ビタミンC誘導体

ビタミンC誘導体(ビタミンシーゆうどうたい、Vitamin C Derivatives)とは、ビタミンC(L-アスコルビン酸)を改良した誘導体。またプロビタミンCは、生体内で酵素反応によりビタミンC(L-アスコルビン酸)となるもの[1]。ビタミンCは強い抗酸化作用があるが不安定で分子構造が壊れやすい。そのため、ビタミンC誘導体では物質として安定化したり(分解しにくい)、皮膚への吸収性や皮膚乾燥の副作用を改良している。1940年代には食品添加物として利用され1960年代には美容目的に使用されるようになり色素沈着抑制[2]、ニキビなどに使用される。日本で医薬部外品として認可された美白有効成分には複数のビタミンC誘導体が含まれる[3]イオン導入[4]ケミカルピーリング後に塗布される[5]

改良

ビタミンCであるL-アスコルビン酸は、水によく溶ける不安定な分子で、皮膚の角質層が水を弾くため皮膚への浸透は不十分であるとされる[6]。アスコルビン酸(ビタミンC)ではpH3.5以下にする必要がある[7]。これは酸性度が強い(皮膚に刺激性がある)。

プロビタミンとは、生体内でビタミンに変換される物質のことで、この場合ビタミンCに変換されればプロビタミンCだが、変換できるか否かは実験条件や動物種によっても異なるため正確に判定することも難しい面がある[1]

ビタミンCの誘導体は、1940年代には脂溶性のものが研究され食品の抗酸化物質として研究された[2]。プロビタミンCは1960年代に使われるようになり、化粧品では、日本でも1962年に美白化粧品を発売し美白原料との印象を消費者に与えた[1]。1961年にイタリアの研究者が、水溶性のアスコルビン酸リン酸マグネシウムを合成し、外用でも壊血病(ビタミンC欠乏症)に効果を発揮した[2]。これは日本でも1967年にはビタミンCの内服に代わって、外用することで色素沈着肝斑(しみ)、雀卵斑(そばかす)を治療できる可能性が報告された[8]。ビタミンCの硫酸エステルは1969年に抽出され最初欧米で水産飼料に使われ、1980年代には化粧品にも配合されたが、1990年代にはほとんど使われなくなった[2]

1990年代には、アスコルビン酸リン酸ナトリウム、アスコルビン酸2-グルコシド (AA-2G) 、オイル状のテトラヘキシルデカン酸アスコルビル (VC-IP)、グリセリン系の誘導体が登場してきた[1]。ビタミンCやアスコルビン酸リン酸マグネシウム、アスコルビン酸リン酸ナトリウムは皮膚を乾燥させる傾向にあるため、パルミチン酸を付加したVC-IPやAPPS、グリセリンを付加したGOVCが登場した[9]

ビタミンC誘導体の種類

水溶性

これらアスコルビルリン酸塩(アスコルビル-2-リン酸塩)は、アスコルビン酸が安定するpKa4.2よりも高い、pH7 まで物質として安定しているが、この物質自体は抗酸化物質ではなく、おそらく生体内ではアルカリホスファターゼによってアスコルビン酸に変換される[11]。物質としての安定性が向上した一方、電化密度が上昇し皮膚からの浸透性は不十分となる[11]
アスコルビン酸リン酸マグネシウムが1961年に合成され、その後より沈殿結晶化しにくく溶解しやすいアスコルビン酸リン酸ナトリウムが登場して広く使われている[2]
アスコルビン酸2-グルコシド (AA-2G) は、光や熱に対し安定しているが代謝によってビタミンCとして作用を発揮するプロビタミンで、日本では医薬部外品美白有効成分、食品添加物として認可されている[12]
ほかの誘導体に比較してビタミンCへの変換が長時間持続する[2]
接触性皮膚炎の複数の症例報告がある[14][15][16][13]

脂溶性

テトラヘキシルデカン酸は表示名で、イソパルミチン酸ともいわれる[17]。VC-IPは、オイル状の液体である[2]。次のパルミチン酸アスコルビルの物質的な不安定性のためにVC-IPが使われるようになった[17]
化粧品及び食品添加物に使われる[17]。AA-Palは、アスコルビン酸を酸化分解から保護しておらず、他の形態よりも物質としての安定性は低い[11]。脂溶性基が追加されていることから皮膚から浸透されやすいと考えられるが、そうではないことを示す研究結果もある[11]
欧米では美容皮膚科で使用されたり[17]、ボディケア製品などに幅広く使用されているが、日本では物質としての安定性の問題から変色を起こすため使用量は少ない[2]

