『プロトレプティコス』(古希: Προτρεπτικός, 英: Protrepticus)邦題『哲学のすすめ』(てつがくのすすめ)は、アリストテレスの著作。古代に複数書かれた「プロトレプティコス」の代表例。断片のみ現存する。
背景
本書はアリストテレスの初期著作にして「公開的著作」、すなわち『形而上学』『ニコマコス倫理学』といった本来非公開の著作と異なり、公開目的で書かれた著作である。
本書の成立経緯としては、イソクラテス(プラトンのライバル)の著作『アンティドシス(英語版)』のアカデメイア批判への反論として書かれた、あるいはキュプロス王テミソン(英語版)に向けて書かれた、と伝えられる。テミソンに向けて書かれた場合も、実際の想定読者は若者全般だったと推測される。
本書は古代ギリシア・ローマ世界において、アリストテレスの代表作の一つとして読まれた。ストア派のゼノンやキュニコス派のクラテスは本書を批判的に受容した。キケロは本書に倣い『ホルテンシウス』を書いた。
本書の断片は、主にイアンブリコスの同題の著作に抜粋されて伝わる。イアンブリコスの抜粋は、おそらく対話体または書簡体・演説体だった原著を講義体に改めたり、前書きなどを挿入したりしているが、原著に比較的忠実と推測される。またイアンブリコス以外の主な断片として、アウグスティヌス『三位一体論(英語版)』所引(キケロ『ホルテンシウス』の孫引き)の「至福者の島」に関する記述がある。
近現代のアリストテレス全集では『断片集』に含まれる。
内容
「我々は哲学すべきである」(philosophēteon)をキーフレーズに、「哲学する」「よく生きる」こと、それにより真の幸福に至ることを、論証形式で読者に勧める。
イソクラテスが『アンティドシス(英語版)』で説いたような実践を重んじる哲学観、すなわち「哲学は実生活に有用・有益でなければならない」「役に立たない哲学は哲学ではない」という哲学観を否定し、観想(観照、テオーリアー)を重んじる哲学観、すなわち哲学すること自体に意義があるとする哲学観を説く。そこで、「至福者の島」すなわち島民が観想だけして生きる理想郷、という思考実験を持ち出す。
日本語訳
出版年順
脚注
参考文献