ゲルググ (GELGOOG) は、「ガンダムシリーズ」のうち宇宙世紀を舞台とした作品に登場する架空の兵器。有人操縦式の人型機動兵器「モビルスーツ (MS)」のひとつ。初出は、1979年放送のテレビアニメ『機動戦士ガンダム』。
作中の敵側勢力であるジオン公国軍の新型機で、赤い機体にシャア・アズナブルが搭乗し、主人公のアムロ・レイが搭乗するガンダムと死闘を繰り広げる。終盤のア・バオア・クーでの戦いには、緑とグレーに塗装された量産型が登場する。
本記事では、外伝作品などに登場するバリエーション機についても解説する。
メカニックデザインは、『ガンダム』総監督の富野喜幸によるラフスケッチをもとに大河原邦男がクリーンアップをおこなっており[1]、ラフの段階で基本デザインは完成している[2]。
一年戦争初期には空間戦闘用MSとしてザクIIが主力となるが、戦争中期には地球連邦軍のMSの情報が入ってきたことから、次期主力機の開発計画が立ち上がる[3]。そこで連邦軍MSへの対応を目指し、開発が仮承認されたジオニック社のXMS-11がゲルググ開発の起源となる[4]。連邦軍のRXシリーズのコンセプトを踏襲し、ビーム兵器の標準装備化や装甲の分離構想が持ち込まれる[5]。この時点では、次期主力機としてほかにザクIIの性能向上型やドムの宇宙仕様であるリック・ドム、のちにギャンと呼ばれる機体の案が提出されるが、あくまで本命はMS-11であり、ほかの案は繋ぎでしかなかったと言われている[3]。
MS-11の開発遅延に伴い[注 1]、主力機をリック・ドムとする案も出始めたため、ジオニック社は生産が中止されていたMS-06R-1Aを改修したMS-06R-2 高機動型ザクII(R-2型)にMS-11用ジェネレーターを搭載し、競作機として世に送り出している[6]。しかし、MS-06R-2は一部の性能こそリック・ドムを凌駕するものの、総合性能では劣っており[7]、MS-11完成までの繋ぎとしてリック・ドムが採用される[8]。その後、MS-06R-2の技術をフィードバックしてMS-11の開発が進められるが、11のナンバーは他の宇宙戦特殊機に移され、途中から型式番号はMS-14に変更されている[5]。
本機は、基本設計をジオニック社、スラスターなどの推進部をツィマット社(熱核反応炉も同社とする資料もある[9])、ビーム兵器の開発をMIP社と、各分野における有力企業が請け負ったことにより、ジオン公国軍が総力を挙げて開発した機体となっている。また、「統合整備計画」による規格共有化が3社の技術提携を生み、その成果が本機に活かされている[10]。なお、ビーム兵器の開発は機体完成よりも3か月遅れている[5][11]。
試作1号機はクリーム・イエローの視認塗装がほどこされてグラナダ基地での各種機能試験に参加[4]、ギャンに圧倒的な大差をつけ次期主力MSとして制式採用される[12][注 2]。数値上の機体性能はガンダムと同等以上と破格の高性能を誇っており、量産があと1か月早ければ一年戦争の行く末が変わっていたかも知れないとも評された[14]。
本機の一般的なカラーリングは、テレビ版及び劇場版「めぐりあい宇宙」では胴体がグリーン、頭部および手足はグレーの塗色になっており、プラモデルの塗装指定もそうなっている。ゲーム「ギレンの野望 ジオンの系譜」では、何故かザクIIと同じグリーン系の濃淡とされたが、続編「アクシズの脅威」シリーズでは、テレビ版準拠のカラーに変更された。
全52話の予定で書かれていた監督の富野の当時のメモによると、当初の呼称はギャンだった[21]。
ギャンとの競作の設定は『ガンダムセンチュリー』が初出で、『MSV』に引き継がれ、ゲーム『機動戦士ガンダム ギレンの野望』でも再現されている。ただし、テレビシリーズ、劇場版、またその後の映像作品においては触れられていない。また、テレビシリーズの劇中ではマリガンのセリフで「ゲルググの装備は終わっているが、プロトタイプなので完全とは言えない」とシャア専用機がプロトタイプであることが語られている。
高性能だった本機が十分な実績を残せなかった理由については、作中で実戦配備は熟練パイロットの不足した戦争末期であり、多くが学徒動員の新兵によって操縦され、その真価を発揮することができなかったためと語られている[注 4]。また、ザクIIを愛機としていたシャアはテキサスコロニーにてガンダムに敗れた時には「慣らし運転もしないで使うと…」と発言しており、機種変更にはある程度の慣熟訓練を必要とすることを示している。のちの資料では、「熟練パイロットも愛着があり扱い慣れているザクIIやリック・ドムを好んで搭乗し続けた者も多かった」[注 5]「ジオン製MSは統合整備計画の実施まで操縦系統が統一されていなかったため、機種転換時にそれが問題となった」とする説もある。
