ステファニー・ビーチャム (Stephanie Beacham、1947年 2月28日 - )は、テレビ、ラジオ、映画、舞台などで活動するイギリス の女優 である。BBC のドラマ『Tenko (英語版 ) 』(1981-1982)、ITV のドラマ『コニー (英語版 ) 』(1985)、ABC の昼ドラ 『コルビーズ (英語版 ) 』(1985-1987)と『ダイナスティ 』(1985、1988-1989)のセイブル・コルビー (英語版 ) 役などで知られる。映画への出演は『ドラキュラ'72 』(1972)、『スキゾ (英語版 ) 』(1976)、『トゥループ・ビバリーヒルズ (英語版 ) 』(1989)などがある。
ビーチャムは1967年にイギリスのテレビに出演し始め、1970年に『栄光への賭け (英語版 ) 』で映画デビュー。1971年の映画『妖精たちの森 』ではマーロン・ブランド と共演。NBC のシチュエーション・コメディ 『シスター・ケイト (英語版 ) 』(1989-1990)ではゴールデングローブ賞 にノミネートされた。その他のテレビ出演にはITV のドラマシリーズ『バッド・ガールズ (英語版 ) 』(2003-2006)、ITVの長寿ドラマ『コロネーション・ストリート 』(2009)、Sky One のコメディ『Trollied 』(2012)などがある。
生い立ち
ビーチャムは、ロンドンのバーネット で主婦のジョーンと、保険会社の役員でグローヴナー・エステート の理事を務めていたエイリックの間に、4人兄弟のひとりとして生まれた[ 2] [ 3] 。バーネットのクイーン・エリザベス女子校 (英語版 ) に通い、その後エティエンヌ・ドゥクルー (英語版 ) からパントマイム を学ぶためパリ 近郊のブローニュ=ビヤンクール に進み、ロンドンの王立演劇学校 (RADA)に入学した[ 4] 。
経歴
ビーチャムの当初の目標は、耳の不自由な子どもたちにダンスを教えることであったが、モデル として仕事を始め、それからテレビに出演するようになった。1967年、スクリーンで初めて演じたのは、BBCの『女王の裏切り者 (英語版 ) 』のメアリー 役であった。バーネットでは面白くなさそうだと考えたのか、ノーザン・エコー (英語版 ) の記者に、自分の好きなハンフリー・ボガート とイングリッド・バーグマン の映画 の舞台であるカサブランカ の生まれであるとインタビューで答えていた[ 2] 。『セイント 天国野郎 』、『カラン (英語版 ) 』、『謎の円盤UFO 』などに多くゲスト出演した後、1970年に公開されたマイケル・ウィナー 監督の『栄光への賭け』とロディ・マクドウォール 監督の『タム・リン (英語版 ) 』で映画に初出演した。1971年の『妖精たちの森 』ではマーロン・ブランドと共演し、再びウィナーと仕事をすることとなった。作中にはヌードシーンがあり、その撮影中、ブランドはウィナーが必要以上に低いアングルで撮影しないように、寝具の下でブリーフ とウェリントン・ブーツ を着用していた。ブランドとはデートをする関係にあったが、これは共演に向けて親しくなっておく意図があったと語っている[ 5] 。この時期はホラー映画 への出演が多くあり、ハマー・フィルム・プロダクション の『ドラキュラ'72 』ではジェシカ・ヴァン・ヘルシング役でピーター・カッシング やクリストファー・リー と共演した。
その後も映画、テレビ、舞台への出演は続いた。ノッティンガム・プレイハウス (英語版 ) では、ヘンリック・イプセン の『人形の家 』のノーラなど、いくつかの主要な役を演じた。1973年にはテムズ・テレビジョン のドラマ『マークト・パーソナル (英語版 ) 』でジョージナ・レイトンを演じた。同じ年、イタリア 映画『Si può essere più bastardi dell'ispettore Cliff? 』に出演。この映画は1977年にアメリカ では『Mafia Junction 』、イギリスでは『Blue Movie Blackmail 』として公開され、後にジョーン・コリンズ の映画『ザ・ビッチ (英語版 ) 』のヒットに乗じ、『スーパー・ビッチ』とタイトルを変えて家庭用ビデオでリリースされた。またホラー映画にも出演し続け、『And Now the Screaming Starts! 』(1973)、『魔界神父 (英語版 ) 』(1975)、『スキゾ』(1976)、『悪魔の受胎 』(1981)などに出演。ビーチャムはこれらについて、出演料のために受けた仕事だと述べている[ 6] 。
