スターリンク (Starlink ) は、アメリカ合衆国 の民間企業スペースX が運用している衛星インターネットアクセス サービス、並びにこれを実現する衛星コンステレーション
[ 2]
。
概要
スターリンクはスペースX が運営する衛星インターネットコンステレーションであり[ 3] [ 4] 、地球上のほぼ全域での衛星インターネットアクセス を可能にする[ 5] [ 6] 。
このコンステレーションは地球低軌道 (LEO)上に展開され、2023年9月時点で3000機を超える小型衛星 で構成されている[ 7] 。小型化・量産化により製造と打ち上げのコスト削減を実現した人工衛星 を経由して、利用者が所有する専用の無線通信端末 キットと各国に設置された地上ステーションを結び、ユーザー居住地の地上インフラに依らない、低価格での衛星インターネットアクセス サービスを提供する[ 8] [ 9] [ 10] 。しかし実際にサービスが提供されるのはスペースXがサービス提供のライセンスを取得した国に限られ、2022年末時点で45カ国でサービスを提供している[ 11] 。
スターリンクはワシントン州 レドモンド にあるスペースXの衛星開発施設で研究、開発、製造、軌道制御が行われている。10年にもおよぶ計画の総コストは、設計・製造・打ち上げなど100億ドル近くに達するとスペースXは2018年5月に見積もっている[ 12] 。
開発は2014年に始まった。2018年2月にプロトタイプのテストフライト衛星2基を打ち上げた。2019年5月には、商用サービスに向けた最初の大規模な打ち上げが実施され、追加のテスト衛星と60基の運用衛星が配備された[ 3] [ 14] [ 15] 。スペースX社は一度に最大60基の衛星を打ち上げ、2021年後半か2022年までにほぼ全世界にサービスを提供するために、260kgの宇宙船を1,584基[ 16] 配備することを目指していた[ 17] 。
2019年10月15日、米国連邦通信委員会 (FCC)は、国際電気通信連合 (ITU)に、FCCが既に承認している1万2000基のスターリンク衛星を補完するための3万基の追加衛星用の周波数を手配するための申請書を、スペースXに代わって提出した[ 18] 。
2020年、北アメリカ大陸 とヨーロッパ で試験運用が始まった[ 10] 。2022年10月11日、SpaceXはTwitter で日本でのサービス開始を発表
[ 19] 、東日本での注文受付を開始。徐々にサービス提供地域を増やし、2023年夏までに離島を含む日本全域がサービス提供地域となった(北方領土 や竹島 といった特殊な土地を除く)
[ 20] 。
2021年までに、スペースXはGoogle Cloud Platform およびMicrosoft Azure と契約を結び、地上でのネットワークインフラをスターリンク用に提供することで提携した[ 21] 。
天文学者 は、この計画が地上からの天体観測 に与える影響や、既に混雑している軌道環境に衛星がどのように追加されるかについて懸念を示している[ 11] [ 22] 。 スペースXは、衛星の運用時の輝度を下げることを目的としたいくつかのアップグレードを実施することで、こうした懸念を軽減しようとしている[ 23] 。 衛星にはクリプトン を推進剤とするホールスラスタ が搭載されており、寿命が尽きると軌道から離れることができる。また、衛星は地上から送られる追跡データに基づいて、自律的に衝突を回避するように設計されている[ 24] 。
スペースXは、スターリンクを軍用や[ 25] 、科学・探検などの用途に販売することも計画している[ 26] ほか、2020年代 中頃までに総数約12,000基の人工衛星を3階層にわたって展開することを計画している。最初が高度550kmの約1,600基の衛星、次が高度1,150kmのKu /Ka バンド を用いる約2,800基の衛星、さらに高度340kmのVバンド を用いる約7,500基の衛星である[ 27] 。
打ち上げ履歴
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(2023年5月 )
国ごとの提供状況
衛星を使ったサービスを提供するには、国際電気通信連合 (ITU)の規定や長年の国際条約により、各国の当局から許可を得る必要がある。その結果、スターリンクのネットワークは緯度 約60度以下でほぼ全世界をカバーしているにもかかわらず、農村部や十分なサービスが行き届いていない地域へのブロードバンドサービスが約12カ国でしか提供できていない。また、スペースXはサービスを展開するための手続きを行う必要があり、その状況によって提供される地域、順序、期間が左右される。例えば、スペースXは2020年6月にカナダ のみで正式に許可を申請し[ 38] 、2020年11月に規制当局が認可したことで[ 39] 、その2ヶ月後の2021年1月にサービスを展開し始めた[ 40] 。
2022年末現在、45カ国でサービスを提供しており
