ビリー・ポーター(ウィリアム・エリス・ポーター2世、William Ellis Porter II)、1969年9月21日 - )は、アメリカ合衆国の俳優、歌手[1][2]。
ポーターはブロードウェイでのパフォーマンスで注目を集め、その後、歌手や俳優としてソロのキャリアをスタートさせた[3]。
ポーターは、『キンキーブーツ』のローラ役で2013年のトニー賞 ミュージカル主演男優賞を受賞。 この役ではミュージカル主演男優賞のドラマデスク賞とミュージカル主演男優賞のアウター批評家サークル賞も受賞。2014年には『キンキーブーツ』でグラミー賞最優秀ミュージカル・シアター・アルバム賞を受賞している。
近年ではテレビシリーズ「POSE/ポーズ」の全3シーズンに出演。ゴールデングローブ賞に3部門でノミネートされた。2019年のプライムタイム・エミー賞ではドラマシリーズ主演男優賞を受賞。プライムタイム・エミー賞では主演男優部門にノミネートされ、ゲイの黒人男性としては初めての受賞となった[4] 。
2020年には、タイム誌の「世界で最も影響力のある100人」に選ばれた[5]。2022年には、ミュージカル『A Strange Loop』のプロデューサーとしてトニー賞ミュージカル作品賞を受賞。2022年にロマンティック・コメディ映画『エニシング・イズ・ポッシブル』で監督デビューしている。
生い立ち
ペンシルベニア州ピッツバーグ生まれ。父はウィリアム・エリス・ポーター、母はクロエリンダ・ジーン・ジョンソン・ポーター・フォード。妹はメアリー・マーサ・E・フォード[6][7][8]。彼は「非常に信心深い」ペンテコステ派(プロテスタントの一派)の家庭で育った。小さい頃より女性的なところがあり、それを心配した母に医者に連れていたこともある[9][10][11][12]実の父親は彼が小さいときに家を出て行っている。[13]。7歳から12歳の間に継父から性的虐待を受けたと語っている。
ライゼンシュタイン中学校を経て、1987年にアルダーダイス高校とピッツバーグ・クリエイティブ・アンド・パフォーミング・アーツ・スクールを卒業。1991年にカーネギーメロン大学芸術学部演劇学科を卒業し[14]、UCLAの大学院レベルの脚本プロフェッショナル・プログラムで資格を取得[15]。
1985年から1987年の夏にかけては、エンターテイメント・グループ「スピリット」と「フラッシュ」のメンバーとして、ピッツバーグ地域の遊園地ケニーウッドで日々公演を行っていた[16]。
経歴
俳優活動
キャリア初期
ポーターは1992年にアメリカのタレント番組『Star Search』に出演し、10万ドルを獲得。この番組には若き日のブリトニー・スピアーズなども出演していた[17]。
その後ポーターは、1994年にブロードウェイで再演された『グリース』でティーン・エンジェルを演じた。その他の出演作には、シティ・シアターの『Topdog/Underdog』(2004年)[18]、ピッツバーグ・シビック・ライト・オペラの『ジーザス・クライスト・スーパースター』と『ドリームガールズ』(2004年)[19]、歌曲集『Myths and Hymns』と『Songs for a New World』(オフ・ブロードウェイ、1995年)などがある[20]。
2005年2月と3月にはニューヨークのJoe's Pubで一人芝居の自伝的ショー『Ghetto Superstar (The Man That I Am)』を上演した。これにより 第17回GLAADメディア賞では「ブロードウェイ&オフブロードウェイ賞」にノミネートされた[21][22][23]。
2010年以降
2010年9月、ポーターはシグネチャー・シアター・カンパニーのトニー・クシュナーの『エンジェルス・イン・アメリカ』20周年記念作品にベリーズ役で出演した[24][25]。
2013年にブロードウェイミュージカル『キンキーブーツ』の「ローラ」役をオリジナルキャストとして演じた。キンキーブーツは音楽・作詞をシンディ・ローパー、脚本をハーヴェイ・フィアースタイン、演出・振付をジェリー・ミッチェルが手がけている[26]。ポーターはこの役で2013年のドラマ・デスク・アワードミュージカル男優賞[27]とトニー賞 ミュージカル主演男優賞の両方を受賞した[28]。彼はこの役を演じたことで、今まで自分を束縛していた有害な男らしさの呪縛から解き放たれ、自分自身を表現できるようになったと述べている[29]。
ポーターは多くの映画にも出演している。『オリバー・ツイスト』を映画化したセス・マイケル・ドンスキー監督の『Twisted』(1997年)では、エンジェル(デヴィッド・ノローナ)とリー(キーヴィン・マクニール・グレイヴス)と親しくなるドラァグクイーンのシニークア役で主要な役を演じた[30]。ドラァグクイーンのル・ポール司会のトーク番組『ルポールショー』にも出演している。
近年
歌手活動
1997年に『Untitled』(DV8/A&Mレコード)、2005年に『At the Corner of Broadway + Soul』(Sh-K-Boomレコード)、2014年に『Billy's Back on Broadway』(Concord Music Group)と3枚のソロアルバムをリリース[31]。2005年にはヒューマン・ライツ・キャンペーンのコンピレーション・アルバム『Love Rocks』に収録された「Only One Road」をカヴァーしている[32]。また、2006年にはトリビュート・アルバム『It's Only Life』にも数曲参加している[33]。
脚本家活動
ポーターが脚本を手がけた『While I Yet Live』は、2014年9月にプライマリー・ステージズでオフ・ブロードウェイ初演され、10月12日にプレビュー上演された。ポーターのほか、リリアス・ホワイト、S・エパサ・マーカーソンらが出演した。ポーターはインタビューでこの舞台について、「これは、母、姉、そして私を育ててくれた女性たちへのラブレターです。ゲイであり、黒人であり、クリスチャンであり、虐待のサバイバーである私自身の人生経験を振り返り、家族、信仰、そして赦しの癒しの力という、人生を前進させ、変化させるためにとても必要な3つのことをテーマにした芝居を書きたかったんです。変化は可能、でもそれには忍耐が必要。」と述べている[34]。
脚注
- ^ “Billy Porter | Actor, Producer, Director” (英語). IMDb. 2023年11月25日閲覧。
- ^ “Billy Porter - Flair Magazine” (英語). 2023年11月25日閲覧。
- ^ “Family Celebrates Billy Porter's Tony Award Win - CBS Pittsburgh” (英語). www.cbsnews.com (2013年6月10日). 2023年11月25日閲覧。
- ^ “Billy Porter makes peace with himself: 'I set myself free, honey. No more secrets'”. 2023年11月25日閲覧。