1981年から1982年にかけて、シンガポールの戦い によって捕虜となった女性たちを描いたBBCのテレビシリーズ『Tenko』に端役で出演。その後も舞台やテレビでの活躍が続き、ITVのドラマ『コニー (英語版 ) 』(1985)では主演を果たした。『Tenko』や『コニー』への出演が足がかりとなり、テレビシリーズ『コルビーズ』(1985-1987)では狡猾な家長セイブル・コルビーを演じ、代表作のひとつとなった。『コルビーズ』は、その年にアメリカで最高視聴率を記録した人気番組『ダイナスティ』のスピンオフ作品である。ビーチャムはチャールトン・ヘストン の相手役として、この新番組の看板カップルに起用された。『コルビーズ』は本家ほどのヒットには至らず、2シーズンで打ち切りとなった。しかし1988年、ビーチャムは『ダイナスティ』のセイブル役に再び招かれ、ジョーン・コリンズと「女の闘い」を繰り広げるシナリオで共演した[ 1] 。
1989年に『ダイナスティ』が打ち切りとなった後、ビーチャムは子ども向けファンタジー映画『ウィロビー・チェイスのおおかみ 』で主役を務め、邪悪な家庭教師を演じた。その後、アメリカのコメディ『シスター・ケイト』で、孤児院の子どもたちの世話をするシスターとして主役を演じた。この作品は1シーズンのみで終了となったが、ビーチャムはこの役でゴールデングローブ賞にノミネートされた。その後イギリスに戻り、ボードゲーム 『クルード (英語版 ) 』のテレビ版(ITV)でエリザベス・ピーコックを演じた。『ダイナスティ』のプロデューサーであったアーロン・スペリング と再会し、若者向け人気ドラマ『ビバリーヒルズ高校白書 』に出演。ルーク・ペリー が演じるディランと疎遠になった母親・アイリス・マッケイを演じた。ビーチャムはスペリングが制作した6つのテレビシリーズ『ダイナスティ』、『コルビーズ』[ 7] 、『ラブ・ボート (英語版 ) 』、『ビバリーヒルズ高校白書』、『新・バークにまかせろ (英語版 ) 』、『チャームド 〜魔女3姉妹〜 』などに出演した。1993年には、スティーヴン・スピルバーグ 制作のSFシリーズ『シークエスト 』に出演し、ドクター・ウエストファレンを演じることとなった。ウエストファレンは潜水艦シークエストの主任海洋学者および医師という役であったが、第1シーズンのみで番組を降板した。1990年代を通じてテレビ番組へのゲスト出演を続け、イギリスとアメリカ双方で活動した。1996年には、戦時中を舞台としたBBCのドラマ『No Bananas 』に出演した。
2003年、イギリスに戻り刑務所を扱ったITVのドラマ『バッド・ガールズ』に出演。受刑者のフィル・オズウィンを演じ、ベヴ・タル(アマンダ・バリー (英語版 ) )と組んで「コスタ・コンズ」と呼ばれ、2006年のシリーズ完結まで4年間出演し続けた。2006年、ギルフォード で上演された舞台版『白雪姫 』では邪悪な魔女 を演じ、その翌年も『ジャックと豆の木』の舞台に出演した[ 8] 。2006年の映画『私の婚活恋愛術 (英語版 ) 』に出演。舞台での仕事に戻り、ノエル・カワード の作品『花粉熱 (英語版 ) 』では主役としてツアーでイギリスを回った。その後、2007年にプロダンサーであるヴィンセント・シモーネ (英語版 ) と組んでBBCの『Strictly Come Dancing 』に出場したが、早々に(著名人14人の中では2番目)敗退してしまった。
2008年11月27日、ビーチャムがITVの『コロネーション・ストリート 』で、ケン・バーロウ(ウィリアム・ローチ (英語版 ) )に想いを寄せるマーサ・フレイザー役で出演することが発表された[ 9] [ 10] 。初登場は2009年1月26日で、5月4日が最後の登場となった。
2010年1月3日、チャンネル4 の『セレブリティ・ビッグ・ブラザー (英語版 ) 』第7シリーズにハウスメイトとして参加し、女性では唯一最終話まで残り、最終的には5位であった。2月17日、BBCの『マテリアル・ガール (英語版 ) 』の最終話に出演。4月3日には同じくBBCの長寿ドラマシリーズ『カジュアルティ (英語版 ) 』にゲスト出演した[ 11] 。その後、2010年から2011年にかけて上演された舞台『マスター・クラス (英語版 ) 』のイギリスツアーでは、マリア・カラス 役で主演を務めた。
