ベア級カッター(ベアきゅうカッター、英語: Bear-class cutters)は、アメリカ沿岸警備隊の中距離用カッター(英語: Medium Endurance Cutter, WMEC)の艦級。本級の艦名は、いずれも著名なカッターからとられていることから、ジェーン海軍年鑑やアメリカ海軍協会(USNI)ではフェイマス型(Famous-class)と称される。1977年度計画で建造が開始され、1983年より13隻が順次に就役した[1][2][3][4]。
来歴
本級はもともと、1930年代に建造されたトレジャリー型(英語版)の更新用として計画された。1977~1979年度計画で2隻ずつ、1980年度計画で3隻、1981年度計画で1隻、1982年度計画で3隻が発注された。このうち、1979年度以降の建造分については、1980年8月29日に一度はタコマ造船所が受注したものの、デレクター造船所が不服を訴えて提訴したことから、1981年1月17日に同造船所が受注し直す騒ぎとなり、計画の遅延を来した[3][4]。
設計
船型は長船首楼型を採用した。大西洋の過酷な海況でも活動できることが求められたことから、L/B比が類を見ないほど小さい幅広の船体となっている[3]。ただし排水量のわりに過積載であり、当初は耐航性に問題があり、青波による破損を避けるため、31番砲は0.76メートル嵩上げされた[1]。また減揺装置としてフィンスタビライザーを後日装備している[4]。
主機としては、リライアンス級(210フィート級)の後期建造艦と同系統で、気筒数をV型18気筒に増やしたアルコ18V-251ディーゼルエンジンを搭載した[1][3][4]。
電源としてはキャタピラーD398ディーゼルエンジンを原動機とするKATO社製の発電機(出力475キロワット)3基を備えている[4]。
装備
本級は、沿岸警備隊の艦艇としては初めて、建造された当初より統合された指揮管制システムを備えており、戦術情報処理装置としてSCCS-270(Shipboard Command Control System)、統合化船橋システムとしてCOMDAC(Command Display and Control)を備えている。SCCS-270はJMCISの技術に準拠して、フリゲート統合艦載戦術システムと同様に民生用のコンピュータを利用して構築されている。武器管制機能とは連接されていないものの、リンク 11による戦術データ・リンクに対応するほか、1992年より、海軍の衛星通信システムであるOTCIXSにも対応した[3][5]。
艦砲としては、艦首に62口径76mm単装速射砲(Mk.75; オート・メラーラ 76mmコンパット砲)を装備し、Mk.92 mod.1 砲射撃指揮装置による管制を受けた。これは1973年度計画より建造を開始した海軍のオリバー・ハザード・ペリー級ミサイルフリゲートに準じた構成であり、後にはより大型のハミルトン級カッターにも近代化改装の際に搭載された[3]。また近距離用として、小火器用のピントルマウント6ヶ所が配置されており、M2 12.7mm機銃またはMk.19 40mm自動擲弾銃を搭載できる[1][4]。
電子戦装備としては、電子戦支援用としてAN/SLQ-32(V)1電波探知装置(後に(V)2に更新)、電子攻撃用としてMk.137 6連装デコイ発射機2基を備えている[1][3][4]。
船楼甲板後半部はヘリコプター甲板とされており、伸縮式の格納庫には中型ヘリコプター1機を収容できる。なお本級は、ヘリコプターの搭載能力を持つ唯一の中距離カッターであった[3]。
また、有事にはファランクス 20mmCIWSとハープーン艦対艦ミサイル(SSM)の4連装発射筒2基を搭載する余地が確保されていた。固有の対潜兵器は備えられていないものの、航空艤装はSH-60B LAMPS Mk.IIIヘリコプターの運用に対応可能であった。このことから、1988年には、「エスカナーバ」にAN/SQR-18戦術曳航ソナー(TACTASS)とLAMPS用データ・リンク、AN/SQR-17ソナー情報処置装置が搭載され、対潜護衛艦としての改装・運用試験が行われた[2]。ただし冷戦終結を受けて、これらの追加武装の計画は放棄されたものと見られている[3][4]。
同型艦
WMEC-910「セティス」
「和星」(台湾1,800t型)
なお、中華民国の海巡署は、本級の設計を元に、艦載機運用能力とバーターで高速艇4隻を搭載した巡視船として1,800t型巡防救難艦を建造しており、「和星」(CG101 Ho Hsing)、「偉星」(CG102 Wei Hsing)の2隻を配備している。
参考文献
関連項目
ウィキメディア・コモンズには、
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