一方、『MSV』では初期型が多数配備された「エース部隊」が設定された。その後の映像作品(『機動戦士ガンダム MS IGLOO』)や外伝漫画・ゲームなどでも、本機に搭乗するエース・パイロットが多数登場している。
『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』では、「ジオニックの新型」の名称でのみ登場(型式番号:MS-14)[22]。
マリガンのセリフで、シャアが鹵獲したガンダムをリバースエンジニアリングした簡易型ガンダムの量産計画が制式採用され、ゲルググの開発が中止になったことが作中で語られていた。
量産型に先駆けて[11]宇宙世紀0079年10月に少数生産された機体[3]。25機が製造され[11]、そのうちの1機がシャア・アズナブル大佐に渡されている[24]。
残る24機は、各地で名を馳せたエースパイロットを招集し、編成されたエースパイロット部隊「キマイラ」に全て配備されている。次いで支給された12機分のB型およびC型バックパック(後述)が支給され、B型で出撃して一時帰艦後にC型に換装し、再出撃するという戦法も取られていたとされる。
量産型の生産はジオン公国本土、グラナダ、ア・バオア・クーなど各工廠で行われている。ゲルググ全体の生産数は資料によっては738機ともいわれる[注 8]。先行量産型と外観上大きな差異は見られないが、緑の胴体にグレーの頭部と四肢という塗装が制式採用されている。しかし、ビームライフルの本格生産が11月だったため完全な配備が遅れ、一年戦争の最終決戦となったア・バオア・クー戦に参加したのは67機である[32]。なお、先行量産型同様に増速用ブースター、ビーム・キャノンパックのオプションを装備することが可能である。
しかしながら、配備は一年戦争末期であり、既に多くのベテランパイロットが失われていたため、劇中では主に学徒兵が搭乗し、訓練不足のため機体の性能を十分発揮できないまま多くが撃破されている[32][注 9]。
メカニックデザイン企画『モビルスーツバリエーション(MSV)』で設定された。
もともとは、1982年発行の書籍『SFプラモブック(1) 機動戦士ガンダム REAL TYPE CATALOGUE』掲載の大河原のカラー背面画稿(名称は「ゲルググ用オプションバーニヤ」)が初出で、その後『ホビージャパン別冊 HOW TO BUILD GUNDAM 2』に小田雅弘によるB型・C型コンビの模型作品が発表され、ドイツ空軍のノヴォトニー部隊を思わせるエリート部隊に配備されたとの設定がついたことで、B型およびC型の性格付けが明確なものとなった。ゆえにこの当時は「戦闘機型」と称されており、『MSV』としてのプラモデル商品化に際して「高機動型」と改称された。
また、小田は自著『ガンダムデイズ』において、大河原の画稿では「赤い彗星のゲルググと思しき機体」にブースター・パックが付いているため、アニメ劇中と整合が取れないことから、『MSV』では後述のYMS-14B(ジョニー・ライデン専用機)であると設定したと述べている。しかし、のちの漫画『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』ではシャアのゲルググに同パックが付いており、驚いたという[44]。
MS-14A(もしくはYMS-14)の背部に増速用ブースター・パック[45]を装着した機体。
メカニックデザイン企画『MSV-R』で設定された。初出の『ガンダムエース』2009年11月号では「キマイラ艦隊所属 ア・バオア・クー戦仕様」と表記されている。
脚部の装甲を取り外して大型のスラスター・ユニットを装備しており、この脚部が高機動型ザクIIに似ていることから「ゲルググR」の通称でも呼ばれる。更なる機動性の向上と引き換えに稼働時間が短縮されているが、使用者がキマイラ隊のエースパイロットであるためプロペラント不足は問題となっていない。
ツィマット社工場で2機が改装されて予備パーツと共に納入され、キマイラ艦内でB型1機がこの仕様に改修されている[50]。