- ^ “Billy Porter: The 100 Most Influential People of 2020” (英語). Time (2020年9月23日). 2023年11月25日閲覧。
- ^ “Celebrating Billy Porter | New Pittsburgh Courier”. web.archive.org (2018年6月12日). 2023年11月27日閲覧。
- ^ Petrarca, Emilia (2019年5月1日). “The Realness of Billy Porter” (英語). The Cut. 2023年11月27日閲覧。
- ^ “'Pose' Star Billy Porter Reveals Past Sexual Abuse in Searing Op-Ed” (英語). www.out.com. 2023年11月27日閲覧。
- ^ “Billy Porter makes peace with himself: 'I set myself free, honey. No more secrets'”. 20231127閲覧。
- ^ “Billy Porter |”. web.archive.org (2018年6月12日). 2023年11月25日閲覧。
- ^ “Tony Awards Acceptance Speeches From Billy Porter, Patina Miller, Cyndi Lauper, Andrea Martin, Judith Light and More”. 2023年11月25日閲覧。
- ^ Rose, Billy Porter as told to Lacey (2021年5月19日). “Billy Porter Breaks a 14-Year Silence: “This Is What HIV-Positive Looks Like Now”” (英語). The Hollywood Reporter. 2023年11月27日閲覧。
- ^ Petrarca, Emilia (2019年5月1日). “The Realness of Billy Porter” (英語). The Cut. 2023年11月27日閲覧。
- ^ “Billy Porter's Biography” (英語). The HistoryMakers. 2023年11月27日閲覧。
- ^ “UCLA Professional Programs”. web.archive.org (2013年12月4日). 2023年11月27日閲覧。
- ^ “My First Tony Award Nomination - TheaterMania.com” (英語) (2013年5月27日). 2023年11月27日閲覧。
- ^ “Watch 'Pose' star Billy Porter win $100k on 'Star Search' and leave host Ed McMahon hanging” (英語). EW.com. 2023年11月27日閲覧。
- ^ “Home - Pittsburgh Post-Gazette”. web.archive.org (2016年8月9日). 2023年11月27日閲覧。
- ^ “Norm Lewis and Billy Porter Woo Dreamgirls, Including Frenchie Davis, in Pittsburgh Aug. 10-22”. 20231127閲覧。
- ^ “Billy Porter”. www.iobdb.com. 2023年11月27日閲覧。
- ^ “Billy Porter”. www.iobdb.com. 2023年11月27日閲覧。
- ^ “Ghetto Superstar, a CurtainUp review”. www.curtainup.com. 2023年11月27日閲覧。
- ^ “Talkin' Broadway Off-Broadway - Ghetto Superstar (The Man That I Am) - 3/6/05”. www.talkinbroadway.com. 2023年11月27日閲覧。
- ^ “Billy Porter”. www.iobdb.com. 2023年12月1日閲覧。
- ^ “Signature Theatre Company: Announcing the Cast of ANGELS IN AMERICA”. Signature Theatre Company (2010年6月22日). 2023年12月1日閲覧。
- ^ SpotCo. “Kinky Boots The Musical” (英語). Kinky Boots The Musical. 2023年12月1日閲覧。
- ^ “Drama Desk 2013 Winners – theaterlife” (英語) (2013年5月20日). 2023年12月1日閲覧。
- ^ “Tony award winners 2013 – the full list” (英語). The Guardian. (2013年6月10日). ISSN 0261-3077. https://www.theguardian.com/stage/2013/jun/10/tony-awards-2013-winners-full-list 2023年12月1日閲覧。
- ^ America, Good Morning. “'Like A Boss' star and fashion icon Billy Porter says he's 'breaking free' from 'toxic masculinity'” (英語). Good Morning America. 2023年11月25日閲覧。
- ^ Thomas, Kevin (1997年12月12日). “A 'Twisted' Tale of Souls Rising Above Corruption” (英語). Los Angeles Times. 2023年12月1日閲覧。
- ^ “Billy Porter” (英語). Discogs. 2023年12月3日閲覧。
- ^ (英語) Various - Love Rocks, (2005), https://www.discogs.com/release/8597863-Various-Love-Rocks 2023年12月3日閲覧。
- ^ “It's Only Life Synopsis - Broadway musical” (英語). www.allmusicals.com. 2023年12月3日閲覧。
- ^ “Billy Porter's While I Yet Live, with Lillias White and S. Epatha Merkerson, Premieres Off-Broadway”. 20231203閲覧。