両親媒性

水溶性と油溶性の両方の特性をもつ。

保湿性のあるグリセリンと殺菌性のあるオクタノールが結合している[18]

効能

医薬部外品として美白の効能表示が認可された美白有効成分[3]

ビタミンCエチル、アスコルビン酸グルコシド
リン酸アスコルビルナトリウム、リン酸アスコルビルマグネシウム

イオン導入との相性

ビタミンC、SAP、APPSはマイナスにイオン化するためイオン導入を行うことができる[2]。MAPはマグネシウムのイオン結合が強いため酸性の溶液では一部がイオン化するが、皮膚が弱酸性であるため一部がイオン化していると考えられる[2]。 ビタミンCやMAPでは吸収が増えると肌の乾燥が増加するため、普通肌で2%、乾燥肌で1%までで処方し保湿剤が必要だという報告がある[17]。GO-VCは非イオン性だがイオン導入もできる[18]

VC-IPはイオン導入には適さない[18]

有効性

日本皮膚科学会の2017年のニキビの治療ガイドラインで、VC-IPとMAPは選択肢の一つだが保険の適応がないとする[19]

尋常性痤瘡(ニキビ)の50名でのランダム化比較試験 (RCT) で、5%濃度のSAPの化粧水は、3か月後偽薬よりも有効で、副作用の頻度は偽薬と同じであった[20]。SAPの外用薬は、20人での試験において紫外線A波 (UVA) による皮脂酸化を抑制し、また5%濃度のローションを1日2回塗った60人でのRCTでは3か月後にニキビを予防また治療していることを見出した[21]。RCTにて、水性のSAPと、油性のパルミチン酸アスコルビルの入った乳液は、3か月後に偽薬を使った顔半面よりも皮脂分泌を減少させていた[22]。ニキビの45名(グレードIIからIIIの病変が10-50個)でのRCTで、5%SAPと0.2%レチノールおよび併用を比較し、単体ではそれぞれ1か月で病変数を約20-22%、2か月で約49%減少させ、併用では1か月で約30%、2か月で約63%減少させていた[23]。レチノールの過剰な使用は炎症と日焼けの促進を起こし、SAPではこうした皮膚刺激は少なかった[23]

老人性色素斑(日光黒子、老人性黒子)の27名での二重盲検法の試験で、6%濃度のSAP入りのローションは、半年後にSAP含まないローションよりも有意に日光黒子を改善したが、その程度は弱かった[24]。SAPの後にトラネキサム酸イオン導入すると、皮膚内のSAPの濃度は著しく低下するが、逆の順序では影響がない[4]

肝斑(シミ)に対し、トリクロロ酢酸によるケミカルピーリング単独よりも、MAPを足した方が効果的であった[5]。300名でのRCTで、MAP入りの歯磨き粉の方が歯肉炎の人々の歯肉炎を減らした[25]

11名でのRCTにて画像解析し、朝晩1%濃度のAPPS入りローションを塗布して1か月後、毛包が開いたものである「毛穴」の改善では、よく見える毛穴は21.6%、黒っぽい毛穴は28.5%減少し、この差はAPPSなしのローションに比較して統計的に有意であり、開いた毛穴でも同程度の減少傾向にあったがその差は有意ではなく、期間が短いことが原因だと考えられた[26]。抗シワ製品ガイドラインに準拠し21名で1%のAPPSを使い、半顔は無塗布の上で8週間後、塗布部位に乾燥による小じわと角質水分量の増加が見られた[27]

アスコルビン酸テトラヘキシルデシル (Tetrahexyldecyl Ascorbate)[呼称の出典 11]とビタミンC(アスコルビン酸)を両方含むクリームが光損傷によるシワを改善している[28]