漫画『機動戦士ガンダム U.C.0096 ラスト・サン』では、ロック・ホーカー連邦軍大佐に雇われ、ラビアンローズ級ドック艦と合流しようとする連邦軍輸送艦「アンヴァル」を襲撃する、ゲルググ・タイプのみで構成される傭兵部隊の1機として2コマのみ登場、しかし2コマ目で撃墜される[51]。キマイラ隊との関連は不明。
OVA『機動戦士ガンダム MS IGLOO -黙示録0079-』第3話に登場(型式番号:MS-14)。
同作品に登場するゲルググは、すべてが量産型の塗装で(後述のカスペン機を除く)バックパックを装備している。このバックパックは、B型用のものから中央部のブロックや両側面のサブ・スラスターがオミットされており、本機は高機動型ゲルググに準じる機体と考えられている[56]。スペック(高さ・重量)は量産型に準じる[56]。
『MSV』で設定された。MS-14A(またはYMS-14)の背面にビームキャノンパックを装備し[57]、頭部を補助カメラが追加されたものに換装した機体。
重火器支援型とされ[57]、RA2タイプのビームキャノンを装備するが[58]、これはもともと、開発が遅れていたビームライフルの代替として、水陸両用MSのメガ粒子砲の技術を転用したものであったともいわれる[59]。
一年戦争終結までに生産、配備された数は15機にとどまっているが、それとは別に122機分のパーツが用意されている[57]。
『MSV-R』で設定された機体。初出の『ガンダムエース』2009年11月号では「キマイラ艦隊所属 ア・バオア・クー戦仕様」と表記されている。
脚部にコンフォーマルタンクを増設しており、稼働時間が通常のゲルググキャノンの3割増しとなっている。また、オプション装備としてビームキャノンパックから短時間で換装できるB型のものに似た高機動ランドセルがあり、携帯兵装用のマウントラッチによるジャイアント・バズなどの携行が可能となっている。
PCゲーム『機動戦士ガンダム リターン・オブ・ジオン』に登場(型式番号:MS-14C-2)。
ドム中距離支援型の後継機としてゲルググを中距離支援用に改造した機体であり、ゲルググキャノンとは開発系統が異なる。型式番号も現場での便宜上のもので、正式なものではない模様。
これとは別に、漫画『機動戦士ガンダム MSV-R ジョニー・ライデンの帰還』第1話冒頭のシミュレーションには「MS-14C-2」の型式番号を持つ機体が登場している。型式番号はモニター表示で確認できる。判別できる外見は通常のゲルググキャノンと同一。
ゲーム『機動戦士ガンダム外伝 コロニーの落ちた地で…』及び『機動戦士ガンダム戦記 Lost War Chronicles』に登場した量産型陸戦用MS。
ゲルググの大部分はソロモン、ア・バオア・クー、グラナダなど宇宙へ投入されたが、一部地上へ配備されスラスターの調整や防塵処理などを行われた物が主にG型と称される。
『コロニーの落ちた地で…』に登場したヴィッシュ・ドナヒュー中尉機は、腕部のグレネードランチャーとアームガトリング、陸戦用に小型化されたシールド、パーソナルマーク以外は通常の量産型ゲルググと同じ装備である。なお、小説版のイラストでは、ゲルググJのビーム・マシンガンを構えている(ただし描写としては通常のビームライフルである)。
『Lost War Chronicles』に登場した本機は、背部にバックパックを装着し、大型のビーム・ライフルと小型シールドを装備している(MMP-80マシンガンも装備)。漫画版ではジオン公国軍MS特務遊撃隊(外人部隊)のケン・ビーダーシュタット[注 17]が搭乗した。小説版ではジオン軍特殊部隊「屍食鬼隊(グール隊)」のクロード隊長が搭乗し、外人部隊副官のジェーン・コンティが操縦するハイゴッグに撃破された。
現在確認されているのは前述の2機のみである。
『MSV-R』で設定された機体。
陸戦型ゲルググの砂漠仕様で、ザク・デザートタイプと同型のランドセルを装備[66]。開発地のキャリフォルニア・ベースの生産性や部品供給能力が戦況悪化により低下したため、設計の一部変更による脚部スラスターの除去がなされ、ホバー機能がオミットされた[66]。脚部スラスターの除去によって、脚部のアウトラインが通常型よりも小さくなっている[66]。機体の軽量化により機動性能が向上したため、MS-14シリーズのシールドを流用した[67]小型シールドが用意された。専用のビーム・ライフルは砂漠で使用するため、銃身の冷却システムを追加装備しており[66]、通常型より小型化されているため出力が15%ほどダウンしている[67]。本機は生産性の低下に加えキャリフォルニア・ベースからの撤退も重なり、8機で生産を終了している[66]。