[ 11] 、そのほか多くの国で規制当局に認可を申請している[ 41] 。アメリカではTモバイルUS と提携し、2023年末までに携帯電話の電波が届かない地域に対して、音声通話やデータ通信サービスなどが使用できるようにすることを発表した[ 42] 。
日本 では、KDDI がスペースXと業務提携し、2022年に1,200箇所の基地局 を介して地方の顧客向けにより高速な通信の提供を目指すことを発表[ 43] 。同年12月に静岡県 熱海市 の初島 にスターリンクを利用した最初のau 基地局を設置した[ 44] 。2024年からはauのスマートフォンとスペースXの衛星を直接つなぐサービスも開始する予定[ 45] 。なお、法人向けプランについてはソフトバンク も2023年9月から[ 46] 、スカパーJSAT ・NTTドコモ [ 47] ・NTTコミュニケーションズ [ 47] も同年内[ 48] にそれぞれ提供することを発表している。2024年1月1日に発生した能登半島地震では、KDDIの700台を筆頭に各社から合計1千台近い大量のスターリンクが無償提供され、奇しくもその有用性が実践で証明された。
2022年ロシアによるウクライナ侵攻 が始まると、ウクライナ では通信インフラが攻撃されるおそれが強まった。開戦2日後の2月26日[ 10] 、ウクライナのデジタル転換相を兼務するフョードロフ副首相は、Twitter でスターリンクの提供を要請[ 49] 。スペースXCEO のイーロン・マスク は2022年2月27日7時33分(日本標準時 )、Twitterを通じて、スターリンクがウクライナで利用可能であると表明した[ 50] 。スターリンクは、ウクライナの部隊による無人航空機 (ドローン)での偵察 や攻撃、公的機関や市民による戦況などのSNS への投稿に利用され、国土防衛戦や国際世論に対する情報・宣伝戦 を支えている[ 10] 。
ウクライナでの利用者増加により、スマートフォン 用のスターリンク接続システムは同年3月に一時、世界で最も多くダウンロード されたモバイルアプリ になった[ 10] 。2022年10月14日、イーロン・マスクがウクライナでの無償提供は無期限に継続できないとTwitterに投稿。スペースXは継続する場合、アメリカ国防総省 に資金提供を要求する旨の書簡を国防総省に送付した[ 51] 。その後、同月15日に前述の投稿を撤回し、ウクライナへの無償提供を継続することを表明した[ 52] 。また17日のツイートで書簡の内容を撤回したとイーロン・マスクは表明した[ 53] 。
日本国内の海上における利用
2023年以降、日本国内の主に船舶におけるスターリンク MARITIMEサービスの活用が急速に進んでいる。2023年10月に商船三井 が、保有する全233隻の外航船に導入するプレスリリースを出し[ 79] 、2022年12月から試験運用を初めていた日本郵船 も100隻以上の外航船に導入することをアナウンスしている。
総務省は2024年2月16日に電波法関係審査基準の一部を改正し、領海外でもスターリンクサービスを利用可能とした[ 80] 。
2024年5月17日、ソフトバンク は、海上保安庁船舶へのスターリンク積載の展示を行った。[ 81]
2024年5月21日、防衛省およびKDDIは、遠洋航海訓練に出発した「かしま」および「しまかぜ」にスターリンクビジネス マリタイムを導入したことを明らかにした。また2027年度までに艦隊の9割にスターリンクを導入することを明らかにしている。[ 82]
利用事例
技術
コンステレーションの設計と現状
第1世代
フェーズ1の高度550kmの場合、72種類の軌道それぞれに22基の衛星を配置するため、合計で1584基となる。
フェーズ
グループ
軌道
軌道平面[ 84]
完成時期
配備済み
(2023年11月時点
[ 85] )
高度
(km)
衛星数
軌道傾斜角
種類
衛星数
半分
すべて
稼働中
停止状態
1
Group 1
550 km
1584[ 86]
53.0°
72
22
2024年3月
2027年3月
1445[ 87]
280[ 87]
Group 2
570 km
720
70°
36
20
403
5
Group 3
560 km
336
97.6°
6
58
233[ 87]
10[ 87]
Group 4
540 km
1584
53.2°
72
22
1566
71
560 km
172
4
43
0
2[ 88]
335.9 km
2493
42.0°
2024年11月
2027年11月
0
340.8 km
2478
48.0°
0
345.6 km
2547
53.0°
0
初期の設計では、全てのフェーズ1の衛星が1100~1300km程度の高度にあった。しかしスペースXは最初の1584機の衛星の高度を下げることを要求し、2020年4月には全ての衛星の軌道を約550kmまで下げることを要求した[ 89] [ 90] 。 この変更は2021年4月に承認されている[ 91] [ 92] 。
