ペコス川(ペコスがわ、英語: Pecos River, スペイン語: Río Pecos)は、アメリカ合衆国のニューメキシコ州とテキサス州を流れる河川。リオ・グランデ川の支流で、ニューメキシコ州の東部とテキサス州の西部を流れる。
名称はネイティブアメリカンの用語「ペコス・プエブロ」に由来する[1]。メスカレロ族(英語版)による古称としてリオ・ナタゲス(Río Natagés)の名がある[2]。
ニューメキシコ州北部にあるモラ郡南西のサングレ・デ・クリスト山脈ドルチャス山南部を源流とし、サンタローザ(英語版)を経て南東または南へ流れ、サムナー湖(英語版)を経てフォートサムナーとロズウェルを通過。サクラメント山脈からの支流を合わせながら、カールズバッドの南でテキサス州に入る。レッド・ブラフ貯水池(英語版)を抜け、リーブス郡ペコス(英語版)およびペコス郡を通り、テキサス州南西部のバルベルデ郡(デル・リオの北西約60km)でリオ・グランデ川に合流する[3][4][5]。
中流のニューメキシコ州に建設されたサムナーダム(英語版)、マクミランダム、アヴァロンダム(英語版)は灌漑用のダムで、1906年からのカールズバッド開拓計画に利用され、101km2を潤している[3]。マクミランダムは1987年に後継となるブラントリーダム(英語版)に置き換わっている。
川の東方にはリャノ・エスタカード、エドワーズ高原(英語版)といったグレートプレーンズが広がっている[4]。
中流部のチャベス郡ロズウェル付近のビター湖国定鳥獣保護区(英語版)とボトムレス湖群州立公園(英語版)を含む一帯は自噴による湧水やシンクホールの湖が多く、Pyrgulopsis roswellensis(英語版)、Tryonia kosteri(英語版)、Gammarus desperatus(英語版)などの固有種の無脊椎動物、カナダヅルなどの渡り鳥および多くのトンボとイトトンボが生息している。2010年に「ロズウェルの自噴湿地群」としてラムサール条約登録地となった[6]。
ペコス川の水利を巡っては長年にわたりニューメキシコ州とテキサス州の間に争いがあり、1949年に連邦政府が調停にあたった末、協定を結び決着している[3]。
テキサス州西部の牧場が全盛期を迎えた時代、その中でも西端に位置するペコス川よりも西の地域は「ペコスの西」("West of the Pecos")と呼ばれ、未開の荒々しい地域をさす語とされた[3]。ここから「ダッジの西に法はなく、ペコスの西に神はない」("There's no law west of Dodge, and no God west of the Pecos")といった西部劇の譬えが生まれ(West Texas参照)、『ロイ・ビーン』、『チザム』といった当地を舞台とした作品にそのような土地柄がみられる。
ワークブーツの一種である「ペコスブーツ」の名称はペコス川に由来し、もとはペコス川流域の農場や牧場の労働者向けに開発されたブーツであったことによる。レッドウィングの商標だったが、後に一般名詞化した[7][8]。
野球の独立リーグ「ペコス・リーグ」もペコス川に由来する[9]。