2011年10月、ビーチャムは自叙伝『Many Lives 』を発表し、それまでの人生とキャリアを語った。この本では『コロネーション・ストリート』で共演したウィリアム・ローチが前書きを寄せている[ 12] 。2012年、スニッカーズ のテレビコマーシャルで『ダイナスティ』で共演したジョーン・コリンズと再会したが、後に映像は編集され、ビーチャムの出演はカットされた。また、スーパーマーケットを舞台としたSky Oneのコメディ『Trollied 』では、2012年8月から10月にかけて放送された8話に渡り、店長のロレイン・チェイン役で出演。同年、スカイ・リビング (英語版 ) の『マウントプレザント (英語版 ) 』にパムおばさん役で3話出演した。
ビーチャムは、聴覚障害やその他の困難を抱える人々がクオリティ・オブ・ライフ を維持するために必要な支援の提供を目的とした慈善団体 の立ち上げに携わった[ 13] 。2006年6月には、その発表のため議会にも出席した。2016年9月、BBCラジオ2 のグラハム・ノートン (英語版 ) の番組に出演し、マーガレット王女 役について語った[ 14] 。『A Princess Undone 』は10月にケンブリッジ芸術劇場 (英語版 ) で上演され、「王室を敬愛する人々を嫌悪させるもの」だそうである[ 15] 。2021年2月、ビーチャムの代理人で小説家のメラニー・ブレイク (英語版 ) は、イギリスで新たな昼ドラ『ファルコン・ベイ』を立ち上げるプランを発表した。制作権が確保できれば、ビーチャムがこのドラマに出演することを確認した[ 16] 。
人物
ビーチャムには聴覚障害があり、生まれつき右耳は聴こえず、左耳も80%ほどしか聴こえていない[ 17] [ 18] 。
1973年に俳優のジョン・マケナリー と結婚し、その後すぐに妊娠したが、3か月で流産した。その死産した息子は火葬したとインタビューで明らかにしている。2人は1979年に別居したが、婚姻関係はその後10年以上続いた[ 1] 。フィービー(1974年生)とクロエ(1977年生)という2人の娘がいる[ 2] [ 5] 。1980年代に、当時クリケット 選手で後にパキスタンの首相 となったイムラン・カーン と交際していた[ 19] [ 20] 。
2009年に皮膚がん の治療を受け、成功した。2011年に再発したが、これも回復した[ 21] 。
長らくバーニー・グリーンウッドと同居しており、2014年に婚約した[ 22] 。
出演
映画
テレビ
賞歴
著書
脚注
^ a b c Gilbert, Gerard (1 September 2012). “Stephanie Beacham: 'I had to give up toy boys'” . The Independent (London). https://www.independent.co.uk/news/people/profiles/stephanie-beacham-i-had-to-give-up-toy-boys-8092717.html 13 May 2014 閲覧。
^ a b c Barber, Richard (28 January 2007). “Moroccan dynasty” . The Times (London). http://property.timesonline.co.uk/tol/life_and_style/property/overseas/article1272125.ece 15 July 2009 閲覧。 [リンク切れ ]
^ “Stephanie Beacham Film Reference biography ”. 2022年3月30日 閲覧。
^ “Stephanie Beacham – Official Website (Bio) ”. 2012年4月26日時点のオリジナル よりアーカイブ。2022年3月30日 閲覧。
^ a b ANNA MATHESON (2022年3月4日). “OK! 独占インタビュー☆ステファニー・ビーチャム:「私にとっては“ただ普通の人生”を歩んでいるだけのことなの!」Vol.1 ”. OK! JAPAN. 2022年3月31日 閲覧。
^ McLean, Gareth (18 June 2003). “Living in the pink” . The Guardian (London). https://www.theguardian.com/media/2003/jun/18/tvandradio.g2 15 July 2009 閲覧。
^ “The Colbys ”. Soap Opera Digest (October 19, 2019). November 19, 2019 閲覧。
