テープレコーダーの録音では直線性を改善するために音声信号に交流バイアス信号を重畳している。このとき音声信号に高域成分が含まれているとそれ自身が交流バイアスと似た働きをし、録音バイアス量過多の場合と同様に高域のレスポンスや最大録音レベルが低下する。ドルビーHX PRO は音声信号の高域成分を検出し録音バイアス量を 1 ms 毎に制御することで高域特性を改善する。
ドルビーHX PRO は従来のドルビーHX同様、ノーマルポジション(IEC TYPE I)用カセットテープを用いて録音した時に限り、高域特性を改善する。エンコード(録音)時のみの処理であり、デコード(再生)時には何の処理もしないので、既存のドルビーノイズリダクションシステムとは異なり再生互換の問題がない。そのためこの機能を搭載するテープレコーダーはごく一部の高価格帯の機種を除き、通常オン/オフのスイッチを設けず常時作動するようになっている。