第2世代
フェーズ
グループ
軌道
軌道平面[ 84]
完成時期
配備済み
(2024年1月時点
[ 85] )
高度
(km)
衛星数
軌道傾斜角
種類
衛星数
半分
すべて
稼働中
停止状態
1
Group 5
530 km
3360
43.0°
28
120
2028年12月
2021年12月
692
7
Group 6
559 km
739
26
Group 7
525 km
3360
53°
28
120
191
3
535 km
3360
33°
28
120
衛星
2015年の初期に公開された情報によると、質量100~500kgの小型衛星を高度約1,100kmの低軌道 (LEO)に配備することが想定されていた。実際に、2019年5月に初めて大型展開された60基の衛星の質量は227kg[ 93] であり、宇宙環境への配慮から比較的低い550kmに配置された[ 94] 。 2015年1月時点の初期計画だと、コンステレーション は約4,000個の協調する[ 95] 衛星で構成されることになっており、その数は2015年1月に軌道上にあった運用中の衛星の2倍以上に及ぶ[ 96] 。
米国連邦通信委員会 (FCC)や総務省 に提出された書類によると、衛星は4基のフェーズドアレイ アンテナと2基のパラボラアンテナ を備え、アクティブフェーズドアレイによるビームフォーミング を用いた通信提供範囲の制御、デジタル処理技術を採用する。ユーザ端末(Dishy)と衛星を結ぶサービスリンクにKuバンド を、地上ステーション(Gateway)と衛星を結ぶサービスリンクにKaバンド を用いるため、各種既存衛星の通信への干渉が懸念されたが、フェーズドアレイによる幅2.6°の鋭いビーム制御を活用し、既存衛星への干渉が懸念されるパスを回避(停波)することで問題を回避した。各衛星はほかの衛星との空間光通信 を可能にするレーザーリンク装置を備え、複数の衛星を中継することにより付近にGatewayの存在しない地域へのサービスも可能にしている[ 97] [ 98] [ 99] 。周波数申請の一環としてフェーズドアレイ技術の詳細が開示されているが、スペースXは光衛星間リンクの詳細に関して守秘義務を課している[ 100] 。初期の衛星はレーザーリンクなしで打ち上げられた。2020年後半に衛星間レーザーリンクのテストに成功した[ 101] [ 102] 。
衛星は大量生産 され、従来の衛星に比べて単位能力あたりのコストが大幅に削減される予定である。イーロン・マスクは「ロケット にやったことを衛星にもやってみようと思う」[ 103] 、「宇宙に革命を起こすためには、衛星とロケットの両方に取り組まなければならない」[ 104] 、「宇宙ベースのインターネットや通信のコストを下げるためには、小型の衛星が不可欠である」[ 105] と語っている。
2015年2月、スペースXは、衛星通信市場への新規参入者であることから、参入障壁となる5G通信 規制を行う前にKaバンド 周波数の将来の革新的な利用法を検討するようFCCに要請した。スペースXの非静止軌道通信衛星コンステレーションは、「操縦可能な地球局の送信アンテナが地理的に広い影響を与え、衛星の高度が著しく低いと、地上の送信からの集約的な干渉の影響が拡大する」24GHz以上の高周波帯で運用される予定である[ 106] 。
静止衛星 を経由するインターネットトラフィックは、理論上の最低往復遅延時間 が477ミリ秒(ユーザーと地上ゲートウェイ 間)であるが、実際には現在の衛星だと600ミリ秒以上の遅延がある。スターリンク衛星は、静止軌道の1/105から1/30の高さの軌道を周回しているため、地球から衛星までのレイテンシ は25から35ミリ秒程度と、既存のケーブルや光通信網に匹敵する実用的なものとなっている[ 107] 。 このシステムは、「IPv6 よりもシンプル」と謳われるピアツーピア のプロトコル を使用し、エンドツーエンド暗号化 も組み込まれる予定である[ 108] 。
スターリンク衛星は、軌道の上昇と維持のために、クリプトン ガスを用いたホールスラスタ を使用している[ 109] 。クリプトンのホールスラスタは、キセノン を用いた同様の電気推進 システムと比較して流路の侵食が著しく大きい傾向があるが、クリプトンのほうが豊富に存在し市場価格も低い[ 110] 。
Dishy
サービスのユーザーは専用の無線通信端末キットを購入してスターリンク衛星との通信を行う。キットは複数のバージョンがあるが、いずれも大別してユーザーの電子機器(スマートフォンやコンピュータ)との通信や各種制御を行う端末"Router"と、アクティブフェーズドアレイアンテナを内蔵し衛星との直接通信を行う端末"Dish"で構成されている[ 111] 。これらは愛称として"Dishy"と呼ばれているが、複数の端末を纏めて指す場合もあれば"Dish"のみを指す場合もあるなど曖昧である。"Router"ではSSHポートが開いており、アクセスしようとすると隠しメッセージ を見ることができる。ある世代のメッセージの中ではRouterに対し「WiFiルーターになるのをやめてDishyになれ」と言っている文章を確認することができる[ 112] 。