^ “Stephanie Beacham panto ”. British Theatre Guide. 2022年3月30日 閲覧。
^ “Stephanie Beacham exclusive on her journey from The Colbys to the Coronation Street cobbles ”. Sunday Mirror (25 January 2009). 15 July 2009 閲覧。
^ “Stephanie Beacham joins Corrie ”. Digital Spy (27 November 2008). 15 July 2009 閲覧。
^ Tim Oglethorpe (3 February 2010). “Celebrity Big Brother star Stephanie Beacham comes a cropper in her guest role in Casualty ”. 2022年3月30日 閲覧。
^ Beacham, Stephanie (2011). Many Lives, An Autobiography . London, UK: Hay House. ISBN 978-1848505957
^ “Fill in the Gaps: supporting older people with hearing and sight loss ”. 22 April 2009時点のオリジナル よりアーカイブ。2022年3月30日 閲覧。
^ “BBC Radio 2 - Graham Norton, With guests Stephanie Beacham, plus Marilyn and Boy George ”. BBC . 2022年3月30日 閲覧。
^ “Stephanie Beacham to play Princess Margaret on stage ” (15 July 2016). 2022年3月30日 閲覧。
^ Lindsay, Duncan (26 February 2021). “New soap could be launched in the UK with all star cast including Stephanie Beacham” . Metro (DMG Media). https://metro.co.uk/2021/02/26/uk-soap-could-be-launched-with-star-cast-including-stephanie-beacham-14153890/ 2022年3月30日 閲覧。
^ Murphy, John. “Stephanie Beacham: She was born completely deaf in her right ear and with only 80% hearing in her left. ”. Hidden Hearing's (Ireland) Blog . 6 October 2014時点のオリジナル よりアーカイブ。2022年3月30日 閲覧。
^ ANNA MATHESON (2022年3月8日). “OK! 独占インタビュー☆ステファニー・ビーチャム:「私にとっては“ただ普通の人生”を歩んでいるだけのことなの!」Vol.2 ”. OK! JAPAN. 2022年3月31日 閲覧。
^ “A woman of substance ”. ザ・スコッツマン (27 June 2004). 2022年3月30日 閲覧。
^ “Bowling maidens over: The love life of cricket superstar Imran Khan ”. インディア・トゥデイ . Zahid Hussain (15 June 1995). 2022年3月30日 閲覧。
^ McGrath, Nick (6 August 2014). “Stephanie Beacham: My skin cancer returned but deafness had a bigger impact on my life ”. Daily Mirror . 2022年3月30日 閲覧。
^ ANNA MATHESON (2022年3月11日). “OK! 独占インタビュー☆ステファニー・ビーチャム:「私にとっては“ただ普通の人生”を歩んでいるだけのことなの!」Vol.3 ”. OK! JAPAN. 2022年3月31日 閲覧。
外部リンク