『おとぎストーリー 天使のしっぽ』(おとぎストーリー てんしのしっぽ)は、ワンダーファーム制作のメディアミックス作品。元々は学習研究社発行の『メガミマガジン』誌上読者参加企画で、『Otogi Story P.E.T.S.』(オトギストーリー ペッツ)→『おとぎストーリー 天使のしっぽ』(アニメ1期、ゲーム)→『天使のしっぽChu!』(てんしのしっぽチュ!、アニメ2期)とタイトルが変更された。
1人の青年と12人の守護天使との共同生活を描いており、「鶴の恩返し」を現代風にアレンジした物語。全年齢対象。
P.E.T.Sでは主人公(=読者)は不幸な青年。だが、動物を愛する心があり、過去に色々な動物を飼っては、ペットたちの死を見届けてきた。そのペットたちが数年を経た今、美少女として転生、めいどの世界から守護天使という存在となって主人公の元に帰ってくる。彼女たちは、前世(=動物時代)に主人公から受けた愛情を覚えており、その恩を返そうと主人公に尽くそうとする。だが、彼女たちには前世で死を迎えたときに経験したトラウマがある。そのトラウマで守護天使が悩んだりする様子を描く場面が多い。
キャラクターとしては、ヘビ・ウサギ・カメ・キンギョ・インコ・ハムスター・キツネ・タヌキ・ネコ・サル・イヌ・カエルから転生した12人の守護天使が設定されている。だが、前世動物と名前を組み合わせれば読者でもキャラクターを創作できることから、読者が提案したキャラクターを公募した例もある。
2回アニメ化された以外に、長谷川光司によって漫画化された(全3巻)。
女の子に縁の無い青年の所に大勢の女の子が押しかけてきて全員が主人公を慕う、いわゆるハーレム物ストーリーなのだが、12人の守護天使たちが下は小学1年生から上は高校3年生まで幅広く年代が分かれており、それが狭いアパートの中で共同生活しているため個別の守護天使との恋愛要素は薄く、むしろ擬似的な大家族物のテイストが強い。また、基本コメディタッチの内容になっている。
ここでは主にアニメ版の設定を紹介する。
本作のヒロイン達。守護天使は抱える煩悩の数で等級分けされ、1から3が上級、4から6が中級、7から9が低級と区分されている。全員に共通として服装を自由に変え、ぬいぐるみにも変身できる能力がある。『おとぎストーリー 天使のしっぽ』と『天使のしっぽChu!』の間に昇級試験があり、ミカとクルミを除く10名は合格し、ユキは新たなメガミとなった。守護天使は人間と恋に落ちてはいけないという掟があり、掟に背くと元の動物に戻ってしまう。
悟郎のことを「ご主人様」と呼び慕っているが、世間には守護天使であることを隠して生活しているため、悟郎や仲間たち以外がいる場面では家族や同居人などの各天使の表向きの設定がある。ただし作中は悟郎や守護天使とのシーンがほとんどであるため、表向きの設定が描写されているシーンは少ない。
当初はそれぞれ我が強く、その上悟郎への独占欲や前世の因縁が災いしたため衝突や啀み合いを繰り返し、チームワークの乱れにも繋がっていた。それに業を煮やした女神にめいどの世界に強制送還され、今までのことを戒められた結果チームワークを芽生えさせた。
本節ではアニメの登場話の順に記す。原作での登場順も同じである(詳細は後述)。
原作の読者参加企画で、見習い守護天使として登場した3人。アニメでは『Chu!』最終話のラストシーンで少し姿を見せるのみで、台詞はなし。
大昔、動物と人間が対等に暮らしていた時代、動物を統べる地位にいた4人の男。それが四聖獣である。しかし、人間と対立が深まっていく中で彼らは力の源である獣神具を奪われ、長年に渡って封印されてしまう。その獣神具を奪った人物こそが、悟郎の前世であった。彼らはその復讐のために悟郎に呪いをかけ、ツキを奪い取っていた。つまり、本作の黒幕で悟郎の不幸の元凶達である。動物を統べる地位にいるが故か、かなり独善的かつ横暴で身勝手な面も目立ち、ラン達守護天使の事も格下と見なすばかりか、一部の守護天使を洗脳し所有物の様に扱い、悟郎への復讐のためにこき使ってもいた。
2話では白虎のガイ、3話では朱雀のレイ、4話では玄武のシンがそれぞれ動き出し、8話では3人が偽のアルバイト情報で工事現場におびき寄せ、あらゆる手段で悟朗の命を奪おうとしたが、いずれも失敗に終わる。また工事現場では青龍のゴウが封印されていたが、(パワーショベルの先端が石板に直撃したことによって)復活する。