『ΖΖ-MSV』において設定され、アニメ版『機動戦士ガンダムUC』にも登場[70]。「ディザートゲルググ」とも表記される[要出典]。
ゲルググのバリエーションのひとつであり、砂漠・熱帯地帯での運用を主眼に開発された[70]。バックパックに備えた砂中潜行用スコープが特徴で[70]、ゲリラ戦・隠密行動を得意とする。アフリカ戦線に極少数が投入されたが、その実働数は極めて少ないものだったという。
元は『ΖΖ』にMSVを登場させる際にデザインされたMSの1つ[71]。OVA『機動戦士ガンダムUC』登場にあたってリファインされ、左腕のアームド・バスターが実体弾仕様の折り畳み式キャノン砲と設定された。
スマートフォンゲームアプリ『機動戦士ガンダム U.C. ENGAGE』に登場するゲームオリジナルMS(型式番号:MS-14L)。名称の "L" は「ランツィーラー」の頭文字[72]。
要人護衛のため、推力と運動性を活かして広範囲に被害を出さずに迎撃対応するというコンセプトで開発された親衛隊仕様機。A型に簡易型ランドセルを装備し、さらに携行するヒート・ランスにもサブ・スラスターを内蔵することで突撃時の威力を高めている。また突撃時の耐久性を確保するため、大型のシールドを装備。このようなコンセプトはのちのロイヤルガードの機体へと続くことになる[73]。カラーリングはA型の標準塗装を踏襲している(武装を除く)。
ア・バオア・クーにも配備されるが、ベテラン兵士の機種転換が間に合わず学徒兵が搭乗したといわれる[73]。
『U.C. ENGAGE』に登場するゲームオリジナルMS。名称の "Ls" は「ランツィーラー・シュッツ」の頭文字[74]。
ゲルググLにバルカン砲を装備した頭部パーツを採用し、装飾をほどこした仕様。ミナレットで設計され、バルカン砲はザクII FS型やゲルググM(指揮官用)のデータからシミュレートされたものであり、装弾数増加のため頭部は大型化している[73]。カラーリングは濃淡の紫を基調とする。
OVA『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』に登場するデラーズ・フリートの量産型汎用MS。デザイナーは明貴美加。
Mはマリーネ(ドイツ語: MARINE)の名の通り、海兵隊仕様のゲルググ。小説版『0083』によれば星の屑作戦開始時点のシーマ艦隊において少なくとも30機以上が稼動状態にあったという。肩アーマーがスリムで頭部のトサカ部分が薄く大きいのが特徴。
劇中ではこれを所有するシーマ艦隊が隠遁する中で補給もなくビーム・ライフルの多くを失っているらしく、他の機体と共通の90ミリマシンガンを携行する[注 18]。一方、腕への着脱が可能なスパイクシールド、下腕部に内蔵された110mm速射砲という独自の武装も装備している。110mm速射砲は連邦新鋭機であるジム・カスタムのシールドを粉砕し、装甲を貫通する威力があった[注 19]。このうちスパイクシールドはザクIIのものを流用しており、盾としてだけではなく、スパイク部分で殴りつける格闘武器としても使用できる[注 20]。ビーム・ナギナタではなく、片側出力式のビーム・サーベルを両腰に1本ずつ装備しているが、その形状は後のリック・ディアスやネモなどが装備しているものに酷似している。また下腕部の内蔵武装などゲルググJとの共通点が多い(詳しくはゲルググJの項参照)。防御面はほかのジオン軍MSと同等であり、劇中、ジム・カスタムのジム・ライフル(90ミリマシンガン)でたやすく撃破される。
OVA『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』に登場するMS。MS-14Fの指揮官仕様。プラモデルHGUCでの商品名は「ゲルググマリーネ シーマカスタム」となっている。
シーマ艦隊を率いる、シーマ・ガラハウ中佐の機体。隊長機の証ブレードアンテナを備える。「マリーネ・ライター」という愛称で呼ばれていた[75]。カラーリングは紫の胴体とカーキの四肢。専用武装として貴重な大型ビームライフルを装備し、頭部にはバルカン砲を内蔵している。防御装備としては、覗き穴つきの大型シールドを携行。大型シールドは第5話でジム・キャノンIIが発射したビームキャノンの直撃で消失し、以後は補充されない。機動性の改善としてスラスターの追加、稼働時間の確保にプロペラントタンクを一般機の倍の4基装備している。
