ハドソン川流域はアメリカ独立戦争を通じて戦略的に重要な地域であり続けた。この地域を通ってニューイングランドと南部の植民地の間で人と物が移動しており、戦争の後半でイギリス軍がニューイングランドを軍事的支配の標的としなくなってからは特に重要性を増した。1777年6月、ジョン・バーゴイン将軍はケベックから南に下ることで、この重要な地域の支配を目指す行動を起こした。その作戦の初期ではタイコンデロガ砦を落としたが、兵站の困難さに苦しんで、9月半ばにやっとサラトガまで到達しただけだった[5]。バーゴインはニューヨーク市を占領するウィリアム・ハウ将軍のイギリス軍がこの作戦を支援してくれることを期待しており、この2つの軍隊はサラトガから約40マイル (64 km) 南のオールバニで落ち合う予定だった[6]。
9月末までにニューヨークに到着した艦隊からさらに1,700名の兵士が上陸した。10月3日、クリントンは3隻のフリゲート艦と多くの小さな艦艇に3,000名を乗せてハドソン川を遡り始めた[17]。翌日、パットナムの部隊をピークスキルから誘い出す陽動行動としてタリータウン近くで幾らかの部隊を上陸させた。この部隊はその辺りを歩き回った後に再び艦船に乗り、さらに北に向かった。続いて10月5日にはピークスキルの南3マイル (4.8 km) にあるバープランクス・ポイントで同じような陽動行動を行った。そこでは防御のお粗末な大陸軍前進基地を排除した[18]。この陽動行動が完全にパットナムを騙すことになり、パットナムは東部の高台に軍勢を引き、ハドソン川の対岸に援軍を要請する伝言を送った。
10月6日の朝は霧が掛かっていた。ヘンリー・クリントンはハドソン川の西岸ストーニー・ポイントで2,100名を上陸させ、ロイヤリストの道案内で「ティンプ」と呼ばれる高台に上った。そこから反対側のドゥードルタウンと呼ばれる場所に降りると、クリントン知事が派遣していた偵察部隊に遭遇した。その部隊は短時間の銃火を交わした後にクリントン砦の方向に退却した。ヘンリー・クリントンはその後に2つの砦を取るために部隊を2つの攻撃隊に分けた[21]。キャンベル中佐の率いる約900名は第52および第57連隊、ドイツ人傭兵の猟騎兵分遣隊、およびビバリー・ロビンソンが指揮する400名のロイヤリストで構成され、モントゴメリー砦に向かう谷回りの7マイル (11 km) の道を進み、一方ヘンリー・クリントンは残る1,200名と共にドゥードルタウンで暫く待機して、時間の掛かるキャンベル隊と同時に両砦に攻撃を始められるような時刻に、クリントン砦への道を進んだ[2]。
モントゴメリー砦からの派遣部隊は約100名であり、ジョン・ラムが指揮する小さな大砲1門も含まれていた。この部隊は砦から約1マイル (1.6 km) の地点に防衛的な陣地を敷き、キャンベルの疲れた部隊と戦った。この部隊は結局撤退を強いられたが、野戦砲をイギリス軍に渡してしまう前に砲架を釘止めすることができた。砦の近くで今度は12ポンド砲に支えられて再度抵抗し、このときも後退した(大砲はこのときも釘止めされた)。この頑固な抵抗のためにキャンベルは日没前1時間ほどになってやっと配置につくことができた(ドゥードルタウンを出発したのは午前10時ころだった)[2]。クリントン知事は降伏する機会を与えられたがこれを拒否し、戦闘が始められた[22]。
クリントン砦への主たる進軍路は小さな湖と川の間の幅400ヤード (360 m) の狭い帯状の土地を通るものであり、砦は大砲で防御されている上に、クリントン知事が逆茂木を置かせてイギリス軍の前進を阻んでいた[22]。ヘンリー・クリントンは第63歩兵連隊に湖を回り込ませて北西方向から砦の攻撃に向かわせ、まず第7および第28連隊の軽歩兵中隊とノイアンスパッハの擲弾兵中隊を砦の主要工作物に向かわせ、その後を第26歩兵連隊と第17竜騎兵連隊の分遣隊さらには残っていたイギリス兵とドイツ兵中隊に追わせた。モントゴメリー砦と同様に砦の守備隊は最終的に征服された。しかし降伏した者達は北側の砦で起こったような残虐行為の餌食にはならなかった[23]。クリントン将軍を含め多くの守備兵は川の土手を下って我先に争って逃げ出し、そこで砲艦が救出して対岸の安全地帯に渡した[24]。
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Savas, Theodore P; Dameron, J. David (2006), A Guide to the Battles of the American Revolution, New York: Savas Beattie, ISBN978-1-932714-12-8