったため、レコード会社に売り込みにくい曲だった。実際、いくつかのレーベルに断わられている。最終的には、ダンヒル・レコードのルー・アドラーがシングルとアルバムの制作に同意し、「マッカーサー・パーク」はアルバムに先駆けて1968年4月にリリースされた[5]。
全米チャートにおいて1968年5月11日付で79位に初登場し、6月22日付で最高2位を記録した(この週の1位は、ハーブ・アルパートの「ディス・ガイ」)[6][7]。全英チャートでは最高4位(2週)を記録[8]。翌1969年には第11回グラミー賞の最優秀アレンジメント・インストゥルメンタル・アンド・ボーカル賞を受賞した。
ジョージ・マーティンは、「マッカーサー・パーク」の影響でビートルズの「ヘイ・ジュード」は7分を超える作品になった、とウェッブに語っている[4]。
カバー・バージョン
ドナ・サマーによるカバー
1978年9月、アメリカの歌手ドナ・サマーは、ジョルジオ・モロダーとピート・ベロッテ(英語版)のプロデュースによる「マッカーサー・パーク」のディスコバージョンをシングルでリリースし、全米チャートにおいて同年11月11日から3週間にわたって1位を記録した[9]。彼女は、この曲で第21回グラミー賞の最優秀女性ポップボーカルパフォーマンス賞にノミネートされた。また、この曲が収録されたアルバム『Live and More(邦題:ベスト・オブ・ドナ・サマー~ライヴ・アンド・モア)』はアメリカン・ミュージック・アワードの最優秀ディスコアルバム賞を受賞した。
その他のアーティストによるカバー
出典