なお、Fs型は劇中登場したシーマ機以外には確認されていないため、上記の特徴がFs型全般に見られるものなのか、シーマ機用に独自に改修したものかは不明。そもそもFs型自体がシーマ機1機のみのワンオフ機体であった可能性もある[76]。
漫画『機動戦士ガンダム0083 REBELLION』に登場。作中では「ゲルググR“リベリオン”」と表記されるが、連載終了後の『ガンダムエース』の連載記事「0083 REBELLION PLAYBACK」でゲルググMやJ同様の括弧書きに変更された。夏元によれば、ゲルググMをベースに格闘性能を高めた機体というコンセプトであり、公国系の格闘戦特化型MSと言えばイフリートということでイフリート・ナハトの要素を多分に盛り込んだとのこと。また、ガトーを名乗る者が搭乗するため、ケレン味が出るよう意識したという[77]。
サイド3のファーム・バンチ「アマテラス」の前領主であり、MSの開発にも携わっていたジュウゾウ・アマトが最後に改修した強襲機動型仕様。上半身はFs型、下半身はイフリート・ナハトに近い外観となっている。肩部アーマーにはスパイクが3本ずつ追加され、頭部はF型系列をベースにモノアイ・レールがイフリートのような形状となっている。ガトー少佐の部隊章が描かれた小型のスピア・シールドはスラスターを搭載しケーブルで繋がれており、射出が可能[77]。A型ガトー機と同型のロングレンジ・ビーム・ライフル(破壊された後はFs型のビーム・ライフル)を携行。一説によればナハトと同様のステルス機能が装備されているとされ[77]、熱源をもたない直刀コールド・ブレードを両腰に、膝部側面にコールド・クナイを装備[78]。また、右前腕部甲に110ミリ連射砲、左前腕部甲に展開式の3連装35ミリガトリング砲を装備する[78]。カラーリングもA型ガトー機を踏襲している。
アナベル・ガトーを名乗る者が搭乗。0084年の「アマテラス」を巡る戦いの終盤で、ティターンズ所属のベルナルド・モンシアのハイザックと一騎討ちとなり、右肩口にビーム・サーベルの斬撃を受けて行動不能となる。
OVA『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』に登場。デザイナーは出渕裕。
一年戦争終結直前に完成した、ゲルググの狙撃型[80]。火器管制システムはハード・ソフトともに最新鋭のものを搭載しており、精密射撃任務に対応可能[82]。名称の「イェーガー」はドイツ語で[82]「猟人」の意[80]。
本機は単なる武装や仕様の変更にとどまらず、事実上の新設計機であると言っても過言ではないとされる[80]。また、統合整備計画にもとづく標準化が当初から設計に取り入れられており[82]、生産工程の簡略化や機体強度の向上、スラスター推力の改善が図られ、第2期生産型と呼ばれる標準化コックピットが採用されている[82]。ジェネレーターは新型のものをさらにチューンアップしたものが搭載され[80]、リア・スカートの推進器(B型のを再設計したものともいわれる[83])の増設をはじめ、姿勢制御用スラスター(アポジモーター)の数も当時のほかのMSよりずば抜けており[80]、宇宙空間における機動性と運動性が向上している。ランドセルにはプロペラントタンクを2基装備可能で、これにより通常の200パーセントの長時間行動が可能となる[80]。以上により、本機は初期型のゲルググと比べてもかなり高い性能をもつ機体として完成する[80]。指揮官クラスのパイロットへの配備が想定されており、ランドセルにはレーザー通信用のユニットとアンテナが装備され、頭部のブレード・アンテナも標準装備である[82][注 23]。また、初期型のゲルググと比較しモニター視界も良好となった[80]。終戦直前に完成した[80]ゲルググの最終生産タイプであり、生産数は少ない[84]。
漫画『機動戦士ガンダム C.D.A. 若き彗星の肖像』に登場(型式番号:MS-14U)。デザイナーは石垣純哉。
ガンダムとの戦闘で破損したシャア・アズナブル専用ゲルググをアクシズにて外宇宙戦用に改修した機体。ア・バオア・クーにて破損した箇所を110mm速射砲を内蔵したF型右腕やB型バックパックなどほかのMS-14系統のパーツで補い改修され、ジオングを失いア・バオア・クーに帰還したシャアが使用したが、戦闘中にバーニアの不具合等が発生したため、アクシズにて全面的に改修・再調整された。流線的なフォルムになっており、新たに頭部にバルカン砲が内装された。また、ジェネレーターを内蔵した試作品の大型ビーム・ライフルを装備することもあった。シャアが操縦する事を想定して調整されているため、一般のパイロットにはかなり操縦しづらい機体となっており、アンディがシャアの代わりにこの機体を操縦したさい、その機体のピーキーさに驚いている。