10話では花嫁候補の4人(ヘビのユキ、カメのアユミ、インコのツバサ、ネコのタマミ)を連れ去り、彼女らを洗脳して悟郎に挑戦状を出した。偶然悟郎より前にこの挑戦状を読んだ守護天使達は、悟郎に内緒で四聖獣との戦いに赴く。そこに悟郎が現れ、自分のために命をかけて戦う守護天使達を傷つけられたことに怒りを覚えた悟郎はその身に秘めた力を発動させた。四聖獣は悟郎に攻撃を仕掛けるが傷ひとつつけられなかった。その力こそが悟郎の前世が奪った四聖獣の力の源である獣神具であった。事情を知った悟郎はあっさりと獣神具を返すと告げる。四聖獣達は悟郎から獣神具の力を取り戻そうとするが、獣神具は彼らを拒みふたたび悟郎の中に戻ってしまう。その直後メガミ様が現れ、悟郎を「聖者様」と呼び、本人も含め、周囲を驚かせた。
悟朗の前世は、動物と人間の両方を統べる唯一の存在である「聖者」だった。だが、余命幾許も無い身であった聖者は、未曽有の大飢饉[1]が原因で人間と動物が争おうとしていたのを止める余力が殆ど残っておらず、動物達を扇動して人間を滅ぼした上で世界を支配しようとした四聖獣達に諦めさせる為、自らの命と引き換えに四聖獣の獣神具を奪った上で封印。死の間際、「生まれ変わった暁には動物と人間とが共存できる世の中を作りたい」と願いを聞いた冥土の神々によって、聖者の死後も人間との争いを止めようとしなかった四聖獣達への罰も兼ねて彼等も封印したのが真相だった。真相や聖者の意志を聞いた四聖獣達は誤解が解け悟郎に尽くすことを誓い、改心。そして悟郎や守護天使達と和解した(ただし、ユキやアユミを除いた守護天使達は彼らに酷い目に遭わされたことを述懐している)。
その後、四聖獣達は今までの贖罪も兼ねて悟郎の身の回りを世話をするため(悟郎のアパートの庭にテントを張って)居候するが、青龍のゴウは悟郎の側にいるのはかつて彼の人生を身勝手に壊した自分たちより守護天使の方が適切と判断し、四聖獣達は獣神具に代わる力を得るための修行の旅に出た。
悟郎に対しての呼び方は、悟郎が聖者と判明するまでは「睦悟郎」。悟郎が聖者と判明した後は「聖者殿」(ガイだけは「悟郎さん」)。
『Chu!』では青龍のゴウと玄武のシンが名前のみ登場するだけで、修行の旅の模様は描かれていない。
四聖獣の詳細は、彼らが主役のスピンオフ作品『セイント・ビースト』を参照。
元々本企画は牧ひろあき(アニメでは「設定」としてクレジットされている)が自身のウェブサイト「big-friends.com」(現在の内容とは異なる)で構想していたものである。これに、目玉企画を探していたメガミマガジン編集部が着目し、読者参加企画として同誌VOL.7(2000年8月発売号)より連載開始。
当初はキャラクターが3名であったため『Otogi Story P.E.T.S.3』というタイトルであったが、以後毎号のようにキャラクターが増え続け、その度にタイトルも変わり、VOL.12(2001年3月発売号)で最終的に12名となった。
さらにVOL.16(2001年7月発売号)にてテレビアニメ化を発表。アニメのタイトルは『おとぎストーリー 天使のしっぽ』となり、キャラクターの名前がひらがなからカタカナになった。また、VOL.25(2002年4月発売号)以降、雑誌連載のタイトルも「天使のしっぽ」に改められた。
本企画は先発のライバル誌『電撃G'sマガジン』の人気企画『シスター・プリンセス』(シスプリ)を強く意識したものとみられる。
連載初回にて「企画を探していた」旨が明言されていることに加え、企画の骨子(読者参加企画という形態、12名のヒロインによるハーレム的設定など)が類似しており、『シスプリ』に対抗した企画(ありていにいえば二番煎じ)としての色合いが強い。
また、『シスプリ』は当初アニメ化など全く想定されておらず、連載開始からアニメ放送まで2年強の時間を要しているのに対し、本企画は小林多加志(アニメでキャラクターデザインを担当)が連載初回からアニメ塗りでイラストを担当し、さらに連載開始から1年2か月でアニメ放送というスピード展開であり、当初からアニメ化を想定していたことがうかがえる。
