『マイヤーリング』(Mayerling)は、1957年のアメリカ合衆国のテレビ映画。主演は当時夫婦だったオードリー・ヘプバーンとメル・ファーラー。
1957年2月4日[2]に米NBCのテレビ番組『プロデューサーズ・ショーケース(英語版)』の1本として1度だけ全米で生放送された[3]。その後、長く「幻の作品」とされていたが、ブラウン管に映し出される生放送の映像を(フィルムの)映画に記録するという、当時の録画技術の機械(キネコ)で保存されたモノクロ映像(放送時はカラー)をデジタル技術によって復元した白黒映画が、2014年1月4日から日本で劇場公開された[4]。
1889年に起きたオーストリア=ハンガリー帝国の皇太子ルドルフと男爵令嬢マリー・ヴェッツェラの心中事件(マイヤーリンク事件)を題材にしたクロード・アネ(フランス語版)の小説『うたかたの恋』(1930年)を原作としている。アナトール・リトヴァク監督にとって同原作の映像化は1936年の『うたかたの恋』以来2度目となる。
ストーリー
オーストリア=ハンガリー帝国は皇帝フランツ・ヨーゼフ1世の統治下、大国として繁栄を誇っていた。その息子のルドルフ皇太子は、父が決めた政略結婚への不満から何人もの女性と浮き名を流していたが、ある日、17歳の清楚な令嬢マリーと運命の恋に落ちる。2人は人目を忍んで密会を続けるが、妻子ある皇太子と厳格な男爵家のマリーの恋は皇帝によって強引に引き裂かれることとなる。
思いつめたルドルフはマリーとともにマイヤーリング(英語版)[注 1]の狩猟館で一夜を過ごすと、眠るマリーを射殺し、同じ銃で自ら命を絶つ。
キャスト
エピソード
- セットは18[6]とも30[7]とも言われ、出演者の合計150人、ライブ放送のためヘプバーンは90分の放送枠の間に11回も衣装を替えるという多忙さだった[6]。
- ヘプバーンの出演料は12万5000ドル(当時の4500万円)[6]。全体の制作費は50万ドルから60万ドルと推定されていた[6][8]。1分間で当時の200万円〜300万円ほど掛かっている[9][10]。
- 『プロデューサーズ・ショーケース』の作品としては、2年前の『ピーターパン』以来の最高の視聴率を取った[11]。
- この作品の原作を書いたクロード・アネは、ヘプバーンが『マイヤーリング』の前に撮影していた『昼下りの情事』でも原作者であった[11]。
- ヘプバーンは1957年は一切仕事をしないと公言したため、この『マイヤーリング』が唯一の仕事となった[12]。
脚注
注釈
- ^ 「マイヤーリング」は英語発音のカナ表記。本来のドイツ語発音では「マイエルリンク」または「マイヤーリンク」の表記が近い[5]。
出典
- ^ «Chef Milani Feted at Luncheon; Big Cast for 'Mayerling'» Ames, Walter. Los Angeles Times [Los Angeles, Calif] 4. Feb 1957: A8.
- ^ “イントロダクション”. 【公式サイト】映画『マイヤーリング』. 2014年4月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年4月20日閲覧。
- ^ “マイヤーリング”. KINENOTE. 2014年1月4日閲覧。
- ^ “マイヤーリング”. allcinema. 2021年3月2日閲覧。
- ^ “「Mayerling」の意味や使い方 わかりやすく解説”. Weblio辞書. 2024年9月15日閲覧。
- ^ a b c d 『映画の友』1957年6月号(4月発売)p116、p117. 映画世界社
- ^ イアン・ウッドワード『オードリーの愛と真実』日本文芸社、1993年12月25日初版発行、218頁。
- ^ 『マイヤーリング』劇場公開時のパンフレットでは、当時の放送当日のプロダクション予算表が載っており、そこでは$506,396.77と書かれている。
- ^ 『マイヤーリング メモリアル・コレクション』池田昌子 音声解説. パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン. (2014年4月16日発売)
- ^ 『マイヤーリング』劇場パンフレット. ブロードメディア・スタジオ. (2014年1月4日発行)
- ^ a b バリー・パリス『オードリー・ヘップバーン 上巻』集英社、1998年5月4日初版発行、288頁。
- ^ イアン・ウッドワード『『オードリーの愛と真実』』日本文芸社、1993年12月25日初版発行、217-219頁。
関連項目
外部リンク