なお、アクシズに配備されたゲルググもまた外宇宙用に改修されており、シャア機とのパーツの共有性がはかられていた。
デザイナーの石垣によると、既存の機体とのデザインの違いはあくまでも『C.D.A.』作内での表現によるもので、映像化された場合は既存の物と同じデザインである、としている[89]。
「サイバーコミックス」にて連載された小説『TOP GUNDAM』に登場[注 25]。デザイナーは小林誠。
一年戦争後、地球連邦軍が鹵獲ののちに運用しているゲルググの改修機。宇宙世紀0080年代後半においても、旧式化しているものの地上攻撃用MSとして配備されている機体が存在しており、連邦軍のパイロット訓練校「TOP GUNDAM」が所属する洋上ホバー空母「グラーフ・ツェッペリン」にも数機が艦載されている。
雑誌企画『ADVANCE OF Ζ ティターンズの旗のもとに』に登場(型式番号:MS-14)。
頭頂高は19.2m[90]。ジオン残党軍に所属する機体で、カザック・ラーソンが搭乗する。ゲルググM系の改修機で、肩部を増加スラスターを追加したものに換装[91]。胸部も増加装甲を追加[92]。バックパックも独自建造したものを装備。上背部にはこの部隊特有の装備である通称「ウインチユニット」と呼ばれる有線誘導式の遠隔操作アームが2基設置されている。頭部にはワイヤーカッターを装備している[92]。携行武装はFs型のMRB-110 ビーム・ライフルとシールド[92]。
『機動戦士ガンダムΖΖ』、およびOVA『機動戦士ガンダムUC』に登場。メカニックデザインはあさのまさひこ、命名は高橋昌也[96]。初期稿ではバックパックにスタビライザーが付いていたが、かときすなお(現・カトキハジメ)がバックパックを修正した際に無くなった[97]。
アクシズに逃げ延びた公国軍残党(ネオ・ジオン軍)が、ゲルググをベースに改修・製造した機体。名称は「リファインド・ゲルググ (REFINED GELGOOG)」の略[98]。
一年戦争後、ゲルググはアクシズの居住区拡張作業に従事するが、ガザA・Bが開発されて以降は一線を退く[94]。やがて、ネオ・ジオンの地球圏帰還作戦が本格化し始めた段階で旧式MSは訓練用として再び日の目を見るが、ゲルググといえども当時の新型機と比べて完全に旧式化していた[94]。しかし、改修によって第一線級のMSと同レベルの性能に引き上げられる[94]。アクシズの若手パイロットは皆必ず本機で訓練を積み、MSの操縦を学んだという[94]。
一方で、ネオ・ジオン軍がジオン復興のシンボルとしてゲルググを指揮官用に大改修したのが本機であるともいわれる[99]。新規にも製造され[100]、親衛隊「ロイヤル・ガード」の小隊長機としても運用されている[101]。このため、在来機から改修された機体は「一般機」として区別されることもある[100]。
最大の特徴は、2倍以上に延長された巨大なショルダー・アーマーである。同じアクシズ製MSのキュベレイのフレキシブル・バインダーを参考に設計されており、内部には3基ずつのバーニア・スラスターを内蔵する。これはシールドも兼ねており、「ウイング・バインダー」と呼ばれる[94]。プロペラントタンクの増設により、強力な推進力の発揮や一撃離脱などの高速戦闘を可能とした。コクピットモジュールには当時普及していた全天周囲モニター・リニアシート方式の球形ポッドを採用し、インターフェイスも第2世代MSに準じた改修が行われた。なお、ノーマルのゲルググとは異なり、コクピットハッチの開閉ヒンジは上方に設けられている。
矢立文庫のWeb企画『アナハイム・ラボラトリー・ログ』に登場。
一般機とされるが、偵察部隊用としてゲルググMのバックパックに換装されており、作戦行動時間が延長されているという。ただし、プロペラント・タンクを除くバックパックの外観はリゲルグのものであり、スペックの数値も変更はない。主兵装はプルバップ式360ミリロケット砲(360ミリロケット・バズーカや360ミリロケット・ランチャーとも呼ばれる)を携行し、グレネード・ランチャーは左腕のみ装備とされるが、外観からは両腕に確認できる。シールドはゲルググM(指揮官用)と同じ大型のものを装備し、機体色はA型やゲルググMの標準塗装と同じである。