高濃度のアスコルビン酸ナトリウム水溶液(100,500mM)を表面に滴下したヒト培養皮膚にUVB紫外線を照射した結果、細胞の生存率が向上し、紫外線に対するストレスが減少した。同研究ではアスコルビン酸ナトリウムの細胞層への透過量も明らかにされている。[29]またこの研究では紫外線を浴びる前にビタミンCを摂取、塗布した方が効果的であると明らかにした。[30][31]

注釈

  1. ^ a b 池野宏「敏感肌に対するスキンケアとビタミン治療 (特集 皮膚科医による美容とその現状)」『フレグランスジャーナル』第30巻第2号、2002年2月、18-26頁。「リン酸ビタミンC (AP) とは、正確にはリン酸-L-アスコルビン酸Naまたはリン酸-L-アスコルビン酸Mgのことで」 
  2. ^ a b Stamford 2012: "Ascorbyl 2-phosphates, usually formulated as their sodium (SAP) and magnesium (MAP) salts ... Sodium ascorbyl phosphate (SAP) ... Magnesium ascorbyl phosphate (MAP)" また日本語の論文では、アスコルビン酸リン酸マグネシウムの論文と表記されているものが複数あり、ナトリウムの方もこれに合わせる。
  3. ^ Stamford 2012: "ascorbyl 2-glucoside (AA-2G) ... Ascorbyl glucoside (AA-2G)" 日本語の論文では、「アスコルビン酸2-グルコシド」、「アスコルビン酸2グルコシド」「AA-2G」など
  4. ^ アスコルビルエチル Cosmetic-info.jp "表示名称 アスコルビルエチル・・・改正表示名称 3-O-エチルアスコルビン酸・・・INCI 3-O-Ethyl Ascorbic Acid (旧称) ETHYL ASCORBIC ACID"
  5. ^ Stamford 2012: "3-O-ethyl ascorbic acid (EAC)"
  6. ^ 三園武士、山口俊介、橋本悟「油溶性ビタミンC(テトラヘキシルデカン酸アスコルビル)を用いた損傷毛髪の改善」『日本化粧品技術者会誌』第52巻第3号、2018年、205-209頁、doi:10.5107/sccj.52.205。「テトラヘキシルデカン酸アスコルビル;VC-IP」 
  7. ^ Stamford 2012: "tetra-isopalmitoyl ascorbate (VC-IP) ... Ascorbyl tetraisopalmitate (VC-IP)"
  8. ^ Stamford 2012: "ascorbyl 6-palmitate (AA-Pal) ... Ascorbyl palmitate (AA-PAL)"
  9. ^ Stamford 2012: "ascorbic 2-phosphate 6-palmitate (APPS). ... Ascorbyl 2-phosphate 6-palmitate (APPS)"
  10. ^ アプレシエ 昭和電工 :"パルミチン酸アスコルビルリン酸3Na / Trisodium Ascorbyl Palmitate Phosphate L-アスコルビン酸 2-リン酸 6-パルミチン酸 3ナトリウム / trisodium L-ascorbyl 2-phasphate 6-palmitate <化学名>"
  11. ^ アスコルビン酸テトラヘキシルデシル Cosmetic-Info.jp :"INCI Tetrahexyldecyl Ascorbate"

