ろくぶんぎ座 (ろくぶんぎざ、六分儀座、Sextans)は現代の88星座 の1つ。17世紀 末に考案された新しい星座 で、六分儀 がモチーフとされている[1] [4] 。しし座 の南、天の赤道 上に位置している。明るい星のない、目立たない星座である。
主な天体
恒星
2022年 4月現在、国際天文学連合 (IAU) によって1個の恒星に固有名が認証されている[5] 。
そのほか以下の恒星が知られる。
α星 :見かけの明るさ4.49等のA型巨星で4等星[8] 。ろくぶんぎ座で最も明るく見える恒星。
星団・星雲・銀河
由来と歴史
17世紀末にポーランド 生まれの天文学者ヨハネス・ヘヴェリウス によって考案された[4] 。ヘヴェリウスの死後の1690年 に妻によって出版された著書『Prodromus Astronomiae』に収められたと星表『Catalogus Stellarum』と星図『Firmamentum Sobiescianum』に Sextant Uraniæ という名称で記載されたのが初出である[4] 。「最後の肉眼観測者」[14] と称されることもあるように、ヘヴェリウスは六分儀 を用いた肉眼観測で天体の正確な位置観測を行っていた。しかし、1679年 9月26日 に起きた火災により、ヘヴェリウスは愛用の六分儀を含む観測機器や書籍の多くを失ってしまった。Sextant Uraniae は、この火災で失われた六分儀を偲んで考案されたものであり[4] 、文芸を司る女神ムーサ の1柱で天文を司るウーラニアー の六分儀とされた[15] 。ヘヴェリウスは、しし座 とうみへび座 の間の12個の星を Sextans Uraniæ に充てたことについて『Prodromus Astronomiae』の中で「しし座とうみへび座は共に火の星座であり、六分儀も炎で苦しめられたため」としている[16] 。
その後、イギリス の初代王室天文官 ジョン・フラムスティード が編纂し、死後の1725年 に出版された星表『大英恒星目録 (Catalogus Britannicus)』や1729年 に出版された星図『天球図譜 (Atlas Coelestis)』では「Uraniæ」の部分が除かれて、Sextans と短縮された[4] [17] 。この短縮された Sextans という星座名は、イギリスの天文学者フランシス・ベイリー が編纂し彼の死後1845年 に刊行された『The Catalogue of Stars of the British Association for the Advancement of Science』でも採用された[4] 。その一方で、1801年 に出版されたドイツ の天文学者ヨハン・ボーデ の天文書『ウラノグラフィア』では原型の Sextans Uraniæ が使用されるなど[18] 、天文学者によってまちまちであった。
1922年 5月にローマ で開催されたIAUの設立総会で現行の88星座が定められた際にそのうちの1つとして選定され、星座名は Sextans 、略称は Sex と正式に定められた[19] 。新しい星座のため星座にまつわる神話や伝承はない。
現在のろくぶんぎ座の星に付されているバイエル符号 風のギリシア文字 の符号は、アメリカ の天文学者ベンジャミン・グールド が1879年 に刊行した『Uranographia Argentina』で付したものである[4] [20] 。グールドは明るいものから順に、5つの星にαからεまでの符号を付している[20] 。
アレクサンダー・ジェイミソン の『ジェミーソン星図』(1822) に描かれた Sextans Uraniæ。
19世紀イギリスの星座カード集『
ウラニアの鏡 』に描かれた Sextans Uraniæ(中央右)。
中国
古今図書集成 に描かれた星宿。ろくぶんぎ座の星は左下の星官「天相」に置かれた。
ドイツ人宣教師イグナーツ・ケーグラー (英語版 ) (戴進賢)らが編纂し、清朝 乾隆帝 治世の1752年 に完成・奏進された星表『欽定儀象考成』では、ε星と17番星の2星が、二十八宿 の南方朱雀七宿の第四宿「星宿 」にある星官「天相」に配されていた[21] 。
呼称と方言
日本では、明治末期には「六分儀 」という訳語が充てられていたことが、1910年 (明治43年)2月刊行の日本天文学会 の会報『天文月報』第2巻11号に掲載された「星座名」という記事でうかがい知ることができる[22] 。この訳名は、1925年 (大正14年)に初版が刊行された『理科年表 』にも「六分儀(ろくぶんぎ) 」として引き継がれた[23] 。戦後の1952年 (昭和27年)7月に日本天文学会が「星座名はひらがなまたはカタカナで表記する」[24] とした際に、Sextans の日本語の学名は「ろくぶんぎ 」と定められ[25] 、これ以降は「ろくぶんぎ」という学名が継続して用いられている。
これに対して、天文同好会 [注 1] の山本一清 らは異なる訳語を充てていた。天文同好会の編集により1928年 (昭和3年)4月に刊行された『天文年鑑 』第1号では星座名 Columba に対して「六分儀 」の訳語を充てていた[26] が、1931年(昭和6年)3月に刊行した『天文年鑑 』第4号からは、星座名を Sextans Uraniae、訳名を「天の六分儀」と紹介し[27] 、以降の号でもこの星座名と訳名を継続して用いていた[28] 。
現代の中国では六分儀座 [29] (簡 : 六分仪座 )と呼ばれている。
脚注
注釈
出典
^ a b c “The Constellations ”. 国際天文学連合 . 2023年1月29日 閲覧。
^ “星座名・星座略符一覧(面積順) ”. 国立天文台(NAOJ) . 2023年1月1日 閲覧。
^ “流星群の和名一覧(極大の日付順) ”. 国立天文台(NAOJ) (2022年12月31日). 2023年3月31日 閲覧。
^ a b c d e f g Ridpath, Ian . “Sextans ”. Star Tales . 2023年1月29日 閲覧。
^ Mamajek, Eric E. (2022年4月4日). “IAU Catalog of Star Names (IAU-CSN) ”. 国際天文学連合 . 2023年1月29日 閲覧。
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