地球圏帰還直後のアクシズより、ドラッツェ改2機とガザC3機を率いて偵察活動をおこなう。エゥーゴの輸送部隊と遭遇してMS隊を殲滅するが、積荷のガンダムMk-IIIが起動して交戦するも劣勢となり、最後は味方の砲撃の盾にされて撃破される。
漫画『機動戦士ガンダム MSV-R ジョニー・ライデンの帰還』に登場[注 29]。型式番号から「ゲルググJ/BR」とも呼ばれる[106]。基本デザインは大河原邦男[111]、3機種のカラー設定画も大河原によって描かれている[109]。なお、「ウェルテクス」は「渦巻」や「頂点」を意味するラテン語[注 30]。
宇宙世紀0090年のAE社のキマイラ隊主力MS開発計画「ウェルテクス・プロジェクト」において製造された機体[112]。基礎概念[106]および開発主査[112]はFSSのリミア・グリンウッドが担当[106](姉のアマリアもサポート)、実設計と開発[106]・製造[112]には、過去にリック・ディアスなどを設計開発した第2研究事業部が携わっている[106]。コンペイトウ宙域での戦闘で得られたレッド機のゲルググに残っていた、サイコミュシステムを発動させた状態のシャア専用ディジェをデータを元に、同機を仮想敵としてそれに対抗できるための必要なスペックを維持しつつ、短期間での開発が求められている状況において、新規使用部材の検証期間や設計・開発期間を大幅に短縮するため、フークバルト・サマターから提供されたAE社が過去にハマーン・カーンとの取引(ネオ・ジオン軍が勝利した暁には、軍備の生産はAE社が請け負うという契約)により、事前にAE社から提供されたネオ・ジオン製MSの機体のデータ群の中から、リゲルグの基礎設計をベースとしている[106]。
リゲルグのバックパック側面に、同じくリゲルグの肩部ウィング・バインダーを接続している。基部が柔軟に可動することから「アクティブ・バインダー」と呼ばれ、制御システムはAE社が過去に関与したガンダム開発計画で同じ基礎概念をもつ機体(試作1号機フルバーニアン[113])の実戦データが流用されている[106]。プロペラントタンクはリゲルグのものより大型化されている[112]。機体本体はAE社が非公式にキマイラ隊に供与していたゲルググBR型の先進改修機をブラッシュアップし、フレームから構造を見直すとともに装甲材を第2研究事業部が使い慣れているガンダリウム系に変更している[106]。腰部アーマー裏のスラスターは、リゲルグと同様の5発に増強されている。両前腕部甲には、当初はこちらもリゲルグと同様のビーム・ガンが装備されていたが[112]、のちにグレネード・ランチャーに変更されている。
漫画『A.O.Z Re-Boot ガンダム・インレ-くろうさぎのみた夢-』に登場(型式番号:MS-14J.zm[116])。作中では単に「ゲルググ」と呼ばれる。
火星のジオン残党組織「ジオンマーズ」が、リゲルグの設計データをもとに新規設計した機体。おもにエース・パイロットや指揮官用の機体として位置付けられており、先行生産された機体群はおもにジオンマーズ総司令アウトロー・チェスターの息子であるチェスターJr.が率いる艦隊に配備され、アクシズの支援のため地球に送られている。その後、本格的に生産される予定であったが、レジオン建国戦争の勃発により遅延する[116]。チェスターJr.自身も頭頂部にブレード・アンテナを追加した指揮官機に搭乗するが、これはキマイラ隊の一員であった父の搭乗機になぞらえたものとされる[117]。外観や機構に、のちのネオ・ジオン軍の指揮官用MSとの共通点が多く見られる[116]。カラーリングは量産機がゲルググと同様で、指揮官機はシャア専用機のような濃淡の赤を基調とする。
主兵装はビーム・ライフルを携行するが、指揮官機用は速射性能が強化されている。前腕部甲にビーム・ガン、頭部にはバルカン砲が内装されている。バックパックはリゲルグと同系統だが、上部のミサイル・ポッドは大型の可動式のものを左右に装備、装弾数も各8発と増加している。ビーム・ランスもリゲルグと同様[116]。大型のシールドはのちのメッサーのものと類似している。
漫画『機動戦士ガンダムF90』およびゲーム『機動戦士ガンダムF91 フォーミュラー戦記0122』に登場。
