カヒル級コルベット(英語: Qahir-class corvette)は、オマーン海軍のコルベットの艦級。イギリスのヴォスパー・ソーニクロフト社のヴィジランス型の設計を採用している。ムヒート計画型(Project Muheet)、あるいは83号計画型(Project Type 83)とも称される。
来歴
オマーンはアラビア半島の東端に位置し、アラビア海(インド洋)とオマーン湾に面するほか、石油ルートとして著名なホルムズ海峡の航路もオマーン領海内を通ることから、イギリスより小さい程度の小国ながら、海軍力の整備が求められている。特にホルムズ海峡の分離通航帯での航路哨戒は重要任務とされる。ドファール解放戦線に対する対反乱作戦(ドファールの反乱(英語版))では、キャラバン隊妨害のための艦砲射撃を行っていたものの、これは有効性が不明瞭で、むしろ地上部隊への後方支援が重要であった。
1980年代より、艦隊の近代化が着手された。まず1980年より、ヴォスパー・ソーニクロフト社のヴィタ型高速戦闘艇4隻が発注され、1982年よりドファール級として就役を開始した。大型水上戦闘艦としては、アメリカ海軍を退役したノックス級フリゲートの取得が検討されたものの、これは実現せず、1992年4月5日、やはりヴォスパー・ソーニクロフト社のヴィジランス型コルベット2隻が発注された。これによって建造されたのが本級である。
設計
上記の経緯より、本級はヴィジランス型の設計を採用している。これは同社の輸出用コルベットとしては第2世代にあたる新しい設計であった[注 1]。設計にあたっては、ステルス性への配慮が全体に導入された。アルミニウム合金製の上部構造物はレーダー反射断面積低減を図った形状となっており、電波吸収体も広範に塗布されている。また煙突には赤外線放射の低減措置が導入された。
主機としては、16気筒のクロスリー-ピルスティク16PA6 V280STCディーゼルエンジン4基をCODAD方式で組み合わせて、KaMeWa社製の可変ピッチ・プロペラを駆動する方式とされた。また電源としては、MTU RV183 TF51ディーゼルエンジンを原動機とする主発電機(出力400キロワット)3基と、MTU 6V183 AA51ディーゼルエンジンを原動機とする非常発電機(出力70キロワット)1基が搭載された。なお燃料搭載量は156トン、清水搭載量は19トンである。減揺装置としてフィンスタビライザーを備えている。
装備
分散システム化されたSEWACO-FD戦術情報処理装置を搭載し、リンクYによる戦術データ・リンクに対応したほか、衛星通信装置も搭載された。
レーダーとしては3次元式のMW-08と航法用のケルビン-ヒューズ1007が、また電波探知装置(ESM)としてはDR-3000S1が搭載された。ソナーはもたないが、ATAS曳航ソナーの追加装備を織り込んだ設計となっている。この場合、艦尾側に8トンの重量が追加されることになるが、艦の運動性能の悪化や艦尾甲板のヘリコプター甲板への干渉といった悪影響はないものとされる。
艦砲として、艦首甲板の甲板室上に62口径76mm単装速射砲(76mmスーパーラピッド砲)を備えるほか、艦橋直後両舷に90口径20mm単装機銃(GAM-BO1)を備える。砲の射撃指揮のため、艦橋上にSTING追尾レーダーが設置されている。また後部上部構造物の後端部にはクロタル個艦防空ミサイルの8連装発射機が、DRBV-51Cミサイル射撃指揮装置はその直前に設置された。艦橋直前にはエグゾセM40艦対艦ミサイルの4連装発射筒2基が設置された。対潜兵器はもたないが、上記のATAS曳航ソナーとあわせて、短魚雷発射管の搭載も織り込んだ設計となっている。
艦尾甲板はヘリコプター甲板とされており、シュペルピューマ級のヘリコプターの運用にも対応できる。ただし格納庫はもたない。
同型艦
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艦名
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造船所
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起工
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進水
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就役
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Q-31
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カヒル・アル・アムワジ SNV Qahir Al Amwaji
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ヴォスパー・ソーニクロフト (ウールストン, イギリス)
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1993年5月21日
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1994年9月21日
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1996年9月3日
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Q-32
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アル・ムアッサー SNV Al Mua'zzar
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1994年4月4日
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1995年9月26日
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1997年4月13日
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脚注
注釈
- ^ ヴォスパー社時代にはマーク・ナンバーで表されるフリゲートやコルベットが開発されており、ヴォスパー・ソーニクロフト社となってからもセールスは継続されていた。
出典
参考文献