いずれのDishもアクティブフェーズドアレイアンテナを備え、アンテナの送信ビーム幅は2.8°。14~14.4GHzのアップリンク(60MD7W/600MG7W, 2.74W, 最大EIRP33.2dBW)が「スターリンクジャパン合同会社」に免許されている[ 99] [ 113] 。2023年9月現在、13万局の包括免許が与えられている[ 113] 。ダウンリンクは10.7~12.7GHz[ 99] 。
Circular Dishy
最初期に販売されたキットに含まれていた。キットの内容物はCircularDish, Router, PowerSupply, Base(Dish用スタンド), ケーブル類。
Dishは円形で直径は約55cm。取り外すことができないEthernetケーブルが"生えて"おり、PowerSupplyに接続する[ 111] 。型式はUTA-211。
Routerは2.4/5GHz対応で2つのEthernetジャックを備える。それぞれPowerSupplyを介してDishに接続するジャックとユーザ端末に接続するジャックである。型式はUTR-201。
これらの機器はPowerSupplyによってEthernetに印加された56VのDC電源によって稼働する(PoE )。
Rectangular Dishy (Standard Dishy)
現在提供されている標準キットに含まれる。キットの内容物はRectangularDish, Router, Base, ケーブル類。PowerSupplyはRouterに内蔵されている。
Dishは513x303mmの長方形で、その内部には1016個のパッチアンテナによるアクティブフェーズドアレイアンテナと無線IC、アンテナの向きを制御するモーター、GNSS受信機、加速度計などが格納されている[ 111] [ 114] 。型式はUTA-212。
Routerは2.4/5GHz3x3MIMO,IEEE 802.11a/b/g/n/acに対応し、複数のRouterでメッシュWiFiを構築できる。また、本端末は100VAC入力に対応しており、Dishに対する48VDCの電源供給も行う。しかしユーザ端末に接続するためのEthernetジャックは備えておらず、有線での接続には別売りのアダプタを要する。型式はUTR-211。
DishとRouterは専用コネクタを備えたケーブルで接続されているが、その実態はUSB Type-Cを基にした20pinカスタムコネクタを備えたEthernetケーブルである。なお、適切な機器でDishに給電を行うことによりRouterをバイパスして任意のルータを用いることができる。
"Starlink Business"で提供される高性能キットに含まれる。キットの内容物はHighPerformanceDish, Router, PowerSupply, Base, ケーブル類。
Dishは575x511mmの長方形で、RectangularDishを2枚並べたようなサイズ感と外観を有し性能が向上している。型式はUTA-221[ 111] 。
本キットではPowerSupplyが独立しており、ここにユーザ端末に接続できるEthernetジャックを備える。
"Starlink Mobility"や"Starlink Maritime"で提供されるフラット高性能キットに含まれる。キットの内容物はFlatHighPerformanceDish, Router, PowerSupply, Mount, ケーブル類。
Dishは575x511mmの長方形で、他のDishと異なりアンテナの向きを制御するモーターは備えておらず、厚さ4cm程度の板のような形状を有する。これは、車両の屋根や船舶のデッキに設置して移動しながらの通信を目的にしているためである。型式はUTA-222[ 111] 。
性能などはHighPerformanceDishと同等である。
Gateway
2023年9月時点では、各種通信はSpaceXおよび協力企業によって各地に設置された地上ステーション"Gateway"を介してインターネットに接続されている。日本ではKDDI が設置と運用を担っており、以下4局が確認されている。
日本に存在するStarlink-Gateway局
送受信所
設置場所
緯度
経度
北海道小樽市
KDDI石狩海底線中継所
43.172818
141.257469
秋田県秋田市
KDDI秋田海底線中継所
39.638334
140.064700
茨城県ひたちなか市
KDDI茨城海底線中継所
36.386749
140.613739
山口県山口市
KDDI山口衛星通信所
34.217111
131.555697
