ぼうえんきょう座は、18世紀中頃にフランスの天文学者ニコラ・ルイ・ド・ラカーユによって考案された。1756年に刊行されたフランス科学アカデミーの1752年版の紀要『Histoire de l'Académie royale des sciences』に掲載されたラカーユの星図の中で、望遠鏡の星座絵とフランス語で望遠鏡を意味する le Telescopeという名称が描かれたのが初出である[7][8][9]。のちの1763年にラカーユが刊行した著書『Coelum australe stelliferum』に掲載された第2版の星図では、ラテン語化された Telescopiumと呼称が変更されている[7][10]。
ラカーユがモチーフとしたのは、当時主流であった非常に長い鏡筒を持つ屈折望遠鏡である。当時の望遠鏡は精度の低いレンズを用いていたため、焦点距離を延ばすことにより色収差を低減させる必要があった[7]。そのため、ラカーユが考案した当初の Telescopium は、現在のぼうえんきょう座よりも大きく細長い領域を持っていた。たとえば、現在のいて座η星はβ、さそり座G星はγ、へびつかい座45番星はθとギリシア文字の符号が付けられるなど、他の星座の間を縫うように細長い領域が考えられていた[7]。その後、イギリスの天文学者フランシス・ベイリーが1845年に刊行した『British Association Catalogue』やアメリカの天文学者ベンジャミン・グールドが1879年に刊行した『Uranometria Argentina』でその領域が切り取られたことで、現在のぼうえんきょう座はβ星やγ星のない星座となっている[7]。
1922年5月にローマで開催されたIAUの設立総会で現行の88星座が定められた際にそのうちの1つとして選定され、星座名は Telescopium、略称は Tel と正式に定められた[11]。新しい星座のため星座にまつわる神話や伝承はない。