ドンベヤ・バージェシアエ (Dombeya burgessiae Gerr. ex Harv. & Sond. )とは、アオイ科 (クロンキスト体系 ではアオギリ科 )ドンベヤ属 (英語版 ) (ドムベヤ属)の常緑樹 の一種である。原産地はアフリカ である(参照: #分布 )が、日本 のような温帯 でも栽培し、屋根のない場所で越冬させることも可能である(参照: #利用 )。自家受粉 するが、香りや蜜 を出してハチ を惹きつけるといった虫媒花 としての性質も有する(参照: #特徴 )。
シノニム
The Plant List (2013) と Hassler (2018) では以下に挙げるものが本種のシノニム とされている。
Assonia burgessiae (Gerrard ex Harv.) Kuntze
Assonia calantha Stuntz
Assonia sparmannioides Hiern
Dombeya angulata Mast.
Dombeya antunesii Exell & Mendonça
Dombeya auriculata K.Schum.
Dombeya burgessiae var. crenulata Szyszył.
Dombeya burttii Exell
Dombeya calantha K.Schum.
Dombeya concinna K.Schum.
Dombeya dawei Sprague
Dombeya endlichii Engl. & K.Krause
Dombeya gamwelliae Exell
Dombeya globiflora Staner
Dombeya greenwayi Wild
Dombeya johnstonii Baker[ 9]
Dombeya kindtiana De Wild.
Dombeya lasiostylis K.Schum.
Dombeya mastersii Hook.f. (ドムベヤ・マステルシイ)- T・マスターズ (英語版 ) (T. Masters)[ 注 1] という人物により発表された[ 10] 。
Dombeya nairobensis Engl.
Dombeya nyasica Exell
Dombeya parvifolia K.Schum.
Dombeya platypoda K.Schum.
Dombeya rosea Baker f.
Dombeya sparmannioides (Hiern ) K.Schum.
Dombeya sphaerantha Gilli
Dombeya tanganyikensis Baker
Dombeya trichoclada Mildbr.
Dombeya velutina De Wild. & Staner
このほか Hassler (2018) では Dombeya elegans K.Schum. も本種のシノニム扱いとされているが、The Plant List (2013) ではこれは非合法名 で、Dombeya tiliacea (Endl. ) Planch. のシノニムと判断されている。
分布
アンゴラ [ 11] 、ウガンダ [ 11] 、ケニア [ 11] [ 12] 、コンゴ民主共和国 の東部および南東部[ 11] 、ザンビア [ 11] 、ジンバブエ [ 11] 、スワジランド [ 11] 、タンザニア [ 11] 、マラウイ [ 11] 、南アフリカ (クワズール・ナタール州 、ムプマランガ州 、リンポポ州 )[ 11] 、南スーダン [ 11] 、モザンビーク [ 11] 、ルワンダ [ 11] に自生し、原産地は南アフリカ東部である[ 3] 。ただし、シノニムであるドムベヤ・マステルシイが採取されたのはアビシニア (現在のエチオピア )や、Chopeh という場所から北方のナイル河 岸である[ 13] 。
また、インド (アンダマン諸島 やニコバル諸島 を含む)、コロンビア 、トリニダード・トバゴ 、フィジー 、ミャンマー にも移入されている[ 11] 。
特徴
ケニア で見られるものは最高でも5メートルの小低木 である[ 12] が、10メートルほどの個体も存在する[ 10] 。
葉は大きく長さ約30センチメートルで[ 10] 時に3裂し、上部と下部が毛に覆われ[ 12] 、長い葉柄を持ち形は広卵型、基部が心臓型で先端が鋭く、縁には小鋸歯 がある[ 10] 。
花は直径約2[ 3] あるいは3-4センチメートルで受け皿 状[ 14] 、散房花序 か集散花序 [ 2] あるいは円錐花序 で5弁の[ 10] 白色あるいは紅色か、白色に紅色の筋が入った花20個ほどがやや大きめの花房 をつくり、葉腋 から下垂して咲く[ 3] 。15本の雄蕊 (雄しべ)があるが、そのうち内側の5本は大きく、後述する仮雄蕊と同じ輪生 体の一部を形成し、葯 の直下の花糸 が膝状に湾曲し、葯がわずかに外側に折れ曲がるようにしている[ 14] 。残りの10本の雄蕊は少し小さめで花糸が完全に直立しており、外側の輪生体を形成し、内側の雄蕊や仮雄蕊と互い違いになっている[ 14] 。葯が退化した細いへら 状の仮雄蕊 (英語版 ) は5本存在する[ 14] 。花の中で長い雄蕊が短い雄蕊の花粉を雌蕊 (雌しべ)の柱頭 に運んで自家受粉 するため、他家受粉 は起こらないとされる[ 10] 。しかし一般的に自家受粉する植物の花は蜜 も香りも出す必要がないとされる[ 15] にもかかわらず、ドンベヤ・バージェシアエは芳香を持ち[ 3] [ 14] 、ミツバチ を惹きつける[ 12] 。ケンブリッジ大学植物園 (英語版 ) の温室 におけるドンベヤ・バージェシアエの観察結果が記録された Yeo (1993) もドンベヤ・バージェシアエの花はハチ [ 注 2] を好む性質を持ち、蜜が花弁 の付け根に蓄えられているとしている[ 16] が、同時にハチたちが花に集まるからといって彼らを本来の花粉媒介者 らしき指標と見做すことはできないとも述べられている[ 14] 。