各Gatewayは直径約2mの球状のレドーム に格納された可動式パラボラアンテナを9つ持つ。アンテナの送信ビーム幅は0.5°。各Gatewayに対して27.5~29.1GHz,29.5~30GHzのアップリンク(480MD7W/480MG7W, 5.26W, 最大EIRP66.5dBW)が「スターリンクジャパン合同会社」に免許されている[ 99] [ 113] 。ダウンリンクは17.8~18.6GHz,18.8~19.3GHz[ 99] 。
競合
ワンウェブ はスペースXとほぼ同時期に衛星コンステレーション計画を発表している。サムスン は2015年に、1,400kmの軌道を周回する4,600個の衛星コンステレーション計画の概要を発表した。これは世界中で1ヶ月あたりゼタバイト の通信を提供し、50億人のインターネット利用者に対して1ヶ月あたり200ギガバイトに相当する[ 115] [ 116] 。しかし、2020年までにサムスンから追加の情報は発表されていない。テレサットは2015年に小規模な117機の衛星コンステレーションを発表し、2021年に初期サービスを提供する予定であった[ 117] 。
アマゾン は2019年4月に大規模なブロードバンド・インターネット衛星コンステレーションを発表した。これは同社が「プロジェクト・カイパー」と呼ぶ、今後10年間に3,236機の衛星を打ち上げる計画であり、2018年11月に発表されていたアマゾンの12の衛星地上局施設からなる大規模ネットワーク(AWS ground station unit)と協調する衛星コンステレーションである[ 118] [ 119] 。
2017年10月までに、新興の低軌道 衛星によるネットワーク容量の大幅な増加への期待から、市場関係者は新たな対地同期軌道 のブロードバンド通信衛星への投資計画の一部を中止した[ 120] 。
批判
光害問題
12,000基からなる巨大通信衛星網が完成すると、低軌道の衛星は90分で地球を周回することもあり、常に約200基の衛星が上空に見えると予測されている。そうなると、衛星の金属部分や太陽電池パネル は光を反射しやすいこともあり、天文台による観測に衛星の光の筋が横切るなどの支障が出るとして、国際天文学連合 や日本の国立天文台 などはスペースXに対し、衛星の素材を変えたり、太陽電池パネルの角度を調節したりするよう求めている[ 121] [ 122] [ 123] 。
この対策として、まず2020年 1月にダークサット (DarkSat) と呼ばれる黒く塗られた機体が試験的に打ち上げられた。この機体では、通常の機体と比べて明るさが55%低下した一方で赤外線 などの波長では問題が続いており、採用には至らなかった。次いで同年6月にはバイザーサット (VisorSat) と呼ばれるサンバイザー を装備してアンテナへの太陽光の入射を防いだ機体が試験的に打ち上げられた[ 124] 。8月に打ち上げられた機体からは、すべてこのバイザーサット仕様となっていた[ 33] 。しかし、2022年6月17日に打ち上げられた衛星 ("version 1.5") 以降、このバイザーは取り外されている。これは、新しい衛星に搭載された衛星間通信を行うためのレーザー装置とバイザーが干渉するためである。このため、天文学者たちは衛星が再び明るくなることに懸念を示している[ 125] 。
スペースデブリ
スターリンクは、何千もの衛星を軌道に乗せることで長期的なスペースデブリ および衛星衝突の危険性を生じさせ、ケスラーシンドローム を引き起こす可能性があると批判されている[ 126] [ 127] 。これに対しスペースXは、ほとんどの衛星は低い高度で打ち上げられており、失敗した衛星は推進力がなくても5年以内に大気圏再突入 すると主張している[ 128] 。
計画の初期では、ヨーロッパの衛星と1000分の1の確率(ESA における回避行動の基準値の10倍)で衝突する可能性がある衛星をスペースXが動かさなかったため、ニアミスが発生した。スペースXはその後、ESAとスペースXの間で連絡が途絶えていたシステム上の問題を修正した。また、ESAは衛星の衝突回避行動を自動化する技術に投資する予定だと述べた[ 129] [ 130] 。
地上の設置工事
スターリンクはACアダプター とルーター、アンテナを接続すると自動的にアンテナが角度を調整するようになっている。
アンテナは融雪機能があるため、PoE電圧は56Vと高くなっている。そのためLANケーブルの固定は電気工事士の資格が必要 で、工事店は電気工事業の登録がない場合は違法工事になる[ 131] 。
新型のアンテナはACアダプターがなく、ルーターからのPoE電圧は48Vに変更されている。
脚注
出典
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関連項目
外部リンク
ロケット
試験機 宇宙機 エンジン 射場 契約 サービス 人物
† 左記のマークが付いたものは失敗したミッションや機体など
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