スカルノ・ハッタ国際空港 (スカルノ・ハッタこくさいくうこう、インドネシア語 : Bandar Udara Internasional Soekarno-Hatta 、英 : Soekarno–Hatta International Airport )は、インドネシア の首都 のジャカルタ 郊外のバンテン州 タンゲラン にある国際空港 である。空港コード はCGK /WIII 。
概要
空港レイアウト
1980年代、ジャカルタにはハリム・ペルダナクスマ国際空港 と国内線専用空港であったクマヨラン空港 (英語版 ) が存在した。しかし、経済成長が進むにつれて増加する航空需要に対応できず、新たな大型空港の建設が望まれ、1985年3月1日、ジャカルタ中心部から約20km西の1800haの空港用地にスカルノ・ハッタ国際空港が開港した。なお、クマヨラン空港は同年3月末をもって閉港し、現在は住宅地やゴルフ場になっている。ターミナル2は1991年に、ターミナル3(サテライト)は2009年に、ターミナル3アルティメットは、2016年に供用を開始した。
名称は、同国の「独立宣言書 」に署名した初代大統領スカルノ と同副大統領モハマッド・ハッタ の名からとられた。命名者は9月30日事件 をきっかけにスカルノから権力を奪った第2代大統領のスハルト である。IATAコードのCGKは近くの西ジャカルタ市 チェンカレン(インドネシア語 : Cengkareng )地区から採られており、インドネシア人はチェンカレン空港 とも呼ぶ。もっとも、空港が位置するのは、チェンカレン地区に隣接するバンテン州タンゲラン市である。その他、アルファベット表記を省略してSoettaと呼ばれることもある[1] 。
2013年には利用者数が6,000万人を突破し、世界で10番目に旅客数の多い空港となった[2] 。これは南半球で最も大きい数値でもある。また、IATA の調査によると、シンガポール 便は、2013年には340万人が利用し、世界で3番目に利用者数の多い国際線路線となった[3] [4] 。
空港の運営は、インドネシア運輸省が運営する空港運営企業のPT Angkasa Pura II (英語版 ) が行っている。ガルーダ・インドネシア航空 のほか、ライオン・エア やシティリンク など、インドネシアの各航空会社の拠点空港となっている。
拡張計画
将来計画図
建設当初、年間利用客は2,000万人として設計されていたが、前述の通り、2013年の利用客は6,000万人に達している。旅客数の増加による空港のキャパシティ オーバーにともない[5] 、既存ターミナルの改修および新ターミナルの建設、さらにこれらをつなぐ移動手段の構築が推進されている[6] 。このプロジェクトは2011年に採択され、総事業費1500億円と推定されている[7] 。
施設・設備
滑走路
現在、オープン・パラレル で第1滑走路・07R/25L (南側、長さ3,660m・幅60m) と第2滑走路・07L/25R (北側、長さ3,600m・幅60m) の2本の滑走路がある。両滑走路両端にILS が設置されている。2016年までに、第2滑走路の北に第3の滑走路の建設が開始されることが予定されており、土地整備や滑走路設置に4兆ルピア(約370億円)投入される見通し[8] 。
ターミナルビル
敷地中央南部に位置するターミナル1と、それに対峙して中央北部に建設されたターミナル2、北東部に建設されたターミナル3、そして南東部に位置する貨物ターミナルから構成される。なお、各旅客ターミナルビルに入るにはセキュリティ・チェック を受ける必要があり、厳重な所持品検査を求められる。
ターミナル1, 2の設計は、シャルル・ド・ゴール空港 の設計で知られる建築家 のポール・アンドリュー (Paul Andreu) が担当。ジャワ島の伝統的な建築様式が取り入れられた特徴的なデザインを呈し、1995年にはアーガー・ハーン建築賞 を受賞している[9] [10] 。
各旅客ターミナルは1キロメートル程度離れている。2017年9月、ターミナル2とターミナル3を結ぶ無料の輸送システム「スカイトレイン 」が開業し[11] [12] 、現在は全てのターミナル間を結んでいる。そのほか、無料のシャトルバスでも結ばれている。
ターミナル 1
1985年完成。床面積142,730m2 。半円形をしたターミナルビルで、3つの独立したユニット(ターミナル1A、1B、1C)を有する。各ユニットは、7つのゲートを有している (A1-A7、B1-B7、C1-C7)。
開港当初は国際線・国内線の両方を扱っていたが、すぐにキャパシティオーバーに陥った。国内線専用ターミナルとして利用されている。
ターミナル 2
各ゲートへ向かう通路(ターミナル2)
ゲートラウンジ(ターミナル2)
1991年完成。床面積135,459m2 。基本的なデザインは第1ターミナルと同様であるが、第1ターミナルより若干半径の小さな半円形となっている。こちらも3つのユニット(ターミナル2D、2E、2F)を有し、各ユニットは、7つのゲートを有している (D1-D7、E1-E7、F1-F7)。ただし、第1ターミナルとは異なり、各ユニットは連結されて1つのビルとなっているため、ユニット間の移動がスムーズに行えるようになっている。また、出発階と到着階を分けた2層式ターミナルが採用されており、乗客、見送り客、出迎え客が明確に分離される形となっている[13] 。