宇宙世紀0120年代にオールズモビル(火星独立ジオン軍)が旧ジオンのゲルググに外見を似せて開発した機体。同軍の主力機であるRFザクと比べて機動性に優れており、同軍の運用するMSの中では最高クラスの性能であるがコストが高いために生産数が少なく、上級指揮官かエースパイロットのみが使用している。設計母体にRFドムと共通のユニットを採用していることで武装・整備性ともに非常に高い互換性を持っている[118]。緑のカラーリングの一般機と、エースパイロット向けにより性能を強化された赤いカラーリングの機体(通称アカゲルググ)が存在する。またキャノン砲を搭載したタイプも存在する[118][119]。宇宙世紀0120年代の技術でリファインされており一年戦争時の機体とは比較にならない性能を誇るものの、スペックは第二世代の水準にとどまっているため機体サイズは当時の最新鋭である15m級小型MSのF90と比較し大型となっている。
『F90』劇中では通常タイプとキャノン砲を搭載したタイプが登場。通常タイプは劇中序盤でサナリィのF90強奪作戦に参加。キャノン搭載タイプは火星独立ジオン軍のベイリーがパイロットを務め、RFギャンとともに火星に降下したデフたちの部隊と交戦し、STガンを鹵獲している。『フォーミュラー戦記0122』においては序盤では隊長機、終盤ではシャルル艦隊の機体が登場している。
ゲーム『機動戦士ガンダムF91 フォーミュラー戦記0122』に登場。
オールズモビル軍のエース、シャルル・ロウチェスターの専用機。RFゲルググがベースとなっているが、極秘裏に接触したクロスボーン・バンガードの技術供与で完成した高性能機である[118]。そのためか、これまでのRFゲルググとは比べ物にならない性能を持っており、旧来的な大型MSながらも小型MSにも引けを取らないほどで、戦闘力はF90に迫るものとなった。ただし、スラスターの増設などにより外観は肥大化し、ゲルググや在来のジオン系とはかけ離れたデザインになっている。
腕部にビームランチャー、腰部にビームサーベル2本を備える。特筆すべき装備としてこの時代の先端技術であったビームシールドの装備があげられる。ビームシールドは防御だけでなく攻撃にも転用可能な高い出力を誇っている。シールドユニットは通常両肩のバインダー内に収納されており通常は露出していないが、その表面にはクロスボーンの紋章が刻まれている[118]。
オールズモビルの運用する機体はリファインされて性能が向上していたものの、当時の最先端の技術が採用されたMSではなかった[120]。オールズモビルにおいてはこの機体と強奪したガンダムF90 2号機のみが当時の連邦軍の最新鋭の機体と互角に渡り合える性能を持っていた[120]。
『フォーミュラー戦記0122』では劇中最終面に登場。壊滅したオールズモビルの残存戦力と共にシャルル・ロウチェスターがクロスボーン・バンガードの陽動作戦の囮としてこの機体を駆り出撃、ベルフ・スクレットの機体と交戦するも撃破されている。
漫画・OVA『機動戦士ガンダム サンダーボルト』に登場(型式番号:MS-14)。
関節部にはシーリングが施されている。前腕部にはサブ・アームが追加されており、これでシールドを2枚装備することも可能である。バックパックは大型ビーム砲座「ビッグ・ガン」のものを転用したビーム・ジェネレーター[121]を中央に、スラスター一体型のプロペラント・タンクを斜め四方に装備している。このビーム・ジェネレーターはケーブルにより、主武装であるバレル開放型の大型ビーム・ライフル[122]に接続される。なおビーム・ナギナタはシールドの裏に2本収納されている[123]。
セイレーン機動艦隊に多数配備され、リビング・デッド師団の救援のため旧サイド4のサンダーボルト宙域に到達するが、すでに戦闘は終了していたため、同師団の生き残り、および捕虜とした連邦兵やガンダムの回収に従事する。その直後のア・バオア・クー攻防戦に参加、同師団のダリル・ローレンツ少尉も本機に搭乗するが、両義手・両義足となった彼がすぐさま通常MSを操縦するのは困難であり、撃墜寸前まで追い込まれている。
漫画『機動戦士ガンダム サンダーボルト』に登場(型式番号:MS-14)。
一年戦争後連邦軍が接収した開発データを基に新規製造されたゲルググ。基本的な外観はオリジナルと大差ないが、頭部センサーはモノアイではなく連邦系MSの特徴であるバイザーに覆われている他、腕部も連邦系の直線的なデザインのものに代わっている。
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