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ウキクサ
ウキクサ
分類
学名
Spirodela polyrhiza (L. ) Schleid. , 1839 [ 1]
シノニム
Lemna bannatica Waldst. & Kit. ex Schleid. , 1839 [ 1]
Lemna major Griff. , 1851 [ 1]
Lemna maxima Blatt. & Hallb., 1921 [ 1]
Lemna orbicularis Kit. ex Schult. , 1814 [ 1]
Lemna orbiculata Roxb. , 1832 [ 1]
Lemna polyrhiza L. , 1753 [ 1]
Lemna thermalis P.Beauv. ex Nutt. , 1818 [ 1]
Lemna transsilvanica Schur , 1866 [ 1]
Lemna umbonata A.Braun ex Hegelm., 1868 [ 1]
Lenticula polyrrhiza (L. ) Lam. , 1779 [ 1]
Spirodela maxima (Blatt. & Hallb. ) McCann, 1942 [ 1]
Telmatophace orbicularis (Kit. ex Schult. ) Schur , 1853 [ 1]
Telmatophace polyrhiza (L. ) Godr., 1844 [ 1]
和名
浮草、無者草、鏡草
英名
great duckweed , giant duckweed[ 2] , common duckweed[ 2] , common duckmeat[ 2]
ウキクサ (浮草、萍、蘋、学名 : Spirodela polyrhiza )はウキクサ亜科 ウキクサ属 に属する水生植物 の1種であり、淡水域の水面に生育する。直径 3–10 mm ほどの葉状体 から、多数の根 が水中に伸びている。葉状体は5–16脈をもち、裏面はふつう紫色を帯びる。秋になると根をもたない休眠芽を形成し、水底で越冬することがある。このように秋になると姿を消し、春に再び現れることから「無者草 ( なきものぐさ ) 」ともよばれた[ 3] 。また「鏡草」という古名もある[ 3] 。
「ウキクサ」という名は、ウキクサ亜科 の植物の総称として用いられることもあり、さらに遠縁のものも含めて水面に浮かぶ植物の一般名として使われることもある[ 4] 。また、デンジソウ (水生のシダ植物 の1種) の異名として使われることもある[ 4] 。ウキクサは水面を漂うため、不安定で落ち着かない生き方をウキクサ (浮草) に例えて表現することがある[ 4] 。以下では、種 としてのウキクサについて解説する。
特徴
水面 に生育する浮遊植物であり、扁平な葉状体 (フロンド; 葉 と茎 の区別がない[ 5] ) と根 からなる[ 6] (下図1a, b)。葉状体は広倒卵形 (左右相称からやや不相称)、大きさは 3–10 x 2–8 mm、ふつう扁平で膨潤することはなく、掌状に伸びる5–16脈 がある[ 1] [ 6] [ 7] [ 8] [ 9] [ 10] [ 11] 。脈に沿って表面に突起が存在することがある[ 10] 。葉状体の表面は緑色、裏面はふつう赤紫色を帯びるが、緑色のこともある[ 6] [ 9] [ 11] (下図1b)。また栄養塩 (リン など) が不足すると節 (葉状体基端から1/3ほどのところで脈や根、娘葉状体が生じる部分) の表面側に赤色の斑紋 (アントシアニン の蓄積) が生じることがある[ 12] 。葉状体の裏面からは (3–)7–21本の根 が束生し、水中に伸びている[ 6] [ 8] [ 9] 。根の長さは 0.5–3(-4) cm、根の先端は鋭頭[ 6] [ 10] [ 11] 。1本 (まれに2本) の根のみが prophyllum を貫いている[ 13] 。
葉状体の基部左右に出芽嚢があり、そこから新たな葉状体を形成して出芽 状に増殖する。ふつう2–5個の葉状体がつながった群体を形成しており、これが分断することで新たな群体ができる[ 6] [ 8] [ 9] 。出芽嚢の基部は鱗片状の構造 (prophyllum) で囲まれている[ 13] 。
日本での花期は5–9月だが、開花は非常にまれである[ 1] [ 6] [ 7] [ 8] 。花 は花被 を欠き、2個の雄しべ と1個の雌しべ からなる[ 6] [ 11] [ 5] (雄しべ 1個からなる雄花 2個と雌しべ 1個からなる雌花 1個とする記述もある[ 7] [ 8] )。雌しべの花柱は長さ約 0.3 mm、子房は1–2個の胚珠 を含む[ 1] [ 10] 。果実 は直径 1–1.5 mm、わずかに翼があり、1–2個の種子 を含む[ 1] [ 7] 。種子 は長さ 0.7–1 mm の長楕円形、12-20本の肋がある[ 1] [ 6] [ 7] [ 10] [ 11] 。染色体 数は 2n = 30, 32, 38, 40, 50, 80[ 10] 。
秋になると、ときに新しい葉状体がデンプン を貯蔵し、肥厚して休眠芽 (越冬芽、殖芽 ; turion) となる[ 6] [ 7] [ 8] [ 10] [ 11] (下図2)。休眠芽は直径 1–2 mm、根 を欠き、アントシアニン を含んで濃緑色から赤紫色になる[ 1] [ 6] [ 10] [ 11] (下図2)。休眠芽は水底で越冬し、翌春に浮上して増殖を再開するが、泥中で4年以上生き残ることもある[ 6] [ 9] [ 11] 。また窒素不足や二酸化炭素増加、植物ホルモン のアブシシン酸 などによっても休眠芽形成が誘導されることが知られている[ 6] [ 14] 。アブシシン酸処理後2週間で、デンプン含有量は乾燥重量の60%以上に達する[ 14] 。
