グレンフェル・タワー火災 （英語 : Grenfell Tower fire ）は、2017年 6月14日 にイングランド ・ロンドン 西部に建つ高層住宅棟（タワー・ブロック ）「グレンフェル・タワー 」で発生した火災 。日本での報道では単に「ロンドン高層住宅火災」[ 1] [ 2]
同16日に完全鎮火したと発表された[ 3] [ 4] [ 5]
グレンフェル・タワーの名前は、建設時に南側を走っていたグレンフェル道路に由来し、また、グレンフェルという固有名詞は、英国軍人だったフランシス・グレンフェル （英語版 ） 陸軍元帥 に由来する。
改修前のグレンフェル・タワー（2009年） グレンフェル・タワーはノース・ケンジントン地区の高層住宅である。ノース・ケンジントン地区のあるケンジントン・アンド・チェルシー区 は富裕層などが住む地域として知られているが、この地区には貧しい地域も点在しており、ノース・ケンジントン地区はその中の1つである[ 6] [ 7] [ 8] [ 7] [ 9] [ 10] タワー・ブロック と呼ばれるタイプの高層住宅であり、グレンフェル・タワーのような低所得者向けのカウンシル・フラット（公営住宅）にしばしば利用されているタイプの建物だった[ 11] [ 12] [ 9] モロッコ人 が多かったという[ 13] ムスリム の住民も居住しており、ラマダン の期間だった火災当日はムスリムたちが深夜に起きており[ 注釈 1] [ 13] [ 14]
2015年から2016年5月にかけて公営住宅地全体に予算860万ポンドの大規模な修繕工事が行われた[ 7] [ 7] [ 8] #外壁 ）、修繕を受けた他の高層住宅に対し点検が行われることになった（#高層住宅の点検 ）。
6月14日、現地時間午前6時頃のグレンフェル・タワー。 6月14日未明、ロンドン西部ケンジントン・アンド・チェルシー区 のノース・ケンジントン （英語版 ） ランカスター・ウェスト・エステート （英語版 ） [ 7] [ 注釈 2] [ 9] [ 15] [ 1] ロンドン消防隊 のダニー・コットン （英語版 ） [ 7] [ 16]
ロンドン警視庁 の同16日の発表時点で確認されていた死者は30人[ 1] [ 3] [ 17] [ 18] [ 19] [ 20] [ 注釈 3] [ 21] [ 22] [ 23]
不法入国したために処罰を受けないよう被害申告していない移民がいる可能性があり、最終的な死者は前述の79人を超えると考えられている[ 24] ガーディアン 」は住民が作成した一覧によれば死者は120人以上だと報道した[ 22] [ 21] [ 22]
15日時点で病院で治療を受けた負傷者は78人[ 25] [ 16] [ 2] [ 26] [ 21] [ 23]
消火後のグレンフェル・タワー（2017年6月16日） テリーザ・メイ 首相は15日、現場を視察した後に火災の原因や責任を解明するための公開調査を実施するよう命じた[ 2] [ 27] [ 28] [ 2] [ 25] [ 29] [ 21]
16日、ロンドン警視庁は火災は完全鎮火したと発表し、放火であることを示すものはなかったと述べた[ 3] ワールプール 社の「ホットポイント」ブランドの冷蔵庫が火元であったと警視庁が公開[ 21] [ 30] [ 21] [ 30] [ 21] リコール の対象になったことはないという[ 30] [ 21] 業務上過失致死 などの容疑で立件を検討しているとも語った[ 21] 過失致死罪 および殺人罪 に関する法令（en:Corporate Manslaughter and Corporate Homicide Act 2007 参照）に基づき、この2団体による過失致死を疑うだけの根拠があると伝えた[ 31] 罰金刑 が課されることになる[ 31]
16日、メイ首相は500万ポンドの「グレンフェル・タワー住民裁量基金」を創設すると発表した[ 15] [ 32] [ 33] [ 32] [ 15] [ 32] [ 33] [ 33] アロク・シャーマ （英語版 ） [ 23]
グレンフェル・タワーでは数年前から住民たちが防火対策を不安視しており[ 29] [ 27] 消火器 の使用期限切れなどの問題点を指摘し、火災のリスクがあると主張していた[ 8] [ 34] ニューズウィーク 』と仏国メディア『AFP 』は地元住民がこの火災に関して地方行政への不満を感じていることを報道し、防災上の不備を住民が指摘していたが無視されたという地元民の主張を掲載した[ 6] [ 35]
報道を元に作成したグレンフェル・タワーの外壁部分の模式図。コンクリートの外壁 (Concrete、図の灰色部分) の外側に断熱材 (Insulation、図の黄色部分) と外壁材 (Cladding、図の水色部分) が設置されているが、断熱材と外壁材の間に空洞 (Air cavity) がある。 この火災では短時間に建物全体に燃え広がり[ 27] [ 29] [ 29] タイムズ 』の掲載した目撃証言によれば出火から約15分で建物全体に火が回った[ 28] [ 27] [ 29] フィリップ・ハモンド 財務大臣はこの耐火性の低い外壁材について、欧州や米国だけでなく英国でも使用禁止だと認識していると述べた[ 36]
グレンフェル・タワーに使用されていた外装材は米国企業アーコニック （英語版 ） [ 37] [ 34] デイリー・テレグラフ 」の報道によれば、米国ではレイノボンドPEの40フィート (12 m)以上の建築物への使用は既に禁止されていたが、英国の基準には違反していなかった[ 34] [ 37]
イギリス保険協会 （英語版 ） [ 38]