ターミナル2Fは格安航空会社の国際線が利用している。
ターミナル 3
ターミナル3 内部
オランダのアムステルダム・スキポール空港 公団によって設計された。第1、第2ターミナルとは異なり近代的なデザインとなっている。
2009年、サテライト部分が先行開業。床面積28,958m2 。LCC 専用ターミナルとして[14] 、インドネシア・エアアジア などが利用していた。ターミナル3アルティメットの開業に伴い、一時閉鎖されて改修工事が行われ、サテライトの一部分となった。
ターミナル3 アルティメット(Terminal 3 Ultimate, T3U) は、2016年8月9日に部分開業した[15] 。ガルーダ・インドネシア航空のすべての国際線が、2017年5月1日に移転した[16] [17] 。スカイチームに加盟している大韓航空 、チャイナエアライン 、ベトナム航空 などもターミナル2から移転している。
2018年、全面開業され、サテライト部分も拡張された[18] 。そのため、ターミナル内では移動用電動カートが頻繁に往復している。
ターミナル 3では案内看板に中国語 、日本語 の表記もある。
貨物ターミナル
国内線用の貨物ターミナル、輸入用カーゴのための国際線貨物ターミナル、輸出用カーゴのための国際線貨物ターミナルから構成される。開港以来、増改築を繰り返しており、老朽化も進んでいる。最新の事業計画では、貨物ターミナルは第2ターミナルの西側に移転する予定となっている。
その他の施設
就航航空会社と就航都市
ターミナル 1
ターミナル1B、1Cは改装工事のため閉鎖中
ターミナル 2
ターミナル 3
貨物ターミナル
利用状況
近年の経済成長に伴い、空港利用者数や航空機発着回数は急増している。2012年には利用者数において世界第9位、東南アジア第1位、南半球第1位となった[2] 。
スカルノ・ハッタ国際空港の利用状況[21] [22] [2]
年
旅客数
貨物取扱量(t)
航空機発着回数
2001
11,818,047
281,765
123,540
2002
14,830,994
306,252
144,765
2003
19,702,902
310,131
186,695
2004
26,083,267
322,582
233,501
2005
27,947,482
336,113
241,846
2006
30,863,806
384,050
250,303
2007
32,458,946
473,593
248,482
2008
32,172,114
465,799
248,482
2009
37,143,719
538,314
287,868
2010
44,355,995
633,391
338,711
2011
52,446,616
699,257
367,894
2012
57,730,732
381,120
2013
60,137,347
398,985
2014
57,005,406
382,287
アクセス
各空港ターミナルビル とスカルノ・ハッタ国際空港駅 とは、スカイトレイン と呼ばれる無料の新交通システム で結ばれている。また、ターミナルビル間の無料シャトルバスも24時間運行されている[23] 。
鉄道
バス
タクシー
Blue Bird、Expressなど、約10社が利用できる。
タクシー会社別のカウンターで配車を依頼し、乗車場所も会社ごとに分かれている。
120,000〜180,000ルピア 程度に加えて、高速道路代10,000ルピアが必要。
事故
当空港周辺では、過去に大きな事故が2回起きている。
2018年10月29日、デパティ・アミール空港行きライオンエア610便が、当空港を離陸直後に墜落した。乗員8人と乗客181人がこの便に搭乗していたが、全員死亡した。
2021年1月9日午後2時過ぎ、当空港を離陸したポンティアナク(ボルネオ島西部)行きスリウィジャヤ航空182便(ボーイング737-500型機、機体番号:PK-CLC)が、当空港を離陸した後、北側の海上で消息不明となった。乗客50数人程度がこの便に搭乗していた[34] 。
脚注
^ Okezone (2011年1月5日). “"Singkatan Bandara Soetta Lecehkan Proklamator" : Okezone Nasional ” (インドネシア語). https://nasional.okezone.com/ . 2022年5月4日 閲覧。
^ a b c “Annual Traffic Data ”. ACI. 2013年1月22日時点のオリジナル よりアーカイブ。2022年5月4日 閲覧。
^ 同調査によると、1位は香港 - 台北 便で490万人、2位はロンドン - ダブリン 便で360万人であることから、2位との差は僅か20万人である。もっとも、4位はソウル - 東京 便で320万人であるので、4位との差も僅差である。
