上野遊水地(うえのゆうすいち)は、三重県伊賀市にある木津川・服部川の遊水地である。新居()、小田()、長田()、木興()の4つの遊水地から成る。施設は堤防(周囲堤・囲繞堤(本川堤)・越流堤)と水門及び排水機場から成り、内部は農地として利用されている。国土交通省近畿地方整備局木津川上流河川事務所によって事業がすすめられ、2015年(平成27年)6月15日から運用が開始された[1]。
伊賀市の上野地区は木津川本流と、柘植川、服部川の3つの河川が合流し、合流部の下流に狭い岩倉峡があることから有史以来水害に悩まされていた。1953年(昭和28年)以降相次ぐ水害に、地元では岩倉峡を開削して流すことを要望したが、木津川下流の対策がないまま行うと下流に水害が起きるということで早急な対策ができないということで、川上ダムと上野遊水地を建造し、河道改修を行うことで戦後最大の被害をもたらした昭和28年台風第13号の水害を安全に流下させることを目標に淀川水系改修基本計画が立てられた[1]。
建設にあたっては、遊水地内の地権者に対し、周囲堤・囲繞堤(本川堤)の内部にあたる湛水地域の農地については、土地自体の買収は行わなず、耕作は継続できるが将来にわたって湛水を容認することに対して地役権補償を行った[2]。
施設
遊水地と周囲の土地を隔てる周囲堤、遊水地と川を隔てる囲繞堤()、その一部を低くして水を導入する越流提、水位が下がった後に遊水地から水を排出する水門、排水機場からなる。なお、各遊水地の諸元は以下のとおりである。
- 服部川
- 新居遊水地 - 面積61.2ha, 湛水容量 206万m3[1]
- 小田遊水地 - 面積62.2ha, 湛水容量 280万m3[1]
- 木津川
- 長田遊水地 - 面積55.1ha, 湛水容量 172万m3[1]
- 木興遊水地 - 面積70.0ha, 湛水容量 242万m3[1]
効果
平成29年台風第21号において、遊水地がすべて洪水を受け止め浸水家屋を出さず、762戸の浸水を防いだと推測されている。
広報
ダムカードに規格を寄せた遊水地カードが配布されている[3]。また、新居遊水地の近くにある新居駅の副駅名のネーミングライツを取得し、「伊賀を守る上野遊水地」とした[4][5]。
脚注
外部リンク