2a . 休眠芽をつけた葉状体の表裏面 (根は除去してある)
ウキクサについては全ゲノム の塩基配列が報告されている[ 15] 。ゲノムサイズは 158 Mbp (Mbp = 100万塩基対) ほどであり、ウキクサ亜科 の種で調べられた中では最も小さい[ 16] 。
分布・生態
3 . 水面を覆うウキクサ (サンショウモ が混生している) (ポーランド )
汎世界種であり、北米 、南米 北西部、アフリカ 、ユーラシア 、東南アジア 、オーストラリア から報告されている[ 1] [ 11] 。日本でもふつうに見られ、北海道 から沖縄 まで生育している[ 6] [ 7] [ 11] 。
池 や水田 、水路 などの淡水 域に生息し、しばしば水面を覆う[ 6] [ 7] [ 9] (右図3)。水流 があると流されてしまうため、水流のない、またはほとんどないところに生育する。
人間との関わり
応用
増殖が早いこと、水と直接接していること、ゲノム サイズが小さいこと (上記参照) から、バイオ燃料 、バイオレメディエーション (生物による有毒物質の除去)、炭素回収などを目的とした研究が行われている[ 16] 。
ウキクサの葉状体のタンパク質 含有率はダイズ と同じであり、乾燥重量のほぼ37パーセント で、増殖速度はダイズの10倍であり、アメリカでは家畜の飼料としてのウキクサ牧場が構想され、その家畜から出された排泄物からメタンガス を取り出し、諸々のエネルギーに利用しようというものである[ 17] 。
薬用
発汗作用や利尿作用があり、生薬 とされることがある (生薬名は浮萍 ( ふひょう ) )[ 10] [ 18] 。
季語
ウキクサ (浮草、萍) は夏の季語 であり、関連する季語として「萍の花」や「根無草 ( ねなしぐさ ) 」、「無者草 ( なきものぐさ ) 」などがある[ 19] (ただし一般名としてのウキクサは、必ずしも種 としてのウキクサとは限らない[ 4] )。ウキクサを詠んだ俳句として、以下のようなものがある[ 19] 。
萍の 鍋の中にも 咲にけり
晩涼に 池の萍 みな動く
萍を 岸につなぐや 蜘の糸
萍の わが屍を 蔽ふべく
分類
4a . ウキクサ (大型の葉状体) と
ヒメウキクサ (小型の葉状体)
ウキクサ属 には本種の他に Spirodela intermedia のみが知られるが、この種は中南米 のみに分布し、2–5本の根 がprophyllumを貫いている点、節の表面側に赤い斑紋が生じるない点、休眠芽 (越冬芽、殖芽 ) を形成しない点でウキクサと異なる[ 12] 。ヒメウキクサ属 (ヒメウキクサのみを含む) はウキクサと同様に複数の根をもつが、その数が少なく (2–6本)、葉状体が小型 (2–5 mm) でやや細長く、3–7脈をもつ[ 1] [ 20] (右図4a)。アオウキクサ属 (アオウキクサ 、コウキクサ 、イボウキクサ など) もふつう葉状体が小型で根は1本のみであり、ミジンコウキクサ属 ははるかに微小で根を欠く[ 20] (右図4b)。
なお、「ウキクサ」という名前がつくボタンウキクサ はウキクサと同じサトイモ科 に属するが、その中では近縁ではない[ 5] 。またアカウキクサ やオオアカウキクサ は種子植物 ではなく、シダ植物 (薄嚢シダ類 ) に属する[ 21] 。
ギャラリー
水面を覆うウキクサ
水面を覆うウキクサ
水面を覆うウキクサ
水面上の群体
群体を形成した葉状体
群体を形成した葉状体
脚注
出典
^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v “Spirodela polyrhiza ”. Plants of the World Online . Kew Botanical Garden. 2021年6月24日 閲覧。
^ a b c GBIF Secretariat (2021年). “Spirodela polyrhiza ”. GBIF Backbone Taxonomy . 2021年6月23日 閲覧。
^ a b 林弥栄 (1983). “ウキクサ”. 日本の野草 . 山と渓谷社. p. 648. ISBN 978-4635090162
^ a b c d 「浮草・浮萍・萍 」『精選版 日本国語大辞典』。https://kotobank.jp/word/%E6%B5%AE%E8%8D%89%E3%83%BB%E6%B5%AE%E8%90%8D%E3%83%BB%E8%90%8D 。コトバンク より2021年7月2日 閲覧 。
^ a b c “Lemnoideae ウキクサ亜科 ”. 植物発生進化学:読む植物図鑑 . 基礎生物学研究所生物進化研究部門 (2015年10月9日). 2021年6月20日 閲覧。
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^ 浜島繁隆・須賀瑛文 (2005). “アカウキクサ、オオアカウキクサ”. ため池と水田の生き物図鑑 植物編 . トンボ出版. p. 91. ISBN 978-4887161504
関連項目
外部リンク
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