ピーテル・パウル・ルーベンスが描いたネメアーの獅子と戦うヘーラクレース。マサチューセッツ州ケンブリッジ、フォッグ美術館所蔵。
ネメアーの獅子(ネメアーのしし、古希: Νεμέος λέων, Neméos léōn)はギリシア神話に登場するライオン。ネメアの谷に住み着き、人や家畜を襲ったとされる。
神話
母はエキドナ、父はその子オルトロスとも[1]、テューポーンともいわれる[2]。エピメニデースによるとネメアーの獅子を生んだのはセレーネーであり、恐ろしい身震いをしたときに地上に降ってきたという[3]。またヒュギーヌスによるとセレーネーはネメアーの獅子を2つの入り口がある洞窟で育てた[4]。
ヘーラクレースの最初の難行はこのネメアーの獅子を殺して毛皮を持ち帰る事だった。ヘーラクレースは矢を撃ち、次いで棍棒で殴ったが毛皮には傷一つつかなかった。ヘーラクレースは3日間獅子の首を締め上げて獅子を殺した。獅子の皮は獅子の足の爪で引き裂かれてヘーラクレースの服にされ、肉は食べられたという。その後、ネメアーの獅子は動物の王としてゼウスによって空に上げられ、星座の一つである「獅子座」になったと言われている[5]。
またネメアーの獅子の毛皮に包まれた者は不死を授かるという伝説も生まれた。アイスキュロスの現存しない悲劇『トラーキアの女たち』では、トロイア戦争の英雄大アイアースは幼いころにヘーラクレースによって毛皮でくるまれて不死を授けられたが、ヘラクレスが矢筒を身に着けていたせいで脇腹だけ毛皮が触れず、その部分だけ不死にならなかったと伝えられている[6][7]。
通常のライオンよりも大柄、洞窟を住居とする、単独生活など推察されているヨーロッパホラアナライオンの生態と共通点が目立つ。
系図
脚注
- ^ ヘーシオドス、327行。
- ^ アポロドーロス、2巻5・1。
- ^ エピメニデース断片2(アイリアーノス『動物の特性について』7巻7による引用)
- ^ ヒュギーヌス、30話。
- ^ “しし座”. エラトステネスの星座物語. 2018年9月24日閲覧。
- ^ アイスキュロス断片、83。
- ^ 木曽明子「二つのアイアース像」p.4。
参考文献
外部リンク
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