^ Dama, Alfred (2015年1月13日). “Rute-rute Tersibuk di Dunia, Salah Satunya di Indonesia ” (インドネシア語). Pos-kupang.com . 2022年5月4日 閲覧。
^ 経済産業省 2006 , pp. S2–S4
^ 経済産業省 2006
^ “インフラ調査で6案件採択:経産省、事業規模10兆円超[経済] ”. エヌ・エヌ・エー (NNA JAPAN CO., LTD.) (2011年7月1日). 2014年8月31日時点のオリジナル よりアーカイブ。2013年4月14日 閲覧。 “スカルノ・ハッタ国際空港の拡張案件。事業費は推定1,500億円”
^ Post, The Jakarta (2014年4月14日). “Govt to spend Rp 4t on land for Soekarno-Hatta's third runway ” (英語). The Jakarta Post . 2022年5月4日 閲覧。
^ 経済産業省 2006 , p. 1-8
^ “Aga Khan Award for Architecture Winner ”. ArchNet (2006年9月). 2012年8月25日時点のオリジナル よりアーカイブ。2013年4月14日 閲覧。 “Soekarno-Hatta International Airport Landscaping”
^ Post, The Jakarta (2017年9月19日). “Soekarno–Hatta International Airport Skytrain is officially launched ” (英語). The Jakarta Post . 2022年5月4日 閲覧。
^ “きれい、速い、楽しい スカイトレイン 乗り継ぎ便利に ”. じゃかるた新聞 (2017年9月23日). 2022年5月4日 閲覧。
^ 経済産業省 2006 , p. 95-96
^ 経済産業省 2006 , p. 1-7
^ 『ジャカルタ スカルノ・ハッタ国際空港 新ターミナル(T3U)への移転について 』(PDF)(プレスリリース)ガルーダインドネシア航空 、2016年8月4日。オリジナル の2016年8月22日時点におけるアーカイブ。https://web.archive.org/web/20160822114325/https://www.garuda-indonesia.com/files/pdf/jp/news/TYOGA-8-AUG16_final02.pdf 。2022年5月4日 閲覧 。
^ 『ガルーダ・インドネシア航空 ジャカルタ スカルノ・ハッタ国際空港 5 月 1 日より T3 の国際線運用開始 』(PDF)(プレスリリース)ガルーダインドネシア航空、2017年4月24日。オリジナル の2017年9月25日時点におけるアーカイブ。https://web.archive.org/web/20170925181629/https://www.garuda-indonesia.com/files/pdf/jp/news/TYOGA-2-APR17-FINAL1.pdf 。
^ “Garuda Moves International Flights to Terminal 3 Soekarno-Hatta Airport by May ”. Jakarta Globe (2017年3月29日). 2022年5月4日 閲覧。
^ 下川裕治 (2018年7月20日). “チェックインから搭乗口まで50分…やたらに広い空港が生まれる理由 ”. dot.asahi. 2018年7月25日 閲覧。
^ Garuda Indonesia resmi buka rute langsung Jakarta - Doha PP - ANTARA, 5 April 2024
^ “Expand Freighter Network from May 14th, 2014 ”. ANA Cargo (2014年4月30日). 2014年5月20日 閲覧。
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^ “【ジャカルタレター】空港までの大渋滞、連絡鉄道で打開 ”. SankeiBiz(サンケイビズ) (2017年4月19日). 2022年5月4日 閲覧。
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^ “空港鉄道が開通 都心から1時間 渋滞避ける新たな足 ”. じゃかるた新聞 (2017年12月27日). 2022年5月4日 閲覧。
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参考文献
外部リンク
空港情報 (ICAO:WIII · IATA:CGK)
空港概要 気象情報 その他