出典

  1. ^ a b c d 伊東忍「百花斉放、プロビタミンCの時代」『フレグランスジャーナル』第43巻第9号、2015年9月、14-19頁。 
  2. ^ a b c d e f g h i j k l 伊東忍「プロビタミンC(13)美白とプロビタミンC : ビタミンC誘導体と色素沈着抑制」『フレグランスジャーナル』第40巻第11号、2012年11月、66-72頁。 
  3. ^ a b Ando H, Matsui MS, Ichihashi M. (2010-6). “Quasi-drugs developed in Japan for the prevention or treatment of hyperpigmentary disorders”. International journal of molecular sciences 11 (6): 2566–2575. doi:10.3390/ijms11062566. PMID 20640168. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/pmid/20640168/. 
  4. ^ a b c 三宅明子、奥村達也、岡本亨「トラネキサム酸とアスコルビン酸リン酸ナトリウムのイオントフォレーシスにおける順序効果」『皮膚の科学』第7巻第4号、2008年、421-427頁、doi:10.11340/skinresearch.7.4_421 
  5. ^ a b Murtaza F, Bangash AR, Khushdil A; et al (2016-7). “Efficacy of Trichloro-Acetic Acid Peel Alone Versus Combined Topical Magnesium Ascorbyl Phosphate for Epidermal Melasma”. Journal of the College of Physicians and Surgeons 26 (7): 557–561. PMID 27504543. 
  6. ^ Firas Al-Niaimi, Nicole Yi Zhen Chiang (2017-7). “Topical Vitamin C and the Skin: Mechanisms of Action and Clinical Applications”. The Journal of clinical and aesthetic dermatology 10 (7): 14–17. PMC 5605218. PMID 29104718. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5605218/. 
  7. ^ S. R. Pinnell, H. Yang, M. Omar; et al (2001-2). “Topical L-ascorbic acid: percutaneous absorption studies”. Dermatologic surgery : official publication for American Society for Dermatologic Surgery [et al.] 27 (2): 137–142. PMID 11207686. 
  8. ^ 竹内勝、麻生和雄、川瀬健二、市川浩「20.皮ふ科領域におけるビタミンCの研究 : (VI)安定型ビタミンC軟膏の経皮吸収と臨床的応用(一般研究発表要旨)」『ビタミン』第35巻第6号、1967年、502頁、doi:10.20632/vso.35.6_502_2 
  9. ^ 伊東忍「プロビタミンCの毛穴異常に対する効果」『フレグランスジャーナル』第45巻第2号、2017年2月、39-45頁。 
  10. ^ 池野宏「毛孔異常角化改善に対するリン酸ビタミンCの効果」『フレグランスジャーナル』第33巻第9号、2005年9月、39-47頁。「L-ascorbyl-2-phosphate (APS)」 
  11. ^ a b c d Stamford 2012.
  12. ^ a b 山本格「安定・持続型ビタミンCの発明から大学発ベンチャーの立ち上げと保健機能性食品の誕生までの道程」『日本薬理学雑誌』第132巻第3号、2008年9月1日、160-165頁、doi:10.1254/fpj.132.160 
  13. ^ a b Yagami, Akiko; Suzuki, Kayoko; Morita, Yusuke; et al (2014). “Allergic contact dermatitis caused by 3-o-ethyl-l-ascorbic acid (vitamin C ethyl)”. Contact Dermatitis 70 (6): 376–377. doi:10.1111/cod.12161. PMID 24846587. 
  14. ^ Numata, Takafumi; Kobayashi, Yuko; Ito, Tomonobu; et al (2015). “Two cases of allergic contact dermatitis due to skin-whitening cosmetics”. Allergology International 64 (2): 194–195. doi:10.1016/j.alit.2014.10.007. PMID 25838099. https://doi.org/10.1016/j.alit.2014.10.007. 
  15. ^ Victoria-Martínez, Ana M.; Mercader-García, Pedro (2017). “Allergic Contact Dermatitis to 3-o-Ethyl-L-Ascorbic Acid in Skin-lightening Cosmetics”. Dermatitis 28 (1): 89. doi:10.1097/DER.0000000000000260. PMID 28002235. 
  16. ^ Mamodaly, Myriam; Dereure, Olivier; Raison‐Peyron, Nadia (2019). “A new case of allergic contact dermatitis caused by 3-o-ethyl ascorbic acid in facial antiageing cosmetics”. Contact Dermatitis. doi:10.1111/cod.13307. PMID 31066077. 
  17. ^ a b c d e 伊東忍「プロビタミンC(4)プロビタミンCとアクネ」『フレグランスジャーナル』第39巻第5号、2011年5月、49-54頁。 
  18. ^ a b c 黒川一郎「新規ビタミンC誘導体のにきびへの効果」『フレグランスジャーナル』第43巻第9号、2015年9月、26-30頁。 
  19. ^ 林伸和、古川福実、古村南夫 ほか「尋常性痤瘡治療ガイドライン2017」『日本皮膚科学会雑誌』第127巻第6号、2017年、1261-1302頁、doi:10.14924/dermatol.127.1261NAID 130007040253 
  20. ^ Woolery-Lloyd, Heather; Baumann, Leslie; Ikeno, Hiroshi (2010). “Sodium L-ascorbyl-2-phosphate 5% lotion for the treatment of acne vulgaris: a randomized, double-blind, controlled trial”. Journal of Cosmetic Dermatology 9 (1): 22–27. doi:10.1111/j.1473-2165.2010.00480.x. PMID 20367669. 
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  26. ^ INUI, Shigeki; ITAMI, Satoshi (2007). “Perifollicular pigmentation is the first target for topical vitamin C derivative ascorbyl 2-phosphate 6-palmitate (APPS): Randomized, single-blinded, placebo-controlled study”. The Journal of Dermatology 34 (3): 221–223. doi:10.1111/j.1346-8138.2007.00256.x. PMID 17291309. 
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  29. ^ Kawashima, Saki; Funakoshi, Tomoko; Sato, Yasunori; Saito, Norikatsu; Ohsawa, Hajime; Kurita, Katsumi; Nagata, Kisaburo; Yoshida, Masayuki et al. (2018-11-01). “Protective effect of pre- and post-vitamin C treatments on UVB-irradiation-induced skin damage” (英語). Scientific Reports 8 (1): 16199. doi:10.1038/s41598-018-34530-4. ISSN 2045-2322. https://www.nature.com/articles/s41598-018-34530-4. 
  30. ^ 皮膚へのビタミンC塗布は紫外線を浴びる前が効果的”. 独立行政法人 東京都健康長寿医療センター. 2021年6月28日閲覧。
  31. ^ ヒト培養表皮におけるアスコルビン酸の経皮吸収および紫外線UVBによる細胞障害に対する予防、回復効果の検討”. 2021年6月28日閲覧。