英国紙『ロイター 』はグレンフェル・タワー改修工事の計画書に防火壁についての記載がなかったと報じた。この報道によれば、英国建築研究所 （英語版 ） [ 39] 日本経済新聞 』の報道によれば、グレンフェル・タワーの既存の外壁は厚さ250ミリメートルのコンクリート（右図の灰色部分）であり、改修時には厚さ150ミリメートルの断熱材（右図の黄色部分）と外装として厚さ3ミリメートルの亜鉛製金属パネル（右図の水色部分）で覆ったが、断熱材と外装の間に50ミリメートルの通気層（右図のAir cavity）が設けてあり、ここに炎が侵入して断熱材が急速に延焼した可能性が高いとする専門家がいる。また、断熱材が燃焼していた場合、金属パネルにより火元まで水が届かず消火に支障をきたした可能性も指摘されている[ 12]
自宅以外で火災が発生した際は室内に留まるよう掲示していたとの指摘があり[ 27] [ 8] [ 27] [ 40] [ 40] [ 40]
『日本経済新聞』の報道によると、各階にバルコニーがなく階段はエレベーターホールを囲んでいるコア部分の1箇所だけであり、2方向避難はできなかったという[ 12]
イングランドではビルへのスプリンクラーの設置義務は2007年以降に建てられた高さ30メートル以上の建物が対象であり、また英国では既存の建物にスプリンクラーを後付する義務はないため、グレンフェル・タワーにはスプリンクラーは設置されていなかった。ただ今回の火災では外壁部から炎が伝わって拡大していることからスプリンクラーがあっても差異はなかったとの意見もある[ 41] [ 34]
イギリスではこの火災への追悼集会や抗議集会が行われた[ 15] リリー・アレン 含む数百人が抗議のために集まった[ 42]
2017年6月21日、被災者支援のためのチャリティー・ソング『明日に架ける橋 』が発売された。サイモン&ガーファンクル の曲のカバー であり、音楽プロデューサーのサイモン・コーウェル の呼びかけで録音され、イギリスの著名なアーティストらが参加した[ 43] [ 44] [ 45] アデル [ 43] [ 46] ザ・フー のメンバー[ 43] [ 47] ジェームズ・ブラント [ 47] ジェシー・J [ 46] ジンジャー・スパイス [ 43] [ 46] ストームジー （英語版 ） [ 47] ナイル・ロジャース [ 44] ピート・タウンゼント [ 44] ピクシー・ロット [ 46] ブライアン・メイ [ 43] [ 46] リアム・ペイン [ 44] [ 46] リタ・オラ [ 43] [ 46] ルイ・トムリンソン [ 46] レオナ・ルイス [ 43] [ 47] [ 46] ロジャー・ダルトリー [ 44] ロビー・ウィリアムズ [ 47] [ 46] ロンドン・コミュニティ・ゴスペル・クワイア （英語版 ） [ 44] [ 47] ストリーミング 含めて17万ユニットの売上を記録し、英国のヒットチャートで1位を獲得した[ 46]
2017年6月21日、火災への対応を批判されていたケンジントン&チェルシー区の区長ニコラス・ホルゲートが辞任した[ 48] ニコラス・パジェット＝ブラウン （英語版 ） [ 31]
『BBC』の報道によれば、住民支援団体の「Silence of Suicide （自殺の沈黙）」創設者は少なくとも20件の自殺未遂があったと話している。また、住民団体「Justice4Grenfell（グレンフェルに正義を）」でボランティア調整を担当している看護師も、支援ボランティアの20名が自殺未遂をしたと聞いているという[ 49]
ロンドン市長 のサディク・カーン は今回の火災は防げた事故だったと述べた[ 50] オブザーバー 』に寄稿して1960年代から1970年代にイギリス全土で建設された高層公営住宅を全て建て直すべきだと提案した[ 33]
超党派の「防火安全救助議員連盟」の名誉幹事であるロニー・キング元消防総監は、議連では4年前から高層住宅の防火対策についてコミュニティ・地方自治省
に警告をしていたが無視されたと非難した[ 51]
6月14日、警察・消防を担当する閣外大臣のニック・ハード （英語版 ） [ 52] [ 53] [ 54] [ 30] [ 55] [ 56] [ 38] サジド・ジャビド 地域社会・自治相はこれまで安全性検査を行った75棟の高層住宅全てが不合格だったと発表した[ 37]
23日、ロンドンのカムデン区 議会は外装材の除去作業を実施するため地区内の高層住宅5棟の住民を避難させた[ 30] スイス・コテージ （英語版 ） [ 57] [ 55] [ 56] [ 57] [ 30] [ 57] [ 56] [ 12] [ 56]
^ ラマダンの期間中のムスリムは午前2時から2時半まで起きていて[ 13] [ 14]
^ 英国の1階は通常日本の2階に相当するため、5階から出火と記載する記事がある[ 7] 英国夏時間 で午前0時54分に通報が行なわれた[ 7] [ 7] [ 2]
^ 公開された写真では電化製品や自転車は原形を留めていたが食卓やソファは黒焦げになっており、水道管が露出しているなど火勢が強かったことが推察される[ 5]
^ “Cladding in London high-rise fire also blamed for 2014 Melbourne blaze” . the guardian . (2017年6月15日). https://www.theguardian.com/uk-news/2017/jun/15/cladding-in-2014-melbourne-high-rise-blaze-also-used-in-grenfell-tower 2017年6月16日 閲覧。
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