利用
ケニア のキクユ人 の間で本種は同属の Dombeya torrida (シノニム: D. goetzenii )とともに mũkeũ (モケオ)として知られ、樹皮の強靭な繊維から紐 が作られ[ 17] 、かつて行われていた新生児誕生の儀式においてはその紐は臍の緒 を切る際に臍の緒を縛って固定する役割を果たしていた[ 17] [ 18] 。また、根は胸にくる風邪 (ただし気管支炎 ではない。キクユ語 : rũhayo )の際にアオイ科フヨウ属 の Hibiscus fuscus (キクユ語 : mũgere モゲレ )やマキ科 のアフリカマキ (Afrocarpus gracilior 、シノニム: Podocarpus gracilior )もしくは同マキ属 の Podocarpus milanjianus (以上2つともキクユ語 : mũthengera モゼンゲラ )の根、そしてムラサキ科 カキバチシャノキ属 のコルディア・アフリカーナ (Cordia africana ; キクユ語 : mũringa モリンガ )の根の皮とともに煮沸され、その湯で作られたモロコシ 粉の薄い粥 が患者に与えられていた[ 19] 。
ドンベヤ・バージェシアエは日本 にも同属のドンベヤ・ウォリッキー [ 3] (D. wallichii 、種小名はウァリチー [ 6] やウァリキイ とも)とともに花木 として出回ってきており、寒さにも比較的強く、関東 南部以南であれば露地で越冬 させることも可能である[ 7] 。バージェシアエ種とウォリッキー種からは種間雑種 としてカイオイキシイ種(D. × cayeuxii André )が生み出され、園芸品種として扱われる[ 2] 。
諸言語における呼称
ケニア:
脚注
注釈
^ マクスウェル・チルデン・マスターズ (英語版 ) (Maxwell Tylden Masters; 1833–1907)。植物学者。Masters (1867) で本種を Dombeya angulata Cav. (正名: D. acutangula Cav. ドンベヤ・アクタングラ (英語版 ) )として発表したが、Hooker (1867) で D. angulata とは別種のものと判断された。
^ Yeo (1993) の観察で見られた花粉媒介者はクロスズメバチ属 (英語版 ) (Vespula )のハチである。
出典
^ 京都府立植物園 見ごろの植物情報 平成20年1月18日 (京都府 ホームページ). 2018年6月24日 閲覧。
^ a b c d ブリッケル (2003).
^ a b c d e f g 坂﨑 (1998).
^ 【開花情報】ツワブキ、ドンベヤ・バージェシアエ見頃 開花時期11月(2012年) (草津市立 水生植物公園みずの森 指定管理者 近江鉄道 ゆうグループ).
^ a b ドンベヤの育て方 (ヤサシイエンゲイ). 2018年6月24日 閲覧。
^ a b ドンベヤ ウァリチー (草津市立 水生植物公園みずの森 指定管理者 近江鉄道 ゆうグループ). 2018年6月25日 閲覧。
^ a b 日本園芸協会~季節の園芸作業 2018年6月24日 閲覧。
^ Botanic Gardens Conservation International (BGCI) & IUCN SSC Global Tree Specialist Group (2019). Dombeya burgessiae. The IUCN Red List of Threatened Species 2019: e.T146224959A146224961. doi :10.2305/IUCN.UK.2019-2.RLTS.T146224959A146224961.en . Downloaded on 30 November 2019.
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参考文献
英語:
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英語・ラテン語:
日本語:
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クリストファー・ブリッケル 編集責任、横井政人 監訳『A-Z園芸植物百科事典』誠文堂新光社、2003年、375頁。ISBN 4-416-40300-3
杜由木『在りし日 牡羊を屠り 家へ帰る ケニア山のふもとに暮らした人びとの〈伝統・儀礼の書〉を読み解く』東京図書出版、2016年。ISBN 978-4-86223-922-8
関連文献
英語:
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