参考文献

  • Stamford, Nicholas P J (2012). “Stability, transdermal penetration, and cutaneous effects of ascorbic acid and its derivatives”. Journal of Cosmetic Dermatology 11 (4): 310–317. doi:10.1111/jocd.12006. PMID 23174055. 

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هذه المقالة يتيمة إذ تصل إليها مقالات أخرى قليلة جدًا. فضلًا، ساعد بإضافة وصلة إليها في مقالات متعلقة بها. (فبراير 2020) نشأ الخلاف الهندي الأردي في الهند المستعمرة في القرن التاسع عشر منبثقًا من النقاش بشأن ما إذا كان ينبغي اختيار اللغة الهندية أو الأردية كلغة وطنية. تُفهم ال...

 

تحوي هذه المقالة أو هذا القسم ترجمة آلية. فضلًا، ساهم في تدقيقها وتحسينها أو إزالتها لأنها تخالف سياسات ويكيبيديا. (نقاش) (أكتوبر 2018) سياسة الهجرة هي أي سياسة في دولة ذات سيادة التي تتعامل مع عبور الأشخاص عبر الحدود إلى الدولة، ولكن خاصة هؤلاء الذين ينتوون العمل والإقامة في ...

 

Italian composer Arturo Buzzi-Peccia Arturo Buzzi-Peccia (13 October 1854 – 29 August 1943) was an Italian singing instructor and song composer. Biography Buzzi-Peccia was born 13 October 1854 in Milan, Austrian Empre, to Antonio and Clotilde Peccia.[1] Whrn he was about five Milan csme under Italian control. In 1868, he was accepted at the Milan Conservatory where he studied composition under Antonio Bazzini. In the late 1870s, he went to Paris to continue his studies under Ma...

This biography of a living person needs additional citations for verification. Please help by adding reliable sources. Contentious material about living persons that is unsourced or poorly sourced must be removed immediately from the article and its talk page, especially if potentially libelous.Find sources: Alan Holmes – news · newspapers · books · scholar · JSTOR (July 2010) (Learn how and when to remove this template message) Picture of Alan Holmes ...

 

Richard dari YorkRichard di halaman depan Buku Talbot Shrewsbury, 1445Adipati YorkPendahuluEdward dari NorwichPenerusEdward (IV)Informasi pribadiKelahiran(1411-09-21)21 September 1411Kematian30 Desember 1460(1460-12-30) (umur 49)Wakefield, YorkshireWangsaWangsa YorkAyahRichard of Conisburgh, 3rd Earl of CambridgeIbuAnne de MortimerPasanganCecily NevilleAnak Anne, Duchess of Exeter Edward IV, Raja Inggris Edmund, Earl of Rutland Elizabeth, Duchess of Suffolk Margaret, Duchess of Burgundy ...

 

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