VOL.38(2003年5月発売号)をもって最終話を迎え、読書参加企画(連載)が終了する。VOL.40(2003年7月発売号)より『しっぽえむ』としてピンナップマガジンが開始されたが、VOL.45(2003年12月発売号)をもって終了し、一時期メガミマガジンの看板企画の1つとして展開された本企画がメガミマガジンから姿を消すこととなる。
長谷川光司による漫画は「アニメディア」に連載された。
2001年10月、WOWOW内ノンスクランブル枠で『おとぎストーリー 天使のしっぽ』として30分のアニメが放送された。後、2002年10月からキッズステーションでも放送され、AT-Xでも続編の『天使のしっぽChu!』と合わせて放送された。
アニメ化に際して、若干の設定変更が行われ、主人公として睦 悟郎(むつみ ごろう)が設定された。また、四聖獣(しせいじゅう)という、守護天使たちとは逆に人間に恨みを持つ動物たちの転生したキャラクターも登場し、それが後にスピンオフ作品、『セイント・ビースト』シリーズが誕生するきっかけにもなった。
DVD版が製作される際、第1話が追加シーンを含むディレクターズ版に変更されたほか、新作エピソードが2話追加され、映像特典として『毒天使のしっぽ』という、デフォルメされた守護天使たちによるショートコント(通称『毒天』。タイトル通り毒の効いたシュールな作品)も追加された。なお、キッズステーションで放送されたのはDVDバージョンである。
2003年3月からは、続編『天使のしっぽChu!』(てんしのしっぽ ちゅ)がキッズステーション内にて放送された。放送1回に付き2本の話(各12分前後。最終回除く)が放送される構成であり、全6回の放送であるため、改編時期前での放送となった。
2011年2月14日よりチャンネルNECOで「アニメスクエア」内での放送がスタートしている(同週内にて2回のリピート放送あり)。
『天使のしっぽ』『天使のしっぽChu!』ともに、シリーズ構成は六月十三、キャラクターデザインは小林多加志が担当した。
本アニメは年少組(サルのモモ、イヌのナナ、カエルのルル)の声を、声優志望の小中学生が担当したことでも話題になった。平野綾、長谷川静香、清水芽衣の3人が本作で声優としてデビューし、ラジオやイベントなどで広告塔としてファンの声援を受けた。
『Chu!』の終了した数年後に平野綾、長谷川静香が声優としてブレイクを果たし、最年少の清水芽衣は学業専念のために早々と引退したが、後にアイドル女優として復帰した。
また、舞台で活躍していた仁後真耶子も招かれて声優デビューをしており、その後『THE IDOLM@STER』の高槻やよい役でブレイクした。
『Chu!』最終話でメガミ(ユキ)の「ご主人様との物語はこれからも続きます」のセリフの後、右下に「つづく」と表示されたが、作品としての「永遠に続く」という意味を込めた演出か、今後の展開(続編)に繋がるものかは不明。
『Chu!』終了後、ファンから「続編を製作して欲しい」という声もあり、『天使のしっぽChu!』DVD4巻の解説書に載っているクリエーターインタビューにて六月十三が「いつかその結果を皆様の前に差し出せる日を夢みております」と語っていた。
しかし、2005年からワンダーファームは当作品のスピンオフ企画である『セイント・ビースト』などBL作品の製作が中心となり、2008年には制作の東京キッズが倒産したため実現の可能性は皆無に等しい。
『おとぎストーリー 天使のしっぽ』の5.5話と13話はDVD追加エピソード。
『おとぎストーリー 天使のしっぽ』は、2003年2月27日にバンダイから発売された、PlayStation用ゲームソフト。12人の守護天使たちを新しいメガミさまにするために1年間育成する育成シミュレーションゲーム。キャラデザインなどは『天使のしっぽChu!』に準じている。
CMには野川さくら、平野綾、長谷川静香、清水芽衣が出演し、その内容はミニドラマ仕立てだった。
※発売・販売:ムービック
※発売:ランティス / 販売:キングレコード
全て学研発行。
「おとぎストーリー 天使のしっぽ デジタルコレクション」として発売された。イラストやミニゲームなどが収録されている。
この他商品ではないがスクリーンセイバーも公開されている[2]。